「ブロックチェーン国家戦略に向けた提言」
新経済連盟と日本ブロックチェーン協会と協力し、「ブロックチェーン国家戦略に向けた提言(事例分析編)」をIT担当大臣及び経済産業大臣宛てに提出したことが分かった。
新経済連盟は、新産業の発展を通じ、日本経済の発展に貢献することを目的とする経済団体で、代表理事を楽天株式会社の三木谷浩史氏、副代表理事を株式会社サイバーエージェントの藤田晋氏が務めている。
今回の提言は、ブロックチェーン活用の最新事例の紹介を行いつつ、既存システムの限界とその解決策としてのブロックチェーン活用法を分析。ブロックチェーン活用における官民協働の重要性についても強調した。
政府がブロックチェーンに関する基本戦略を策定し、法規制のあり方や、ビジネス創出の支援、関係省庁横断的な機能の設置などを検討することも併せて要請した。
本記事では、この提言書から、具体的なブロックチェーン活用事例について興味深いものを幾つかピックアップして紹介する。
カンボジア中央銀行デジタル通貨発行
カンボジアで世界初の中央銀行デジタル通貨(CBDC)が2020年3月末に正式導入されることが報道されたばかりだが、これを可能にしたのは、日本のブロックチェーン開発企業「ソラミツ株式会社」の技術である。
Linux FoundationのHyperledgerプロジェクトの一部となった、コンソーシアム型ブロックチェーン・プラットフォーム、「ハイパーレジャーいろは」を利用している。
このデジタル通貨「バコン」の特徴としては、主に以下のことが挙げられる。
- 安全、簡単、迅速、無料で、現地通貨リエルやUSドルの決済・送金可能
- 利用者は、送金先の銀行口座番号を知る必要がなく、相手の携帯電話番号宛に直接送金したり、QRコードをスキャンして決済や送金ができる
- 少額のリテール決済から高額の銀行間取引まで、一貫してブロックチェーン化し、国家全体の決済アーキテクチャーの大幅な簡素化・低コスト化を実現
こうしたブロックチェーン型デジタル通過と比較して、クレジットカードなど、現在の日本のキャッシュレス手段では、様々な問題がある。
例えば、二重払いの防止が困難で、締め日での資金清算や振込指示、後日の着金確認など取引手続きに時間とコストがかかる。また、店舗等への振込に1ヶ月程度かかる点もデメリットの一つだ。
ブロックチェーンを採用するこtで、スマートコントラクトにより、税金や利用料の自動支払い、会計処理の簡素化や債権債務記録の透明性などが可能に。店舗も、すぐに仕入れなどの次の支払いに利用可能で、流動性が高くなる。その結果、全体の決済インフラコストが大幅に低下し、決済手数料が激減することも見込まれる。
ソラミツ株式会社の「ハイパーレジャーいろは」は、モスクワ証券保管振替機構等でも活用されており、単一障害点やハッキング、不正取引の回避などのメリットを提供している。
不動産権利移転記録に活用
株式会社LIFULLは、不動産権利移転記録にブロックチェーンを活用することについて報告している。
同社は、2019年11月より、急増する空き家、そして未登記による所有者不明不動産問題の解決に向けて不動産権利移転記録にブロックチェーンを使用する実証実験を行っている。
従来の空き家管理については、データ維持管理のための管理者が必要であるが、記録維持コストが価値に見合わないケース(登記費用 > 不動産価値)があり、そのため当該物件の譲渡や活用がすすまない状況があった。
ブロックチェーンを導入すると、次のようなメリットがあり、こうした問題へのソリューションとなることができる。
- 分散ノードがデータを維持管理するため、特定の管理者が不要
- トランザクションコストのみで不動産の登記(権利移転記録)が可能であることから、超長期の記録維持に最適
- 管理者が不在で改ざん耐性を持つため、信用コスト(監査費用等)が不要
電子投票システムに活用する「BCVote」
日本最大級のQ&Aサイト「OKWAVE」を運営する株式会社オウケイウェイヴのグループ会社は、ブロックチェーン技術を用いた電子投票アプリケーション「BCvote」を開発。
「BCVote」によって、投票窓口や選挙役員などの第三者を介在させること無く、電子投票にまつわる一連のプロセスを安全に実行、かつ改ざんリスクなく投票内容を記録することが可能となる。また、有権者は、スマートフォンやPCを用いていつでもどこでも投票可能であり、書き間違いなど意図しない無効票の発生リスクも除去できる。
有権者は「BCVote」が提供するIDを用いて、自分の過去の投票履歴を参照可能であり、有効に投票されたかを確認することができる。自分の投票結果が正しく選挙の数字に反映されているかを各自が確認できるため安心だ。
選挙以外にも、パブリックコメントやアンケートなどにも活用可能と見込まれる。
物理的に投票所に行けない高齢者や、期日前投票など多様なニーズに応え、投票所に行かなくても、投票が可能となる。
また、投票所にかかる人員や設備を最小限に絞り、投票終了と同時に開票集計されるため集計コストの削減や不正防止の効果がある。
他にも、提言書では国際的な流通網でトレーサビリティを確保するなど数々の興味深い事例が報告された。
報告書は、100ページを超えるブロックチェーン事例分析がまとめられている。詳しくはこちらから確認することができる。
新経済連盟さまにJBAが協力して『ブロックチェーン国家戦略に向けた提言(事例分析編)』を取りまとめました。
— 加納裕三 (Yuzo Kano) (@YuzoKano) March 6, 2020
100ページ超えの超大作です。ぜひご覧ください。
『ブロックチェーンを国家戦略に。』
業界関係者の想いが国に届くことを期待します。https://t.co/EkgHzTr34o