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事業参入延期事例から見る「日本の仮想通貨事情」 暗号資産への呼称変更が意味する動きとは

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

仮想通貨交換業参入延期事例から見る日本の状況
仮想通貨で新たに動く法整備と業登録、実際に運営を行う仮想通貨事業者にはより厳しいハードルが課せられる動きにつながった。今回は仮想通貨交換業参入延期事例から現在の日本の仮想通貨シーンや今後求められる動きを考察した。

仮想通貨交換業参入延期事例から見る日本の状況

仮想通貨に関連した事業を展開する事業者に、市場低迷の影響は大きく、日本企業もその煽りを受けている状況にある。

ビットコインは4月に入り、市場が堅調な推移を継続しているが、過去最高値($19,665.39)からは未だ73%安と状況が緩和傾向にあるとは言い難い。特に2017年より続いた過去最長の下落相場の影響で流出したユーザー数だけでなく、残るユーザーも消極的な傾向にあり、事業を展開する企業には厳しい状況にある。

規制策定などの動きを経て、正しい仮想通貨業界を目指す日本は、進むべき道へと着実な一歩を歩んでいる。一方で、業界を支える事業者など運営を続けていく上での課題もあることは把握しておきたい。(健全化へ向かっている状況は、間違いなくユーザーにおいても事業者においても歓迎すべき状況)

そのような中で、日本でも新たに株式会社マネーフォワードが仮想通貨関連事業参入への延期と交換業者登録に向けた手続きの中止を発表した。2019年4月15日に開催したマネーフォワードフィナンシャル株式会社取締役会で決議した内容として伝えたが、その事業撤退理由が現日本の仮想通貨業界を見る上でとても参考になるため、事例から業界の現状と今後の必須事項を見ていきたい。

マネーフォワードが仮想通貨関連事業への参入延期と交換業者登録に向けた手続きの中止の理由は大きく分けて以下の2点だ。

  • 収益性に関するダウンサイドリスクの高まり
  • 万全の体制構築にかかるコスト上昇

要するに、収益性とそれに伴うコスト(支出)であり、まさに現在の仮想通貨企業、特に仮想通貨の現物を扱う交換業者の事業維持や展開に関わる問題点が挙げられている。



収益性

一つめの収益面に関わるダウンサイドリスクとは、日本語で言う下方リスクのことで、保有資産における損失や事業を行う中で損失を被ることなどが該当する。交換業者であれば取引所を運営する上で必要な現物仮想通貨の保有に関わる価値の下落なども損失に関わると考えられるが、特にヘッジ手段に乏しい仮想通貨ではテールリスク戦略も立てにくく、その影響を大きく受ける。

収益面を左右するユーザー数が減少傾向にある現在、ダウンサイドのリスク要因とみる見方は多方で考えられているといえるだろう。



コスト面

また、コスト面では政府主導の規制が進んだことで、企業が対応するための予算は大幅に増加した。特に世界の中でも法整備の進む日本では、仮想通貨に関する法律を改正資金決済法から金商法の適応範囲にも拡大、広範囲にも及ぶ規制準拠が強いられている。要するに事業の運営基準が急速に高まったことを意味する動きとなる。

日本政府が3月15日に閣議決定した内容の中で、仮想通貨の呼称が「暗号資産」に変更されるとの内容が盛り込まれたが、この呼称変更にも重要な意味が含まれている。

仮想通貨はこれまで通貨の機能に対応したと改正資金決済法を基準として規制されてきたが、投資や投機面を含めた資産価値の向上により、「通貨の機能(カレンシー)」と「資産の機能(アセット)」として、時間の尺度としてのお金の構造としての矛盾が生じてきた。

これはビットコイン本来の概念によるものであるとの見方があるが、実際に通貨と資産の両側面をカバーするとなると、以下のように複数の法律に則った運営体制が必要となるという。今回の動きを経て、このアセット面に係る対応が新たに求められる動きに繋がったことを意味する。

通貨資産
通貨の機能(決済、貸付)資産の機能(運用・ヘッジ)
資金決済法 銀行法 貸金業法金融商品取引法 保険業法
金利のような将来のリターンなど決められたプロトコル:守るべきは「約束」の履行不確かの収益化:守るべきは「情報」の流通(見せ玉などは禁止)

仮想通貨規制に係る閣議決定は、日本の仮想通貨シーンを一新し業界健全化に繋がる動きである反面、交換業を営む交換業者は法律に準拠することで求められる内容が銀行や証券会社などを含む金融業者レベルにまで押し上がった事例となった。また、現在では仮想通貨に係る業者を規制する法律が『仮想通貨交換業ライセンス』のひとつであることから、取引プラットフォームを提供する目的ではない業者にも同様の基準が求められている現状がある。

なお、巨額仮想通貨流出事件などを踏まえ流出リスク対応策として定められたホットウォレット管理の仮想通貨に対応した「見合いの弁済原資(同種・同量の暗号資産)の保持」の義務化など、上述したダウンサイドリスクに直結する要項も規制改定に伴い経営体制に影響が出る事項にあがると予想される。

これまでメインプレイヤーにあったベンチャー企業などの中小企業が大手金融機関などに吸収されてきた背景には、ハッキング事件などのインシデント事例をのぞき、このコスト面を含めた万全の体制構築が対応できる範囲を超えたことが挙げられるだろう。

今後の日本の事業シーンは?

これらの動きを踏まえ、日本の仮想通貨シーンの移り変わりは今後も起こりうる事象であることが推察できる。特に事業者登録の申請待ちの企業は、運営コストがランニングでかかる反面、収益性や登録後のダウンサイドリスクを考慮する必要があるため、より体力のある企業かつ今後のビジネス展開に明確なビジョンを持った企業を中心に残っていくのではないかと考えられる。

すでに顧客数を多く抱える交換業者の優位性は保たれている状況ではあると考えられるが、今後交換業者の数が増える中で激化する競争による収益の薄利化なども踏まえ、業界全体でユーザー獲得(金融市場からの新規獲得など)に動く協力体制を見直す必要があるのではないだろうか。

仮想通貨市場にプラスの流れも

なお、新たな規制策定に伴い、大手金融機関の参入事例なども相次いでいることから、利用ユーザーにおいては歓迎すべき事例が相次いで発表されている。

2019年に入り、資金決済法の基づく「仮想通貨交換業者」としてマネックス傘下のコインチェックや楽天傘下の楽天ウォレット、IIJ傘下のディーカレットが関東財務局への登録を完了。停滞していた業登録にも進展が見られている。

また、4月15日には仮想通貨取引サービス「楽天ウォレット」に係る新規口座開設を開始。16日にはディーカレットの取引所がオープンするなど、新規取引所も事業開始に向けて動き出した。

特にディーカレットなどの発表内容から、投機的な仮想通貨の取引の側面ではなく、仮想通貨技術を応用したプロダクト面やアダプションにも注力する動きが確認できるなど、日本の仮想通貨シーンに新たな一面が加わることに期待感が高まっている。

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