海外事業も規制対象とする法律を提案
シンガポール金融管理局(MAS)が、海外で事業を行っているシンガポールの仮想通貨企業も規制下で監督することなどを盛り込んだ新たな法案を提出した。現在パブリックコメントを受け付けている。
シンガポール国内で事業を行うデジタルトークン関連企業の多くは、主にAML/CFT(資金洗浄防止/テロ資金供与対策)の面から法律で規制されているが、その規制やライセンス制度の対象を国外で事業を行っているシンガポール企業へも広がることを検討する。
国際的な規制機関である金融活動作業部会(FATF)が仮想通貨サービスプロバイダーのために策定した拡張基準に合わせることが狙いにある。
また、仮想通貨関連以外の他の条項としては主に以下のものがあった。
(1)禁止命令(prohibition orders:POs)の権限拡大
POsの対象となる可能性のある人物のカテゴリを広げ、POsを発行する根拠を合理化、禁止の範囲を広げる。
新しい権限により、ある個人の不正行為が、金融セクター内で何らかの役割や活動を行う上で不適切であるかを総合的に評価、適切な措置をとる。その際には、不正行為の性質、重大度、影響を総合的に評価する。
(2)テクノロジーリスク管理を強化
テクノロジーの普及とサイバー犯罪の高度化が認められる中、サイバーセキュリティリスクやデータ保護を含むテクノロジーリスク管理に関連する要件をすべての規制対象金融機関に課すため、MASの権限を拡大する。こうした要件に違反した場合の罰金額も引き上げる。
(3)紛争解決のための職務に法的保護を提供
金融業界紛争解決センター(FIDReC)の調停者、裁定者、従業員など、承認された紛争解決者に、法的保護を提供する。金融機関と消費者の紛争を解決する上で、独立して行動する職務遂行者の自信を高めることが目的である。
この法案の詳細は、99頁に渡るペーパーにまとめられており、利害関係者からの意見を8月20日まで受け付けている。
国内事業者にはすでにライセンス取得の免除措置も
MASは、今年1月に新しい決済サービス法の施行を発表しており、マネーロンダリングやテロ資金供与への対策として、仮想通貨取引所を含む国内の事業者にライセンスの取得を義務付けていた。
既存の事業者に対しては、一時的な免除措置が設けられており、例えばブロックチェーン決済ソリューションを提供するPundi X、大手取引所コインベースやバイナンスは7月28日まで、中華系大手のOKCoinや仮想通貨Visaカードを発行するTenXなどでは来年1月28日までの免除期限が適用された。
この期限の区分けとしては、「デジタルトークン決済サービス」のみ提供する企業は7月28日まで、「口座開設や送金サービス」といった他の決済サービスも提供する企業では、2021年1月28日までと規定している。
国有ファンドもリブラ構想へ参画
シンガポールは、仮想通貨やブロックチェーンについては積極姿勢を示す国でもある。今年5月には運用資金が約20兆円を超える国有ファンド「Temasek」がリブラ協会への参加を発表した。
協会に国有ファンドが参加するのは初のことである。
仮想通貨リブラによる、より優れた支払いシステムのローンチに高い関心を示したこと、またシンガポールドル(SGD)が初期の頃からリブラの計画で重要視されていたことが参加に繋がった理由と考えられている。