東アジアとの貿易で仮想通貨を利用
ブロックチェーン分析会社Chainalysisの新たなレポートによると、ラテンアメリカと東アジアの商業取引において、仮想通貨が多く使われていることが判明した。
Chainalysisは、トラフィック分析や地元の取引所運営者へのインタビュー、オンチェーンデータ分析など複数の手法を組み合わせて、各地域における仮想通貨の使用状況を探ることに取り組んでおり、その一環として今回、ラテンアメリカに焦点を当てたレポートを発表した。
この記事ではこのレポートから幾つかの調査結果を紹介する。
銀行代わりの仮想通貨送金
レポートによると、過去1年間にラテンアメリカは250億ドル相当(約2.7兆円)の仮想通貨を送金し、反対に240億ドル相当(約2.5兆円)を受けとったという。
上図のように、2019年から2020年にかけて東アジアもラテンアメリカからの仮想通貨送金の受信者として存在感を示している。
こうした支払いの多くは、アジアを拠点とする輸出業者と、そこから商品を購入して自国で小売販売するラテンアメリカの企業との間の商業取引だったという。
Chainalysisのインタビューに答えるパラグアイの仮想通貨取引所Cripexの共同創設者Luis Pomataは、こうした取引についての見解を披露した。
多くの商品が中国からパラグアイに輸入され、ブラジルなど他の国に運ばれる。これらの商品を購入する企業の多くは、ビットコインを利用している。
パラグアイの銀行は資金洗浄を防ごうとしており、銀行の申請手続きは長くて厳重で、その上多くの事業者が断られることになる。銀行口座を持っている場合でも、送金するために提出する書類の量は多く、非常に困難でコストがかかるプロセスになっている。これが人々が仮想通貨に切り替える主な理由だ。
同氏はまた、仮想通貨を使えば輸入税を回避できるケースもある側面も使用へのインセンティブになっていると付け加えた。
Chainalysisのリサーチ責任者Kim Grauerは、仮想通貨建ての商取引がいかに一般的であるかを知り、驚いたとコメントしている。
銀行口座を持たない人々の貯蓄手段
煩雑な銀行手続きを回避するために商業取引で仮想通貨が使用されていることが分かったが、ラテンアメリカでは企業だけではなく個人も、銀行に関する問題から仮想通貨に向っている傾向がある。
レポートによると、ラテンアメリカでは多くの人々の収入が不安定で、銀行口座を持つのが難しい。中南米の多くの若者は、銀行に簡単にアクセスすることができないため、価値を蓄える手段として仮想通貨を利用しているという。
特に貯蓄に使う場合は、米ドルと紐付けされたDAIやUSDCのようなステーブルコインが重要になるようだ。
法定通貨が不安定
自国の法定通貨が不安定である状況も仮想通貨の採用を促進している。
ピアツーピア(P2P)取引所のトランザクション量を分析すると、ラテンアメリカの多くの国で、法定通貨の価値下落が仮想通貨P2P取引所の出来高と相関していることが示されたという。
下の図はアルゼンチンの例である。
特にアルゼンチン、ウルグアイ、コロンビア、チリでこうした相関が見られた。
Chainalysisのレポート紹介は以上となるが、P2Pビットコイン取引所Paxfulが最近アルゼンチンで行ったアンケート調査も同様の傾向を示している。
アルゼンチン人1113人を対象としたオンライン調査で、対象者の69.5%が仮想通貨に投資したことがあると回答。その理由として、デジタル資産がインフレによる現地通貨(アルゼンチン・ペソ)の下落からの資産保護手段になり得るという回答が約43%を占めていた。
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