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上場投資信託「ビットコインETF」とは|ブラックロックの申請が注目される理由

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ビットコインETFとは

23年6月に米SEC(証券取引委員会)の取り締まりが強化され、米国で規制圧力が強まる中、最大手資産運用会社ブラックロックが「ビットコインETF」の申請を行った。これにより、下落基調にあったビットコイン(BTC)は反発。暗号資産(仮想通貨)の市場シェアを示すビットコイン・ドミナンスは21年5月以来約2年ぶりに50%台を上回った。

米国では、過去数年間に渡って複数の企業が「ビットコインETF」をSECに申請してたが、再三に渡り否決されてきた。Bloombergによれば、ブラックロックの「ビットコインETF」の提出は、米国での現物ビットコインETFの申請として28件目である。申請企業としてブラックロックは20社目とカウントされている。

ブラックロックの現物ビットコインETF申請は、他の企業のケースと比較して市場への影響力が格段に大きいと言える。本記事では、ブラックロックの申請内容を中心に分析しながら、なぜビットコインETF(現物)の申請が注目を集めているのか、その背景を解き明かしていきたい。

目次

  1. ETFについて
  2. ビットコインETFが注目される理由
  3. 現物ビットコインETFの重要性
  4. ブラックロックのビットコインETF申請
  5. カストディアンにコインベース
  6. ブラックロックの仮想通貨市場との関係
  7. 最初の現物ビットコインETFを巡る競争
  8. 審査状況

ETFについて

ETF(上場投資信託、Exchange Traded Fund)とは、いわば「株式のように証券取引所で売買できる投資信託」である。一般的な投資信託と異なり証券取引所で随時売買が可能で、特定の指数に連動する運用成果を目指すことが多い。

そしてビットコインETFとは、ビットコイン(BTC)の価格に連動する形で動く証券のことだ。これにより、仮想通貨に関わる複雑な技術的な知識(例えば秘密鍵やデジタルウォレットといったもの)がない投資家でも、ビットコインへの投資が可能となる。

上場投資信託は証券会社の口座を通じてビットコインに投資できるようになるため、より多くの人や機関がアクセスしやすくなる。更に、国や地域によっては投資信託を通じた投資が税制面で優遇される可能性もあるため、これまでの投資環境を一変させる可能性があると言える。

ビットコインETFが注目される理由

ビットコインETFが注目を集める理由はいくつかあるが、その中でも重要なポイントとして、新たな資産クラスであるビットコインが、伝統的な金融商品であるETFに組み込まれることの重要性が挙げられる。その法的位置づけや信頼性が強化され、機関投資家や個人投資家など広範な投資家層の注目を引きつける可能性があるだろう。

例えば、金のETFが登場したとき、その影響力は金価格に大きく作用した。投資家たちが金ETFに資金を振り向けることで、金への需要が増加し、金価格が押し上げられた。このパターンは、特に経済の不透明性が高まったり金融市場が混乱したときに顕著で、安全資産への需要が高まるとともに金価格への上昇圧力に貢献した。

米国で最初に認可された金のETF、すなわちSPDR Gold Shares(GLD)とiShares Gold Trust(IAU)の成功は、その一例だ。ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズにより運用されるSPDRゴールド・シェアは、2004年11月18日に米国証券取引委員会(SEC)により認可され、同日に発売された。また、ブラックロックが運用するiシェアーズ・ゴールド・トラストは、2005年1月21日に認可を受け、その日から取引が開始された。

現物ビットコインETFの重要性

ブラックロックによるビットコインETFの申請が大いに注目される理由の一つとして、ビットコインの価格変動に直結するETFが、未だに米国で認可を得ていない状況が挙げられる。

確かに、2021年10月15日には米国の金融監督当局SECがビットコインETFの申請を初めて認可した。だが、そのETFはビットコイン自体に連動するものではなく、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)で取引されるビットコイン先物に連動する。

現物ベースのビットコインETFとは、直接ビットコインを保有し、それらの量に基づいて投資商品の価値を割り出す形式のETFだ。

将来的にビットコインを直接裏付けとするETFが認可されると、それらの運用に必要な価格アービトラージによって市場の流動性が増加する可能性がある。また、保管という形で流通するビットコインの量が減り、希少性が高まる可能性がある。

