はじめての仮想通貨
TOP 新着一覧 チャート 学習-運用 WebX
CoinPostで今最も読まれています

仮想通貨に関する「日本の課税制度」4つの問題点|ビットコイン高騰を受け、関心高まる

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

仮想通貨に関する課税制度の問題点
藤巻健史議員が発足した「仮想通貨の税制を変える会」の活動と現行の課税制度の問題点についてファイナンシャルフィールドが報じ、Yahoo! JAPANに掲載された。ビットコインなど仮想通貨市場の高騰や、JR東日本のSuicaの導入検討でも関心が高まっている。

仮想通貨に関する課税制度の問題点

藤巻健史議員が発足した「仮想通貨の税制を変える会」の活動と、現行の課税制度の問題点について、『生活の中に転がるお金の疑問を解決』をコンセプトとするファイナンシャルフィールドが取り上げ、Yahoo! JAPANに掲載された。

今回の仮想通貨税制に関する記事を執筆したファイナンシャルフィールドは、「仮想通貨投資を考える投資家にとって、仮想通貨の税制はとても気になる点だと思う」とし、現在の仮想通貨の利益は、雑所得扱いとなり最大55%の税率が掛かると言及した。

「仮想通貨の税制を変える会」が掲げる、論点の柱は以下の4点だ。

  • 総合課税最大55%から分離課税20%へ
  • 異なる仮想通貨間の売買は非課税とする
  • 損失した投資額を繰越控除とする
  • 利確時の少額決済を非課税にする

ファイナンシャルフィールドでは、ファイナンシャル・プランニング技能士の立場から、これを分かりやすく解説している。

総合課税として最大税率55%に

仮想通貨で利益確定した場合、その収入は雑所得に分類されるため、総合課税として最大55%が課税対象となる。

株式投資やFX投資は分離課税であり、最大20%の税率となる。租税法の「税制の中立性」という観点からは矛盾していることになる。「仮想通貨税制を変える会」では、仮想通貨についても株式投資やFX投資と同じ20%の税率にしようという活動を行っている。

出典:ファイナンシャルフィールド

日本の税法上は、2017年7月に「改正資金決済法」が施行され、仮想通貨が物ではなく一般的な貨幣と同じような財産的価値を持つ”通貨”として事実上認められたことで、消費税(8%)が非課税となった。

しかし、仮想通貨の取引で得た利益は、「雑所得」に区分され総合課税の対象となるため、一律10%の住民税を合わせた累進課税が適用される。

サラリーマンであれば会社の給与所得など、ほかの収入と合算した額に応じて税率が決まり、所得額に応じて「15~55%(最高税率)」が課税対象となってしまう。

所得(1年間で得た給与収入+仮想通貨収入から給与所得控除を差し引いたもの)が高いほど、税負担が重くなる計算だ。

「税制の中立性」とは、公平性や簡素性と並んで租税に求められて然るべきものであり、税制を構築するうえでの基本原則とされている。つまり、国の政策による経済活動への租税の介入を抑止するため、利用者の消費選好に歪みをもたらすことを防ぐためのものだ。

現状では、税制面で大幅に優遇されている「株式投資やFX投資」が奨励されていると捉えられかねず、「税制の中立性」が保たれているとは言い難い。

この点について藤巻議員は、先日行ったコインポストのインタビュー『なぜ、仮想通貨の税制を改正すべきなのか』でも、FXとか株式投資は分離課税で、なぜ仮想通貨だけ総合課税なのか、という問題もあり、税の中立性や公平感という観点に欠けていると指摘。

また、カジノ関連法案や競馬の利益が一時所得になると報じられている件についても、仮想通貨だけ例外とする不公正な税制に疑問を呈し、通常国会の参院予算委員会などで矛盾点の追求を繰り返し行っている。

