
昨年秋、海外で活躍する日本人メジャーリーガーを起用した初テレビCMを実施し、現在は有名タレントを起用するビットバンク。預かり資産は1兆円規模に成長し、これに伴う内部管理体制強化やセキュリティ向上に取り組んでいる。
同社代表取締役社長CEOで、JCBA(日本暗号資産ビジネス協会)会長、JVCEA(日本暗号資産等取引業協会)理事も務める廣末紀之氏は、自社ビジネスのみならず、業界の課題解決と市場の活性化に向けた議論をけん引している。規制の金融商品取引法(金商法)への移行および分離課税の実現に向けた議論が進む2025年後半は業界にとって「天王山」と廣末氏は力説する。
預かり資産1兆円規模への成長と内部管理体制の強化
──現在の暗号資産市場をどのように捉えているか。
廣末氏:価格は上昇しているが、取引所の立場からすると、リテール(個人投資家)層の反応はあまり高くないと感じている。アメリカでのETF(上場投資信託)などを含め、機関投資家主導の相場形成であり、リテールが追随していないためだろう。
世界的にも取引所の取引高はさほど増えておらず、かつてのような「お祭りムード」には至っていない。
──今年、御社が最も注力していることは。
廣末氏:我々が注力していることは一貫してセキュリティだ。金商法への移行がほぼ既定路線となっている今、従来のセキュリティに加え、金融的な文脈での体制整備が求められている。
ビットバンクは預かり資産で約1兆円規模が視野に入ってきた。これは中堅の地方銀行に相当する規模で、求められるセキュリティ基準もより厳しさを増していると感じている。
ご存知のとおり、昨年のビットコイン流出事故を受け、システムリスク管理や国際的な課題であるマネーロンダリング対策への関心が高まっている。当社は一環して内部管理体制の強化に努めてきたが、特にこの2、3年で規模が拡大しているため、今一度、体制を整備するフェーズにある。
認知度向上への挑戦と業界全体のセキュリティ強化

──昨年から著名人を起用したCMを展開している。
廣末氏:当社はサービス品質には自信があるが、さらなる拡大には知名度や認知度の向上が課題だった。そこで昨年10月頃からマスマーケティングを強化し、初のテレビCMを放映した。
リテール層の反応が鈍い現状では、テレビCMの効果は過去に比べるとさほど望めないかもしれないが、認知度向上という課題は達成できており、一定の成果はあったと考えている。
──JCBAやJVCAでも要職に就かれている。今、業界として取り組んでいることは何か。
廣末氏:JCBA(日本暗号資産ビジネス協会)の会長、JVCEA(日本暗号資産等取引業協会)の理事として、取引所のセキュリティレベルの引き上げは喫緊の課題と捉えている。
今年は証券業界で口座乗っ取り問題も発生し、暗号資産業界だけでなく、金融業界全体でセキュリティへの問題意識が高まっている。その中で、個社が努力するだけでは不十分で、どこかの会社で事故が起きれば「暗号資産は危険」という認識につながってしまう。セキュリティは業界全体で取り組むべき非競争領域だと考えている。
そこで、日本の暗号資産業界におけるサイバーセキュリティ強化と情報共有の促進を目的にした「JPCrypto-ISAC」を設立し、業界全体の知見共有とセキュリティレベル向上に努めている。外部委託先の管理基準やチェックシートの整備も進め、業界全体の強度を高める取り組みを行っているところだ。
また、暗号資産を現行の資金決済法から金融商品取引法(金商法)の下で規制することが検討されている。昨年半ば以降、勉強会を重ねてきた。現在は、金融庁の金融審議会においてワーキンググループ(WG)が設置され、具体的な制度設計について本格的な議論が始まっている。
年末まで、金商法の枠組みで暗号資産をどう新たに定義するかが議論される予定で、今年後半は業界全体にとって、今後の行く末を左右する重要な「天王山」と言える。
「金商法への移行と分離課税はセット」
──金商法への移行は取引所ビジネスにどういった影響を与えるだろうか。
廣末氏:現在の資金決済法と比べると取引所に求められるものは一層厳しくなる。特にインサイダー取引、開示基準、不公正取引といった金商法特有の規制が加わり、さらなる体制整備が求められ、取引所の負担は重くなる。
なので、業界として「金商法への移行は理解するが、分離課税とセットで」という考えを示している。この両方が実現すれば、プラスとマイナスを比較した際にプラスが大きいと見ている。
取引所としての “ポジショントーク” を抜きにしても、業界を発展させるためには活発な取引基盤が不可欠。Web3ビジネスや日本での登場が期待される暗号資産ETF(上場投資信託)などの金融商品も取引基盤がなければうまく機能しない。
暗号資産業界にとって、現在、最大の足かせとなっているのが税制であり、それを変える前提で金商法の厳しい制約も受け入れる覚悟だ。金商法の議論は金融庁、税制は財務省と管轄が異なるが、2つは必ずセットであると業界として強く訴え続けている。
ステーブルコインとビットバンクの取り組み
──WebXで大きな話題になったステーブルコインについての取り組みは。
廣末氏:我々も電子決済手段等取引業(電取業)の申請を進めている。ただ、法的な枠組みはできたものの制度上の課題が多く、取扱いは非常に難しい。必ずしも使い勝手の良い制度にはなっていない。
世界のステーブルコインのほとんどはドル建てだが、国内でのドル建てステーブルコインのニーズは現状、それほど高くないだろう。円建てについても、既存の決済手段が広く普及している中で、ユースケースの創出が課題だ。
一方で、三井住友トラストグループと共同で取り組んでいる日本デジタルアセットトラスト設立準備株式会社(JADAT)のようなカストディ機能の提供は、オンチェーンでのトークン管理に不可欠であり、我々が長年培ってきたセキュリティや管理ノウハウが活かせる領域だ。独自性を発揮できる分野としてインフラ面での貢献ができると考えている。
ブロックチェーン技術の素晴らしい点は、あらゆるアセットをトークンで表現できること。証券や金融商品もトークン化されることで、24時間365日の取引やリアルタイム決済が可能になる。長期的にこの方向へ進むのは間違いない。
金商法の議論を重ね市場活性化へ

提供:ビットバンク
──WebXでのブース出展では来場者からどんな反応があったか。
廣末氏:当社は3年連続でタイトルスポンサーとして参画し、今年も特設ブースを出展した。ブースでは、ここでしか体験できないコンテンツを用意し、多くの方に楽しんでいただき、「面白かった」といった声も寄せられるなど、大変好評を博したと感じている。
昨年はやや閉じた雰囲気を感じたが、今年はより一般に開かれた印象を受けた。また、今回は外国の方が非常に多いと感じた。全体として、熱気は確実に高まっていると受け止めている。
──今年後半のテーマはやはり金商法だろうか。
廣末氏:その通りだ。この半年ほどの結論が、今後5、6年の業界の方向性を決定づけると考えている。
今回の議論が順調に進めば、市場を活性化できる可能性がある。暗号資産業界全体のために、知見を持つメンバーと議論を重ね、全力で取り組んでいきたいと考えている。

ビットバンク代表取締役CEOの廣末紀之氏
|インタビュー:CoinDesk JAPAN広告制作チーム
|構成・文:瑞澤 圭
|撮影:多田圭佑
※当記事は、CoinDesk JAPANに掲載された広告シリーズ「Sponsored by WebX」からの転載です。
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