かつて金ETFが導入されたときのような、投資資金の大量流入が見込まれ、それがビットコイン価格の上昇を後押しする可能性がある。多くの投資家はそのような期待を寄せている状況だ。

ブラックロックのビットコインETF申請

これまで、「ビットコインETF」の申請を行ってきたウォール街の金融機関としては、Van Eck、Wisdomtree、Bitwise、Fidelity、Valkyrie、Global X、Invesco、そしてStone Ridge(NYDIGの子会社)などがある。これまでのところ、SECは「市場操縦のリスク」や「機関レベルのカストディの欠如」などを理由に申請を非承認としている。

一方、ブルームバーグのシニアETFアナリストであるEric Balchunas氏によれば、ブラックロックは過去575件のETF(上場投資信託)申請でSECの承認を得ており、非承認はわずか1件に留まる。

過去に承認されたブラックロックのETFはビットコインなど暗号資産のETFとは異なるものの、このような豊富な経験則と実績に基づき、満を持してビットコインETFを申請したことになる。

9兆ドル超の巨額の資産を管理・運用する世界最大手のブラックロック・グループは、その業界での大きな存在感や影響力などからETFの主要な発行者とされている。このブラックロックが、自社の主力ETFブランド「iShares」を冠した現物ビットコインETF、「iShares Bitcoin Trust」の申請を、SECに対して23年6月15日に提出した意義は大きい。

「iShares Bitcoin Trust」は、SECがこれまでに懸念を示してきた「現物ビットコインに関連した規制市場との監視共有協定の欠如」に対応した構造を持っている。上場先のナスダックがSECに提出した文書によれば、このETFは裏付け資産を取引するプラットフォームとナスダックとの間で、“監視情報共有協定”を締結することになっている。このような監視共有協定は、市場操縦の可能性がある行為、例えばウォッシュトレーディングなどを検出するためのものだ。

ブラックロックのETFに関する申請(19b-4)に対するSECの判断は、申請後最大240日間の審査期間を設けることが可能である。

関連:ビットコインETF(上場投資信託)2021年上半期の状況まとめ

カストディアンにコインベース

ブラックロックによると、「iShares Bitcoin Trust」の運用資産の管理・保管を担当するカストディアン(信託財産管理者)はコインベース・カストディ・トラスト、そして、顧客のビットコイン売買注文を執行するプライムブローカーはカストディアンの関連会社が務める。この際、取引所としては第三者市場とプライムブローカー自身の執行場が使用されるとされている。

ブラックロックは2022年8月に仮想通貨取引所のコインベースと提携。リスク管理システム「アラジン」を通じて、まずはビットコインに関する取引や保管(カストディ)、多岐にわたる市場データを機関投資家に対して提供することを公表した。

関連:米ブラックロックがコインベースと提携、仮想通貨取引を提供へ

だが、2023年6月には、米SECがコインベースを未登録の取引所と判断し、法的措置を起こした。この事態が、ブラックロックのETF承認申請にどのような影響をもたらすのか、市場関係者の注目が集まっている。

関連:バイナンスとコインベースのSEC訴訟|仮想通貨規制の現状と業界の反応を整理

SECへの申請書類の中で、ブラックロックはデジタル資産に関連する特定のリスク要因として「規制の不確定性」を挙げている。

米国におけるデジタル資産市場は規制の不確実性の中に存在し、不利な立法または規制の進展は、ビットコインまたは本株式の価値を著しく損なう可能性がある。

金融商品比較サイト「Finder.com」の仮想通貨アナリスト、James Edwards氏は「ブラックロックの申請のタイミングは、資産としてのビットコインと、SECとの今後の法廷闘争におけるCoinbaseの両方に「確信」を与えるはずである」とコインテレグラフに語っている。ブラックロックが、規制当局との真剣な協議やビットコインの将来の法的地位に対する確信なしに、このような性質のETFを推進するとは考えにくいという。

また、ブラックロックが資金管理にコインベース・カストディを指定したことは、SECに提訴されている米コインベースの法的立場をブラックロックは「確信している」と見るべきだ、とEdwards氏は加えた。

