- 米国財務省副長官が抱く仮想通貨の懸念点
- 12月3日の金融犯罪に関するカンファレンスで、米財務副長官Sigal Mandelker氏は、デジタル通貨を含む新興のテクノロジーについてのマネーロンダリングやテロ資金への流入等リスク問題を指摘。
- 仮想通貨悪用に関与したビットコインアドレスに経済制裁
- 11月28日、米財務省は、仮想通貨ビットコインを不正利用したサイバー犯罪に関与したとして、二人のイラン人、特定のビットコインアドレスに対して制裁を課したことを公表。そのような形での制裁は史上初であり注目が集まった。
米財務副長官の懸念点
米時間12月3日に開催された金融犯罪に関するカンファレンスで、米財務副長官Sigal Mandelker氏(以下、Mandelker氏)が、デジタル通貨を含む新興のテクノロジーについて、奨励していくべきイノベーションだとする一方で、不正目的に使用されるリスク問題を強調した。
Mandelker氏は、その際のスピーチにて「デジタル通貨産業は、そのネットワークをより強固にした上で不正使用による搾取を防止する義務がある」と発言しており、仮想通貨サービス業者や金融機関、規制当局に対して、仮想通貨の悪用防止策の一層の強化を要請した。
これまで、規制機関などとの協議は行われてきたが、具体的に仮想通貨企業や金融機関へ悪用防止策への強化要請は、初めてとなる。
テロ行為への資金流入の懸念
Mandelker氏の新たな金融テクノロジーに関する最も大きな懸念点として、特にイランに関連した「テロ行為への資金流入」である。
同氏は昨年12月に副財務長官に就任して以来、様々なテロ対策を実施しており、それについて12月3日のカンファレンスについての財務省のプレスリリースで以下のように述べている。
財務省は、イランの悪質な行為に対抗する最前線にいる。我々が再び課した制裁措置は、エネルギー、船舶、造船などのイラン経済の重要なセクターを対象としている。
また、イラン中央銀行やイランの金融機関による保険や取引の提供も対象とされる。11月5日には、イランの主要銀行、航空会社、石油輸出業者、海運会社など、700人以上の個人、団体、船舶、航空機を制裁リストに載せた。我々の指定には、70以上のイランの銀行および子会社が含まれている。
そして、世界中に支店を持つイランの国営銀行であるメリ銀行を通じて、イスラーム革命警備隊コッポスフォース(IRGC-QF)に、数十億ドル相当の資金が流入していたことについても言及した。
同プレスリリース内では、ランサムウェア「SamSam」などのサイバー犯罪に関わる二人のイラン人を、身代金で入手した仮想通貨ビットコインをイランの法定通貨リアルに換金することに加担していたとして、該当人物と特定されたビットコインアドレスに対し財務省が経済制裁を課した件についても述べている。
それについては、以下のように指摘している。
「イランやその他のデジタル通貨の悪用を試みる者に対して、仮想通貨取引所やデジタル資産サービスプロバイダーを含めた金融機関は対策を講じる必要がある。デジタル通貨産業は、それの技術的な専門性を用いてそのネットワークをより強固にし、不正使用による搾取を防止する義務がある。例えば、先週のイランに関しての制裁後、少なくとも1社のコンプライアンス企業が、迅速に顧客に対する注意喚起を行った。そのような対応が我々が求めるものである。」
Mandelker氏はそのような資金流入の防止には民間の金融機関の協力が不可欠であるとしており、今回は特にデジタル通貨に関する言及が目立った格好だ。
今後、どのような形でデジタル通貨に対しテロ資金流入等における対策がなされていくのかは、注目すべき動向の一つである。