すでに3億ドル超のビットコインを保有
著名投資家Anthony Scaramucci氏率いる投資ファンドSkyBridge Capitalが1月4日、暗号資産(仮想通貨)ビットコインに投資するSkyBridge Bitcoin Fund LPを立ち上げた。すでに3億1000万ドル(約320億円)相当のビットコイン(BTC)を保有しているという。
金融大手フィデリティがカストディアンとして機能し、アーンスト・アンド・ヤングが監査を行う。最低投資額は5万ドル、管理手数料は0.75%で、インセンティブ手数料は請求しない。
Scaramucci氏は、「現在利用可能な、機関投資家向けの質の高いカストディ・ソリューションにより、顧客に仮想通貨へのアクセスを提供するのに、ふさわしい時期になったと確信している」とコメントした。
SkyBridgeによれば、機関投資家が仮想通貨投資に踏み切らない一つの理由としては、セキュリティ上の懸念があったが、SkyBridge Bitcoin Fundを通して、投資家はBTC直接保有を強いられることなく、機関グレードのカストディと運用システムを利用できることで、解決の糸口になるとした。
また、同社のBrett Messing社長は、「ビットコインは世界中のデジタル金融革命をリードしている」、 「『なぜビットコインに投資しているのか』から『なぜビットコインに投資していないのか』を説明する状況にシフトしたと考えている。」とリリースで述べた。
「BTC需要の背景は希少性と金融緩和」
Skybridge Capitalの2020年の年間パフォーマンスは、2008年以来最悪のものだった。新型コロナ感染拡大が市場を直撃した3月に約24%を失い、その後回復したものの年間パフォーマンスで価値の約7.5%のマイナスとの結果となった。
そうした中、ビットコイン投資は順調で、11月にBTC購入を開始し、1億7500万ドルの投資から1億ドル(約103億円)の利益を得ている。
Scaramucci氏は、BTCに対して最初は懐疑論者だったものの、現在はBTC価値が10万ドル(約1030万円)に達する可能性もあると主張し、投資資産として評価。BTCへの需要は、希少資産としての地位と、中央銀行の金融緩和政策への懸念に支えられており、2021年には機関投資家によるBTC注文がさらに多くなるとの見方を示している。
2020年11月に今回のファンド計画について報道された際には、ビットコインに限定せずデジタル資産への投資ファンドを提供することが示唆されていたため、今後SkyBridgeはBTC以外の仮想通貨を取り扱うファンドを立ち上げる可能性もある。
新たなBTCファンド設立続く
既存企業が新たにビットコインファンドを設立する最近の事例としては、米ナスダック上場企業Greenpro Capitalも挙げられる。香港を拠点として、金融、テクノロジー、健康と福祉など様々な分野の企業にアドバイザリーサービスを提供する企業だ。
ビットコインファンドを設立し、2021年第1四半期に、債券発行により最大1億ドル(約103億円)を調達してBTCを購入する予定だと発表している。BTC取得は法定通貨と仮想通貨の交換や証券のデジタル化サービスを行う子会社CryptoSXを通じて行う。
この決定の理由としてGreenproは、「銀行、ヘッジファンド、保険会社、機関投資家によるBTCの継続的な大量採用を信じていること」を挙げ、ビットコインは信頼できる価値保存手段であるとの考えを示した。
また、「BTCやイーサリアム(ETH)などの主要な仮想通貨が、現金を保有しているよりも、より良いリターンの機会を提供し、長期にわたって資本の価値を維持すると考える」との見解も表明している。
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フィデリティの分析
2020年には、米MicroStrategy、米Square、米Stone Ridge Holding Group、Tudor Investmentなどの企業や機関投資家が、次々とビットコインで資産保有するようになった。
フィデリティの仮想通貨関連子会社「Fidelity Digital Assets(FDA)」は、こうしたトレンドを踏まえ、企業がビットコインを選択する理由について検証している。キャッシュフローや収益性の面でメリットがあり、また利回りの低下や金融緩和などによりBTCの魅力が増したことを指摘。
金利、為替、インフレなど様々なリスクにおいてBTCがどのように対処できるかも分析している。
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