詳しくは、以下のコインポストの関連記事で報じている。

藤巻議員、金融庁の仮想通貨関連法案に関して税務当局に要望を依頼
金融庁から暗号資産関連法案の説明を受けた藤巻健史議員が、「イノベーション推進の観点であれば仮想通貨税制が阻害している」と改めて主張。税務当局にも働きかけた。

異なる仮想通貨間の売買に対する課税について

これも世界では類を見ない税制。

仮想通貨間の売買は、利確してモノや物理的な利益を得ているわけではないのに課税対象となることが疑問視されている。仮想通貨間の売買は、非課税にすべきではないかとの声も上がっている。

出典:ファイナンシャルフィールド

具体例を挙げると、日本円でビットコインを購入した後、リップル(XRP)やイーサリアム(ETH)など、他の通貨に替える度に、税金が掛かるということだ。

市場規模拡大のために不可欠な「機関投資家」の参入には、市場の透明性や流動性が担保されていることも重要であるが、このようなデメリットの大きな税制は、”流動性の低下”に直結し、日本の仮想通貨・ブロックチェーン業界の発展の妨げとなっている現状がある。

ファイナンシャルフィールドでも、「仮想通貨の税制については、まだまだ改善の余地があり、(2017年4月の法施行)当時日本政府が定めた仮想通貨法(改正資金決済法)は、仮想通貨の特性が十二分に考慮されていない状況での決定であったことが伺える」と指摘しているが、第四次産業革命というイノベーションの進化の過程にある中、日本政府としても対応が求められている。

損失繰越の控除ができない点について

仮想通貨の場合は分離課税ではないため、前年の投資額がマイナスであった場合、そのマイナス分を翌年の利益から相殺することができない。このため、投資家は多額の税金を支払うことになる。

租税法の中立性という観点から、株式投資やFX投資同様、仮想通貨も分離課税として繰り越し控除を適用できるようにすべきではないかとの声が上がっている。

出典:ファイナンシャルフィールド

これも非常に重要な要素だ。

仮想通貨市場のように、大きなボラティリティを持つ市場において、新規参入を遠ざける要因のひとつとなっている。

上場株式の場合は、取引を行う過程で「年間通じて損失を出した投資家が、損益通算と損失の繰越控除という制度を利用して「確定申告」をすることで、翌年以降、最大3年間繰越で節税できるという仕組みがある。

利確時の少額決済にも課税される点について

仮想通貨を使った買い物の決済についても、仮想通貨法に従い、利益分を計算した金額に対して税金を支払う必要がある。

例えば、日常で数千円単位の支払いを仮想通貨で支払う場合、仮想通貨を買った時期の価格と、現在の時価の差異を計算して税金を納めなければならない。そのため、仮想通貨を日常の決済手段とすることは、現実的ではない。

出典:ファイナンシャルフィールド

先日、金融庁の認可を受けた仮想通貨交換業者ディーカレットに関連し、JR東日本の発行する電子マネー「Suica」で、仮想通貨チャージを検討していることが大きなニュースとなった。ディーカレットは、三井住友銀行や三菱UFJ銀行、JR東日本、ビッグカメラ、電通など、国内を代表する企業19社が出資していることも、大きな反響を呼んだ。

出典:Decurret

日本政府は、他国に大きく遅れをとる”キャッシュレス社会”の促進に注力しはじめており、想定を超える混雑で大きな混乱が予想される、東京オリンピック2020や大阪万博2025の開催を見据え、店舗での決済時の時間短縮や交通インフラの利便性向上が急務と言える。

そのような背景がある中、Suicaなど国内で普及する電子マネーにおける仮想通貨導入は、外国人観光客の利便性を高め、キャッシュレス社会の促進を目指す政策の一環とも一致するものと考えられる。

しかし、現状の税制では、仮想通貨を使用すると、少額決済の度に強制的に利確扱いで課税されることになるため、特に日本人にとってはこれまで同様の日本円チャージを使用せず、仮想通貨チャージを行うにはデメリットの方が大きい。

