はじめての仮想通貨
TOP 新着一覧 チャート 学習-運用
CoinPostで今最も読まれています

仮想通貨で政治家個人への献金、総務省の「合法判断」はなぜ?

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

仮想通貨で政治献金、総務省の「合法判断」はなぜ?
総務省が、政治家個人への献金で仮想通貨を通じた献金は違法にならないとの見解を示した内容について、暗号資産取扱古物商協会設立を目指す岡部典孝氏が、合法になった経緯とその理由を解説した。

記事修正:記事内容で、財務省との表記された箇所がございましたが、正しくは「総務省」となります。 表記に誤りがあり、誠に申し訳ございませんでした。

仮想通貨で政治献金、総務省の「合法判断」はなぜ?

総務省が、政治家個人への献金で「仮想通貨を通じた献金は違法にならない」との見解を示した内容について、暗号資産取扱古物商を営む岡部典孝氏が、合法になった経緯とその理由を解説した。

岡部 典孝氏は、暗号資産取扱古物商協会設立を目指すなど、国内における仮想通貨の法的な解釈にも精通する人物だ。仮想通貨を通じた政治資金の献金についても、岡部氏が総務省の政治資金課へ情報公開請求を行い、全面開示されたものが報道の発端となっている。

岡部氏自身も、代表がいない政治団体「トークントークン」を設立しており、非中央集権の理念から、仮想通貨の献金が送られてきたことが問い合わせの背景にあるという。

現在の日本では政治家個人への献金は原則禁止されているが、仮想通貨は政治資金規制法上の「金銭」や「有価証券」には該当しないため、違法にはならないとの見解が総務省の政治資金課が、公表した文書で明らかになった。

政治家に献金する場合は政治団体を通じて献金することになるが、個人への仮想通貨を通じた献金が可能になることで国民へ公開されていた資金の流れが不透明になる可能性があるほか、日本の政治に影響を及ぼしたい人物が政治家に寄付を行うなどの問題が生じる、と解説する岡部氏。早急に法改正を行う必要があると論じた。

本記事は、岡部氏が解説する「仮想通貨で政治家に献金して合法な訳」と、CoinPost編集部が取材した内容を併せて掲載。日本の政治や仮想通貨の業界でどのような問題点が生じるのかを解説する。

仮想通貨献金の焦点は

仮想通貨を通じた献金で焦点となったのは、仮想通貨の法律上の規定が、現在の政治資金規制法で禁じられている「金銭」や「有価証券」への該当するかだ。

総務省への問い合わせは、仮想通貨の取り扱いに関する政治資金決済法上の規定はないことや、一般的な仮想通貨の取り扱い(種類は数百以上、態様も様々なため)との前提を踏まえて行われたもので、政治資金規制法上での「金銭」または「金銭等(金銭その他政令で定める財産上の利益:有価証券)」に該当するか、また「財産上の利益」としてどのように区分されるかが焦点とされた。

現在の政治資金規制法では、政治家に対して個人で献金する場合、金銭を通じた献金は違法。物品を通じた献金は合法という法律上の解釈にある。

総務省の政治資金課が公表した文書では、仮想通貨は政治資金規制法上で、法定通貨に区分される「金銭」や財産権を表彰する証券である「有価証券」には該当しないと回答。これらの結果から金銭その他法令で定める財産上の利益に該当する「金銭等」には区分されないとした。

総務省の結論としては、一般的に仮想通貨は政治資金決済法上の「金銭等」には該当せず、「物品その他の財産上の利益」には該当するとの見解だ。これは、外国通貨と同様の区分となるという。

今回の区分について、岡部氏は以下のように語った。

政治資金規正法は従来からザル法と言われており、外国通貨や金塊は従来から物品として政治家個人に献金可能である。

仮想通貨が外国通貨と同様に物品扱いという今回の見解も、現在の政令上では妥当な見解だと考える。

仮に仮想通貨が金銭等に該当すると政令改正した場合、匿名仮想通貨寄附が法律上自動的に国庫に帰属することになるが、各省庁に受け入れ態勢は全く整っていない。

総務省は法改正と体制が整うまで、仮想通貨による政治家個人への献金を外国通貨による個人献金と同様に認めるべきと整理したと考えられる。

仮想通貨の寄付における問題点

一方、仮想通貨の寄付が法的に禁止されないことに対して、法改正をすべきとの声は大きい。

岡部氏が解説した仮想通貨による寄付の問題点は、大きく分けて二点ある。

政治家個人への寄付問題

一つ目が、政治家個人に寄付できる問題だ。通常、政治団体の制度を通じて寄付を行うことで、政治資金の流れを国民に示すが、個人に直接寄付されることによって、流れが不透明になると問題視した。

