- ビットコインETFが織り込み済みだった理由を徹底解説
- 最も有力視されていたビットコインETFが申請を取り下げた。これまでETFのニュースで相場が急動意していた仮想通貨市場、なぜ今回は織り込み済みとなったのか?その理由と今後のETFの展開を徹底解説する。
ビットコインETFが織り込み済みだった理由を徹底解説
1月24日の仮想通貨マーケット情報
ビットコイン
8時時点のデータは以下の通り。
価格 | 前日比 | |
---|---|---|
現在値 | 388,619円 | −0.66% |
24h高値 | 396,999円 | |
24h安値 | 385,500円 | |
出来高 | 5397億円 | +3.2% |
24日の仮想通貨市場は、ビットコインが24時間を通して値幅1万円で推移する安定した相場を継続、ビットコインキャッシュの分裂以降、渦中にあったBitmainが初の公式声明を発表した事が、投資家に好感されたBCHは、本日もプラス域を維持している。なお、時価総額上位のアルトコインにも大きな動きはなかった。
本日明朝におきた重要ニュースを見ていくと、仮想通貨市場に大きな影響を及ぼしてきたビットコインETF、特にVanEck版CboeビットコインETFの申請が取り下げられたことが、米SECから発表された。
同ETFは、Van Eck社とSolidX社によって提出されたもので、これまでのETF許可に係る懸念点を払拭する対策を多く取っていた観点から、複数のETF申請があった中で、最も許可に近いと見られていた最有力ETFであった。
なぜ相場は急落しなかった?
2017年にCboeとCMEのビットコイン先物でBTC価格が急騰して以来、低迷相場が続いていた仮想通貨市場において、市場規模を拡大する動きとして、機関投資家の参入期待が高まっていたのがETFだ。その理由としては主に以下の2点が挙げられる。
(1)規制された金融商品の一つとして、従来の証券取引市場での売買が可能になることで、流動性が高まる。
(2)ETFにはカストディ(保管管理)機能が含まれ、秘密鍵の破損、紛失または盗難による財務損失のリスクが大幅に削減される。( 保険等による保障)
また、相場との相関性に目を移すと、これまでETFの申請が明らかになったタイミングでの急騰、またウィンクルボス兄弟などが申請していたETFの申請却下による急落など、仮想通貨市場における相場の急変動を伴うファンダメンタルズ要因にもなっていた。
ではなぜ、最有力とも見られていたVanEck版CboeETFの最終可否判断日程前に、サプライズ的な形で「申請取り下げ」発表が行われたにも変わらず、相場が急動意しなかったのか?
今回のETF取り下げが、市場における織り込み済みの内容であった理由を考察する。
米国の政府閉鎖の影響
一つ目にあげる事ができるのは、米国の政府閉鎖の影響だ。
今回のETFの申請取り下げの発表後、申請企業にあたるVan Eck社のCEOであるJan Van Eck氏は、今回の申請取り下げの理由として政府閉鎖を挙げている。
米国の政府閉鎖とは
政府機関が業務を停止すること。米議会で予算案が成立しなかった場合など、合衆国憲法や赤字防止法に基づいて連邦政府機関が閉鎖される。仮想通貨の申請処理(ETFやBakktなど)を行うSECやCFTCの審査が停止する点が指摘されていた。
これまで申請に係る問題点の払拭に関して、米SECと協議を重ねてきた同社において、政府閉鎖による議論が止まらざるを得なくなった状況は、決断が流れる可能性があり、自ら申請取り下げに動いた事を明かしている。
今回の申請取り下げで明確な理由として挙がった同問題だが、ETF申請への影響はこれまで何度も仮想通貨コミュニティで議論されており、ETF申請を始め、米国政府の動向に詳しい弁護士Jake Chervinsky氏が、その影響を明確に示したことで、最終可否判断日程での許可は厳しいと、投資家の中での見方が強まっていた。
Jake Chervinsky氏の見解要点は以下の通りだ。
- 政府機関が閉鎖されても、それ自体に法的効力はなく、ETF最終判断延期という権限はない。(≒2月27日は変更なし)
- 政府機関閉鎖による、ETFの自動承認の可能性は極めて低い
- 自動承認は永久的効力を持たず、SECは政府機関閉鎖終了後に、強制的にビットコインETFを上場廃止することも可能
これらを理由に、最終可否判断日程にあたる2月27日まで政府機関閉鎖が続いた場合、ビットコインETF承認の可能性は、極めてゼロに近い形になると指摘していた。
Chervinsky氏は、新しい金融商品に関する登録申請の審査および承認」を中止するとした、米SECの政府機関閉鎖中の運営計画に関する文書を根拠に、問題点の払拭や説明、議論が必要なETF申請許可は厳しいと説明。投資家の中でも期待薄との見方が強まった。
最終日程前に問題点の解決至らず
2点目は、これまでのETF否決・延期内容からみるETF申請に係る問題点だ。
これまでSECは、ETF申請に関する発表内容の中で、証券取引法第6条(b)(5)の要件、つまり、「詐欺行為や不正行為の防止」と「投資家と公共の利益の擁護」の手段が現状では講じられていることを証明できていない点を挙げていた。
その理由として、米規制下における仮想通貨取引所の取引高が現状では不足しており、大口による価格操作リスクに結び付いる点を挙げている。つまり、細っている出来高の状況が承認を妨げる最大の要因として明言されていた形だ。