このままでは、仮に電子マネーでの仮想通貨チャージが導入されたとしても、普及の足かせとなり、日本国外のフィンテック先進国に再び後塵を拝しかねず、将来的な税収減や、海外への資金流出などで「国際競争力」を損ねる可能性も高い。

したがって、仮想通貨市場の活性化やブロックチェーン技術の発展のため、「新しい産業発展において、何が大きな問題(負担)になっているのか」国民が声を上げ、国会に届けることで、日本政府に対して正しい認識を促すことが肝要だ。その点においても、藤巻議員の「仮想通貨の税制を変える会」の活動と、周りの支援は極めて重要と言えるだろう。

新経済連盟も「仮想通貨の税制改正」を日本政府に提起

また先日、楽天の三木谷社長が代表理事を務める一般社団法人「新経済連盟」は、暗号資産の新たな規制に関する要望を金融担当大臣宛てに提出したと、プレスリリースで報告した。

新経済連盟は、代表理事の三木谷氏のほか、株式会社サイバーエージェントの藤田晋氏が副代表理事を務めるなど、IT分野におけるさらなる戦略的な利活用を軸とした新産業を推進、発展を支えていく上で必要とされる政策や諸制度の環境整備を、民間の立場から政策提言を行う組織だ。

要望内容は、「仮想通貨を巡る最新状況と今後の動向」に関する意見交換会を通して収集した会員企業の意見を反映したものだという。

提言内容の中には、藤巻議員が主張する「(税率20%の)申告分離課税や損益通算等の適用」が含まれており、経済界を代表する「新経済連盟」が、政府の金融担当大臣に直接提言を行なった意義は極めて大きい。

なお、仮想通貨交換業者として金融庁の認可を受けた楽天グループの「楽天ウォレット」は、今年6月より取引サービスを開始すると公式 発表。藤巻議員とも、「仮想通貨決済の普及」をテーマに議論している。