特に、仮想通貨の場合は価値を定めにくい通貨であるうえ、その特性上、法定通貨と比較して匿名での献金となる問題が生じやすい。仮想通貨のアドレスを政治家が公表しない限り特定は難しく、政治献金か売買など個人利用に関するトランザクションか、判断できない問題に発展する可能性もある。

政治献金の場合、金銭等に該当する匿名元の寄付は、不正防止の観点から国庫に帰属することになっているが、この点で混乱が生じる可能性があると見ている。

国外勢力による悪用リスク

二つ目の問題点にあげたのは、国外から日本に影響を及ぼしたい人物が、悪用する可能性だ。例に挙がったのはリブラなどのトークンを意図的に流行らすことを目的に、政治献金を利用するケースが考えられるという。

この問題について岡部氏は、外国人や外国企業から政治家個人に寄付されても捕捉できない点は総務省も認識していると語り、「例えば、外国主導の仮想通貨の規制を決めることができる国会議員が、匿名の外国人からLibraで寄附を受けてしまっては、公正な審議は期待できない」とコメントした。

法改正にもハードル

また、仮想通貨における政治献金の問題を解決するための、法改正にもハードルはあると、岡部氏は話した。

多くの法律は内閣が提出するのに対して、三権分立の観点から政治資金規正法は原則として議員立法で改正される。

しかし、政治家は寄付をもらう側の立場でもあるため、仮想通貨を通じた献金が活動資金になることにメリットを感じる可能性もあり、法改正へのハードルになり得るのではないかと指摘した。

岡部氏は、これまで公表することを自主的に控えてたというが、読売新聞などで大きく報道されたのを機に、情報の公開と拡散に努めていくという。

悪徳政治家に悪用される前に法改正して穴を塞ぐことができるかはスピード勝負であるとして、「法改正施行までは事実上合法であるため、倫理的に間違ったことをしている政治家を当選させるかどうか、という有権者の判断に委ねることになる。有権者が判断するためには速やかに収支が公開されることは必須であるが、政治家個人の政治活動に仮想通貨が寄附された場合に、収支が公開されないというのがこの問題の本質だ。」と語った。

政治とブロックチェーン

なお、政治とブロックチェーンの世界で精力的な活動を行う岡部氏は、どのように利益調整して決定するかという意味で、政治は元々ブロックチェーンと相性が良い領域だと話した。

例えば、新しい政治団体が独自仮想通貨を発行した場合だ。支援する候補者の政治活動を手伝うインセンティブを与えやすくなるなど、政治が身近になるきっかけにもなると考えている。

また、今回の総務省の判断をうまく活用することで、仮想通貨で寄付を受けるブロックチェーン推進派の政治家が増える可能性もあるとした。

一方、個人に対するメリットにも触れた。

個人が仮想通貨を現金に換えてから政治団体に寄附したら雑所得として税金がかかるのに対して、仮想通貨をそのまま政治団体に寄附することで税金がかからない可能性があるほか、寄附された仮想通貨のまま物品を購入した場合、消費税課税の政治団体に仕入税額控除で消費税が現金で還付される可能性まであると指摘する。