実際に比較データ(先物)で見ていくと、その差は歴然であり、先物取引、オプション取引、スワップ取引といったデリバティブの充実化と出来高の上昇が必要であるといえるだろう。
なお、申請企業のVanEck社などが、米SECにプレゼンを行なった2018年12月の資料では、「BTC市場で裁定取引(アービトラージ)を行うトレーダーの存在とは相関性があるため、効果的に、単一の取引所でビットコインの価格操作を行うにも、グローバル規模でのビットコイン価格操作が必要になる。」とした上で、BTCはむしろ他のコモデティ(ETP関連資産など)と比較しても、価格操作による影響を受けやすいとは言えない。と説明していた。
ただ市場からは、単一規模の取引所での価格操作につられて(裁定取引などによって)世界の取引所でも、同じような価格推移が起きているとの指摘もあるなど、説得力にかけるとの見方も出ていた。
課題に対する解決策を既に提供していることを強調しているVanEck社ではあったものの、米政府閉鎖で滞る政府機関との協議を含めて、期待感が薄まっていた。
直近でも仮想通貨の市場操作疑惑に関する報道は多くあり、最終可否判断日程までに、投資家に分かる形での大きな状況の改善には至っていなかった点が、相場に織り込んだ一つの要因といえよう。
Cboeが「ETF」ではなく「ETN」の必要性を言及
今回のETF取り下げの前にあたる1月20日、本ETFの申請企業でもあるCboe(シカゴ・オプション取引所)の最高経営責任者Ed Tilly氏が、現在申請を行なっている「ETF」ではなく、ビットコイン「ETN」の承認が、ビットコイン市場の成長に必要な要素であるとの言及をしていた。
ETNとは
Exchange Traded Noteの略。上場投資証券などと呼ばれる上場商品となり、ETF(Exchange Traded Fund)と同様、価格が株式や商品の指数などに連動する商品のこと。
ETFとは複数の違いがあるが大きな違いはその裏付け資産
ETF:投資信託委託業者が、指数に連動するように現物証券(ビットコインの場合はBTC)を集めた上で、指数連動する投資信託の受益証券を発行。
ETN:これらを発行する発行金融機関の信用を基に発行された証券を、受託有価証券として上場したもの。(裏付け資産の保有はなし)
同氏は、BTC先物の取引量が伸び悩んでいる要因として、個人投資家が取引参入しやすい、ビットコイン価格に連動した証券がないことを挙げ、ETN(Exchange Traded Note =上場投資証券/指標連動証券)は、取引の開始手続きが煩雑である先物取引より、少額からの取引が可能であるため、個人投資家の参入障壁が低く、利用しやすいとの発言を行なった。
このニュースは、今後の仮想通貨市場の発展に向けて、ETF申請に取り組んでいた同社の意向が変化しているとの見方もあり、直近に控えていたETF申請の実現できない可能性が浮上していた。
ビットコインETFは今後どうなる?
これらの理由などから、すでに承認の期待感が薄れていたといえるビットコインETF。今後どうなっていくかも簡単にみていく。
まず、今回取り下げをおこなったVanEck社ではあるが、同社のCEOは「米政府機関の閉鎖が終わり、米SECの再開が確認できたら、再び申請を提出して規制当局との対談を重ねていく」と発言をしており、今後時間をかけてでもETFの実現へ向けた動きを継続していくことをユーザーに示している。
仮に、再申請を行なった場合は、これまでの審査機関がリセットされる形で審査が行われるため、米SEC側は最終判断まで(新たな)最大240日までの猶予を持った形で、ETF審査を行うことが可能となる。
ただ、このETFに限った話で言えば、(これまでのETF=BTC以外 の多くが最終日程まで引き伸ばされていることを踏まえて)仮に実現したとしても2019年末付近かそれ以降となることも十分に考えられる。
また、VanEck版ETF以外にも、仮想通貨に関連したETF申請は行われている。(今年に入ってからも2つのETF申請が行われている。)
米時間1月10日に申請が行われたのが、米仮想通貨インデックスファンド企業であるBitwise Asset Managementの現物のビットコインに準拠したETFだ。特徴としては、現物ビットコインで決済する契約を提供することや、規制された第三者カストディサービスで現物管理を行う点、仮想通貨特有のリスクにあたる重要ハードフォークにも対応する点が挙げられる。
また、米投資運用企業Wilshire Phoenixが、これまでのものとは異なるETFの発表を行なっている。特徴としては、米ドルと米国政府の発行する債券(treasury bond、通称T-bond)に加え、ビットコインの価格変動にも準拠している点が挙げられる。
米国内、初めて複数の銘柄に連動するETFにビットコインが採用事例として注目が集まっている。
今回の申請取り下げを受け、一時ETF熱は冷めることが予想されるが、今後も多くのETF審査が控えている状況ではあるため、サプライズ的な許可が発表された場合、相場に大きな影響を与える要素であることは今後も変わらないと言えるだろう。
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