CoinPostの関連記事

国会で道が敷かれつつあるビットコインなどの「仮想通貨税制」|日本政府の方針を探る
27日の事業説明会で言及されたディーカレットとJR東日本による仮想通貨関連サービス構想などから、日本政府の方針が浮かび上がってきた。キャッシュレス普及のために、ビットコインなど「暗号資産の税制改正」が必要な理由とは。
藤巻議員、麻生大臣に対し「仮想通貨の税制問題」について質問(一問一答を追加掲載)
藤巻議員は、本日16:00頃にネット中継される「参院予算委員会」で、仮想通貨税制について一問一答形式で日本政府に質問予定。先日の衆院予算委委員会では、中谷議員の鋭い質問を受け、イノベーションの観点では前向きな見解を示す一幕もあった。
CoinPost App DL
厳選・注目記事
注目・速報 市況・解説 動画解説 新着一覧
12/02 火曜日
07:05
ストラテジー、約2240億円の米ドル準備金を確保
ストラテジー社は、優先株の配当と負債の利子の支払いのために約2,240億円の米ドル準備金を確保したことを発表。目的を説明し、仮想通貨ビットコインの買い増しも報告した。
07:00
チェーンリンク初のETF、NY証券取引所に上場予定
仮想通貨チェーンリンク(LINK)に投資する上場投資信託(ETF)が12月3日にニューヨーク証券取引所で取引を開始予定。NYSEアーカがグレースケール・チェーンリンク・トラストETFの上場を認証した。
06:45
米バンガードが仮想通貨ETF取引を解禁、5000万人超の顧客にアクセス提供へ
ブルームバーグが報じたところによると、世界第2位の資産運用会社バンガードは12月3日から仮想通貨を主に保有するETFとミューチュアルファンドの取引を許可。遂に長年の保守的姿勢から転換。
06:25
米下院共和党が仮想通貨の「ディバンキング問題」を追及、チョークポイント2.0報告書を公開
下院金融サービス委員会の共和党議員が12月2日、バイデン前政権による仮想通貨業界への組織的な銀行サービス拒否を批判する53ページの報告書を公表した。ストライクCEOの口座閉鎖事例なども議論を呼んでいる。
05:55
ビットコイン8.5万ドル割れ、個人買い増しとクジラ失速が鮮明に=アナリスト指摘
ビットコインは12月1日深夜8.4万台まで続落した。大口保有者の購入鈍化と日銀の植田総裁によるタカ派発言が圧力となり、4億ドル以上の清算が発生。
12/01 月曜日
18:34
日経グループQUICK、ビットコイン指数の算出開始
QUICKは12月1日、円建てビットコイン指数の本格公表を開始した。試験運用から更新頻度を毎日に引き上げ、12月22日からはリアルタイム指数も提供する。暗号資産ETFなどでの利用を想定。
17:07
イーロン・マスク氏「エネルギーこそ真の通貨」、ビットコインは基づくと主張
テスラCEOのイーロン・マスク氏が「エネルギーこそ真の通貨」と主張し、ビットコインはエネルギーに基づいていると説明。一方、著名経済学者やピーター・シフ氏は「本質的価値がない」と批判を続けている。
17:01
政府・与党、暗号資産の分離課税導入を検討へ 調整開始─NHKなど報道
政府・与党が暗号資産投資の分離課税化を巡り調整に入ったとNHKが報道。現行は最大55%の総合課税で、制度見直し議論が年末の税制大綱へ進む見通し。
16:26
「チェーンリンク」の将来性は?トークン化市場に必須インフラ
チェーンリンク(LINK)の将来性を解説。2030年に16兆ドル規模が予測されるトークン化市場で、既存金融とブロックチェーンを接続するオラクルとして80%超のシェアを獲得。SWIFT・J.P.Morganとの提携事例も紹介。
16:00
スイ(SUI)のステーキングで高利率なのは?自分で行う方法と取引所比較
SUIのステーキング方法を徹底解説。取引所(年利最大4.28%)、ウォレット、リキッドステーキングの3つの運用方法を比較表付きで紹介。初心者向けのOKCoin Japanから、Slushウォレットでの自己管理、Haedalでの高度な運用まで、リスクと利回りを考慮した最適な選択をサポート。
15:55
ワールドコインの本人認証方法|マイナンバーカードでWLDを受け取る手順を解説
ワールドコイン(WLD)がマイナンバーカードでの本人確認に対応。World Appでの認証手順を画像付きで解説。所要時間約5分で完了し、Orb認証済みの方も追加のWLDを獲得可能。受け取ったWLDの現金化・運用方法も紹介。
15:43
ソニー銀行、米ステーブルコイン事業化に向けBastionと業務提携 子会社設立も視野に
ソニー銀行が米Bastionと業務提携し、米ドル建てステーブルコインの事業化を推進。日経報道によると2026年度の発行を計画し、ソニーグループの「経済圏」での決済活用を目指す。米国子会社設立とOCC銀行免許取得も視野に。
15:35
Ginco、Babylon Labsと提携「BTCFi 2.0」を推進
GincoがBabylon Labsと提携し、第三者への預託なしでBTCを活用できる「BTCFi 2.0」を日本で推進。業務用ウォレットGEWからBTCステーキングが可能に。
14:26
カザフスタン中銀、仮想通貨投資を計画 最大約470億円規模
カザフスタン国立銀行(中銀)のティムール・スレイメノフ総裁は、金・外貨準備ポートフォリオの一部として、仮想通貨へ最大3億ドルの投資を検討していると発表した。
11:47
テザー社CEO、S&PによるステーブルコインUSDT格下げに反論 余剰資本を強調
テザー社CEOがS&PによるステーブルコインUSDTのドルペッグ機能評価の格下げに反論した。余剰資本や米国債利回りを考慮していないと指摘している。
通貨データ
グローバル情報
一覧
プロジェクト
アナウンス
上場/ペア
重要指標
一覧
新着指標
一覧