ハッシュレート乱高下の舞台裏
旧型のマシンを使っているビットコイン採掘業者は今後採算がさらに悪化していく可能性が指摘されている。
ビットコインは半減期後も市場価格は伸び悩み、報酬減の煽りを受けたマイナーの適者生存競争の影響で、ハッシュレートが乱高下している。
半減期後から難易度調整は3度行われており、2度が5%を超えるマイナス調整。先日、10%を超える大幅な難化調整が実施された。
6月17日の難易度調整は、「+14.95%」の難化調整で、1回の難化調整としてビットコインバブルだった2018年1月以来最大の調整幅だった。
半減期後、マイナーはどう動いたのか
ビットコイン半減期のあと、乱高下したハッシュレート。中国ではコスト減になる雨季(豊水期)の時期と重なったが、有識者によると旧主要マシンの収益ラインが均衡値付近にある。難易度調整でハッシュレートが大きく変動していることも、それを裏付けるデータと見ている。
有識者のひとり、仮想通貨データサイト「Coinmetrics」のアナリストKarim Helmyは海外メディアCointelegraphの取材で、半減期後に2度の難易度易化調整を受け、S9などのマシンが収益ラインに乗ったことで、その後のハッシュレートが上昇方向に向かったと明かした。
「S9」はビットメイン製のAntminer S9のことで、ビットコインが過去最高値付近にあった2017年に販売され広く普及した機種のひとつだ。その後、最新マシンも相次いで発表されているが、CoinMetricsが2020年5月に調査した時点でも、全ハッシュレートの20%ほどをS9が占めるなど、マイニング業界を今も支える機器となっていた。
今回の証言をもとに考察すると、半減期で収益ラインに乗らなくなったS9などの旧機種が停止、一時ハッシュレートが急落した。その後、2度の難易度調整や中国の豊水期などで、一時的に採算ラインまで復活した可能性がある。
マイナーは、採算ラインを下回った場合、赤字で採掘を継続することは少ないとされている。
最新機器の影響と懸念
これについては、大手F2Poolのグローバル責任者Thomas Hellerも難易度の易化で一部の旧マシンが復活したことには同意しているという。
また、Heller氏によると、主に出荷が正常に戻りつつあった最新モデル「MicroBt M30」、「Antminer S19」などによるハッシュレートの貢献しているという。
しかし、現在起きているBitmainの経営権の闘争の影響で、一部の新マシンの出荷が停止される影響を懸念している。今後のハッシュレートの推移は予測しづらくなると考えているという。
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難易度調整後のデータ
1回の難化調整として、ビットコインバブルのピークにあたる2018年1月以来最大の調整幅となった難易度調整後の推移をデータで紹介する。
まず、BTC.comのプールスタッツのデータによると、難易度調整前に111EH/sであったハッシュレートが3日経過した19日時点で約4.5%減の106EH/sに低下した。
難易度調整の予想値を図るBitcoin Difficulty Estimatorも、難易度調整までの期間が長いことを加味しても、最大−9.2%〜最低−2.91%と下方方向に大幅なブレが生じている。
難易度調整の基準値となるブロック生成平均時間(データは直近24時間)も、11分50秒台を示しており、マイナーの勢いは減退している可能性を示唆している。