「税と成長の好循環」を実現する3つの柱
一般社団法人新経済連盟は13日、2025年度の税制改正に関する提言を公表した。Web3関連の提案も含まれ、申告分離課税(一律20%)の導入や暗号資産ETF(上場投資信託)の取り扱いを可能にすることなどを提案している。
- 国内投資の促進: AIや暗号資産など新興産業への税制支援
- 人材投資: 賃上げ促進税制の強化、労働市場の流動性向上
- スタートアップ支援・生産性向上: 研究開発やDX推進の促進
◆主な提言内容:
税制改正の提言は「税と成長の好循環」を掲げ、税率引き下げによる日本経済の活性化、結果的な税収増加、国内投資の促進を目指している。新経連は、現行の高い所得税率や規制が国内市場のガラパゴス化を招いていると指摘。日本の国際競争力強化のため、税制改革と規制緩和を求めている。
16の具体策には、法人税・所得税の引き下げ、地方財源強化、AI開発支援、スタートアップ支援、越境経済対応などが含まれる。
新経済連盟とは
新経済連盟は、2012年に楽天の三木谷浩史氏を中心に設立された経済団体。スタートアップから大企業まで、IT企業に限らず様々な業種の企業が幅広く加盟している。主に大企業が中心の経団連とは対照的に、新経済連盟は規制改革や市場創出、多様性、そしてスピード感を重視している。
暗号資産税制の見直し
Web3市場の拡大に対応する暗号資産税制の見直しが注目される。新経済連盟は、現行の規制や税制がWeb3関連企業の成長を阻害し、有望企業の海外流出や日本のWeb3市場からの取り残しリスクを指摘している。
税制改革により、Web3ビジネスの振興やトークンエコノミーの発展を促進する狙いとして、以下の提言を示した
- 申告分離課税の導入: 暗号資産取引利益に一律20%の税率適用、損失繰越控除も認める
- デリバティブ取引対応: 暗号資産デリバティブ取引にも申告分離課税を導入
- 課税タイミング変更: 法定通貨への交換時のみ課税し、取引時の納税計算を簡素化
- 相続税見直し: 暗号資産相続の評価方法改善、「取得費の特例」適用など
- 暗号資産ETF導入: 取り扱いを可能にし投資機会を拡大
- レバレッジ規制の柔軟化: 資産種類ごとのレバレッジ倍率設定を可能に
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申告分離課税適用に高い関心
暗号資産への申告分離課税適用は、企業・個人投資家の間で強い関心を集めている。現行では、暗号資産は総合課税(雑所得分類)であり、給与所得との損益通算や損失の繰り越しが認められないなど、個人投資家にとって不利な点が多い。
2024年1月の米国でのビットコイン現物ETF承認を受け、日本での導入時の税制不均衡も懸念されている。株式会社bitFlyerの加納裕三代表取締役は、現物暗号資産取引への総合課税とETFへの分離課税適用の可能性が、「ETFへの資本流入を促す一方で、現物の流動性を損なう可能性がある」と指摘していた。
自民党の小倉將信副幹事長(元税制調査会 幹事)は「WebX2024」カンファレンスで、申告分離課税実現の重要ポイントとして以下を挙げた:
- 税収メリットの具体的提示
- 一般国民の資産形成に、暗号資産投資が貢献すると明確に示す
小倉議員は「分離課税の対象となることは、国が推奨する投資対象として認められたことを意味する」と説明し、暗号資産投資も資産形成に寄与するものとして国民の理解を得るべきだと強調した。
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ビットコインETFとは
ビットコインを投資対象に含んだ上場投資信託(Exchange Traded Fund)のこと。実際にビットコインを購入し、そのビットコインを基にした証券(ETF)を株式市場で取引する。米国で承認されたETFは、資産運用で世界最大手のブラックロックが申請した「iShares BITCOIN SPOT ETF(iシェアーズ・ビットコイン・トラスト)」やグレースケールの「GBTC」、フィデリティの「FBTC」など、11件に渡る。