法的解釈で揺れる今回の事例、今後の法改正が焦点となるも、政治の世界で一つ仮想通貨が注目される事例として、注目したい。

最後に岡部氏は、「国会議員が自ら改正を発議するか、引き続きみんなで見守りたいと思う。」と言葉を結んだ。

CoinPostの関連記事

警察庁、古物商許可での「仮想通貨決済」を公式に認める
暗号資産取扱古物商協会設立を目指す岡部氏は、古物営業における「仮想通貨取引」の可否について警察庁の公式見解を報告。暗号資産取扱古物商を活用した、未上場暗号資産を含むイノベーティブな仮想通貨関連サービス拡大に期待を寄せた。
2020年米大統領選候補、初のBTCライトニングによる政治献金募集を開始
仮想通貨の支持者である候補者Andrew Yang氏は、『Super PAC』を介し、ライトニングネットワークを活用したBTCによる政治献金を募集すると発表した。ライトニングによる政治献金は今回が初事例。
CoinPost App DL
厳選・注目記事
注目・速報 市況・解説 動画解説 新着一覧
06/30 月曜日
09:23
米タイム誌『最も影響力のある企業100選』にコインベース、仮想通貨業界の政策牽引で選出
米TIME誌が発表した「最も影響力のある企業100選」に米国の仮想通貨取引所最大手であるコインベースが選出された。株価は先週最高値を更新した。
06/29 日曜日
14:00
今週の主要仮想通貨材料まとめ、リップルによるSEC相手の控訴取り下げやソラナ財務企業の株価暴落など
前週比で振り返る仮想通貨市場の最新動向。ビットコインやイーサリアム、XRP、ソラナなど主要銘柄の騰落率や注目材料を一挙紹介。市場トレンドと関連ニュースを詳しく解説する。
11:30
ビットコイン下降チャネル上限届かず、PCE発表控え押し目形成の可能性に注意|bitbankアナリスト寄稿
今週の週次レポート 国内大手取引所bitbankのアナリスト長谷川氏が、今週の暗号資産(仮想通貨)ビットコインチャートを図解し、今後の展望を読み解く。 目次 ビットコイン・オン…
11:00
週刊仮想通貨ニュース|メキシコ大富豪のBTC価格上昇予測に高い関心
今週はメキシコ大富豪のビットコイン価格上昇予測、米テキサス州のビットコイン準備金設立法案成立、金融庁の仮想通貨規制審議に関するニュースが最も関心を集めた。
06/28 土曜日
14:00
仮想通貨配分を4割まで推奨、米著名金融アドバイザー「従来60-40モデルは時代遅れ」と見解
著名金融アドバイザーのリック・エデルマン氏は最新見解で仮想通貨ポートフォリオ配分を従来の1%から最大40%へ大幅引き上げを推奨。
13:15
米上場Genius Group、ビットコイン買い増し構想 勝訴した際の損害賠償で
NYSE上場のGenius Groupが、訴訟勝利の場合に得られる推定10億ドルの50%をビットコイン購入に充当する計画を発表した。昨年よりビットコイン財務戦略を採用している。
11:26
イーサリアム取引量史上3位、価格低迷でもネットワーク急増
イーサリアムが6月25日に175万件の取引を記録し史上3位を達成。価格は低迷するもネットワーク活動は活発化、従来のアルトシーズン理論に変化の兆しになるか。
10:25
イスラエル当局、仮想通貨報酬によるスパイ容疑で3人逮捕=レポート
イスラエル当局がイラン諜報機関の工作員3人を逮捕。仮想通貨で報酬を受け取り、9000万ドル被害のノビテックス攻撃との時期的関連が注目されている。
09:45
ポリマーケットの評価額10億ドルに達する見込み USDCにも恩恵か=コインベース
分散型予測市場ポリマーケットが2億ドル資金調達しユニコーン企業になる見込みだ。コインベースは、ポリマーケットの台頭はステーブルコインUSDCにも恩恵になると分析している。
08:50
ストラテジー株トークンなど主要銘柄、Gemini EU向株式サービス開始
仮想通貨取引所Geminiが欧州連合でトークン化株式サービスを開始。マイケル・セイラーのストラテジー株を皮切りに、24時間365日取引可能な新金融サービスを提供する。
08:00
ブータン、ビットコイン保有額が13億ドルに到達
ブータンが、仮想通貨ビットコインを13億ドル相当保有していることが注目を集めている。この保有額は同国のGDPの40%に相当する。
07:55
リップル、SEC相手の控訴を取り下げ 5年間の法廷闘争が終結へ
リップル社のガーリングハウスCEOが28日、SEC相手の控訴を取り下げると発表。約5年間続いた法廷闘争が終結し、同社は事業発展に注力する方針を示した。
07:10
米仮想通貨銀行アンカレッジ、USDC等の段階的廃止発表 業界から「利益相反」批判
米仮想通貨カストディ銀行アンカレッジがUSDCとAUSDの段階的廃止を発表、ステーブルコイン安全性評価で業界から自己利益優先との批判を受ける。サークル株価は15%と大幅安。
06:49
韓国カカオペイ株急落、ステーブルコイン規制懸念が背景か=報道
韓国カカオペイ株がステーブルコイン参入期待で急騰後17%下落、投資リスク銘柄指定で売買停止。米サークル株も15%安と波及か。
06:15
ロビンフッド、XRPとソラナのマイクロ先物契約を開始
米デジタル証券大手ロビンフッドがマイクロ先物でXRPとソラナを追加、ビットコイン金曜先物のマイクロ版も提供開始し仮想通貨商品を拡充。

通貨データ

グローバル情報
一覧
プロジェクト
アナウンス
上場/ペア
重要指標
一覧
新着指標
一覧