バイナンスに日本再進出の可能性も
仮想通貨取引所世界最大手のバイナンスが、日本での弁護士資格を持つ人材を募集していたことがわかった。
ビジネス特化型SNSのリンクトインに2週間前に初掲載され、4日前に再度求人内容が掲載された。2~3年の実務経験を持つ若手の募集だが、英語に堪能なことはもとより、海外での法務教育や多国籍企業での経験が望ましいとされている。
バイナンスの法務部門で法律関係の調査をはじめ、覚書の起草や契約書の作成、法的書類の翻訳などの業務に携わることになるという。
日本での活動の経緯
2017年7月の創業後、約半年後には利用者数及び取扱通貨共に世界最大の取引所へと急成長したバイナンス。
当時香港に拠点を置き、日本支社設立にも意欲を見せていた同取引所だが、2018年3月23日、金融庁より無登録で日本での営業を行っていたとして改正資金決済法に基づく警告を受けた。
金融庁によると日本人の口座開設時に本人確認を怠り、匿名性の高い仮想通貨の扱いもあるため投資家保護の観点からの警告だったという。その後、バイナンス はホームページから日本語設定を削除し、ブロックチェーンや仮想通貨規制に寛容な政策をとる地中海の島国、マルタへの移転を発表し、現在に至る。
世界へ拠点を広げるバイナンス
先進的な仮想通貨規制で知られるマルタ共和国に本拠を置くバイナンスだが、積極的にグローバルな事業を展開し、以下の世界11カ国にも拠点を設けている。
- アメリカ
- イギリス
- フランス
- ドイツ
- ジャージー
- ロシア
- トルコ
- インド
- ウガンダ
- シンガポール
- ベトナム
また先月、韓国にも現地法人を設立していたことが報道されているが、さらに今後6ヶ月から9ヶ月の間に、世界の180の全法定通貨に対応する計画を、CEOであるCZ氏自らシンガポールで開催されたミートアップにて明らかにしている。
そして今月に入ると、バイナンスにも法定通貨決済の技術提供を行うSimplex社(本社イスラエル)が、新たに日本円とカナダドルのサポートを開始したことが明らかになった。
これにより、提携先取引所のユーザーは、JPYとCADに対応するクレジットカードで仮想通貨を購入が可能になるという。 Simplex社の日本円サポート開始が、直接バイナンスの日本円対応に直結するわけではないが、バイナンスの法定通貨取引サービス計画の流れを考慮すると、Simplex社の動きはその準備の一環とも捉えることができるだろう。
今回のバイナンスによる日本語話者弁護士募集は、2年前の教訓を生かし、日本円に対応するために万全を期そうとするバイナンス側の姿勢を表しているのかもしれない。
しかし、仮想通貨データ分析を行う米DataLight社の調査結果によると、仮想通貨取引所の月間利用者数ではアメリカ(2260万人)に次ぎ、日本は世界第2位(610万人)に達している事実(注1)を踏まえると、世界的に見ても魅力の高い市場であることに疑いの余地はない。そして、機を見るに敏なバイナンスが日本市場をいつまでも避けて通るとも考え難い。
2020年、仮想通貨業界の巨人バイナンスが日本市場に、そして世界市場にどのような変化をもたらすのか興味は尽きない。
(注1)中国在住ユーザー等のVPNを利用したアクセスは調査結果に含まず。