ブラックロックの仮想通貨市場との関係

ブラックロックは仮想通貨業界において、コインベースとの関係強化だけに留まらず、ステーブルコイン「USDCoin(USDC)」を手掛けるCircle社とのパートナーシップも進めてきた。

関連:米ブラックロック、USDCの準備金専用のファンドを組成

ブラックロックは2022年4月にCircle社への資本投資を実施。同年10月には、USDCの準備金を管理するためのマネーマーケットファンド(CR MMF)を立ち上げた。このファンドは、金融機関間で行われる短期融資の形であるリバース・レポ取引(RRP)への参加資格を獲得している。

さらにブラックロックは、現在、多くのステーブルコインを非合法化するステーブルコイン法案の成立に向けて、積極的なロビー活動を展開してきた。法案が成立すれば、USDCの地位が一段と確固たるものとなり、市場の競争環境が一変するだろう。

一方で、ブラックロックが自社の投資管理プラットフォーム「アラジン」にUSDCを追加する可能性があるという見方が出ている。これが実現すれば、ブラックロックのクライアントは、一元化されたプラットフォームを通じてUSDCの管理が可能となる。

仮想通貨ファンドAsymmetricのJoe McCann氏によれば、これら一連の動きはUSDCと現物ビットコインETFのすべての資金フローを独占する戦略につながるとされる。

関連:米国の超党派ステーブルコイン草案、最新版が公開

最初の現物ビットコインETFを巡る競争

ブラックロックがビットコインETFの申請を行ったことで、この領域での先駆者の座をめぐる競争が再燃している。複数の金融大手が一斉に、ビットコインの現物型上場投資信託(ETF)の認可を米国の証券規制当局に求めており、先陣を切ることの重要性が浮き彫りになっている。。

最初に認可された現物版ビットコインETF(上場投資信託)が初期流動性を制し、シェアの総取りになる可能性もある。金(ゴールド)の事例だと、SDPRのゴールド・トラストは2番手の競合他社の金融商品の約2倍の資産額を誇っている。7月4日時点、SECに申請中のビットコインETF申請と、運用会社額は以下の通り。

申請日 ETF名称 運用会社名 運用資産額(AUM) 最終期限目安(240日後)
4月25日 ARK 21Shares Bitcoin ETF ARK Invest & 21 Shares 141億ドル(ARK) 23年12月
6月15日 iShares Bitcoin Trust ブラックロック 10兆ドル(世界・及び米1位) 24年2月
6月16日 Bitwise Bitwise Bitcoin ETF ビットワイズ 13億ドル 24年2月
6/20 Invesco Galaxy Bitcoin ETF インベスコ 1.48兆ドル 24年2月
6/20 WisdomTree Bitcoin TrusT ウィズダムツリー 94.06億ドル 24年2月
6/21 Valkyrie Bitcoin Fund ヴァルキリーファンズ 10億ドル 24年2月
6/22 VanEck Bitcoin Trust ヴァンエック 581億5,000万ドル 24年2月
6/29 Wise Origin Bitcoin Trust フィデリティ・インベストメンツ 4.24兆ドル(世界・及び米3位) 24年3月

審査状況

7月初旬、米証券取引委員会(SEC)が監視共有協定に関連するビットコイン取引所の情報が不十分であると指摘した。ただし、その指摘はあくまで改善の余地を示すもので、否定的な結論を示すものではない。SECは資産運用会社ブラックロックに対し、提出した書類の修正や更新を行い、再申請をするよう勧めたと伝えられている。

これは一度申請が否決された訳ではない。ビットコインETFの審査については過去の事例を踏まえると、最大240日の最終判断期限まで何度も延長されるのが通常の流れである。

SECの指摘を受けて、米国の大手株式取引所であるナスダックは、ブラックロックが提出した現物型ビットコインETFの申請書類(フォーム19b-4)を更新。仮想通貨取引所コインベースとの監視共有協定締結を含む新たな情報を追記した。

また、Cboe(シカゴ・オプション取引所)が運営するBZX Exchangeも、7月3日にコインベースとの監視共有協定の締結を表明する内容を申請書類に盛り込み、合計5つの現物型ビットコインETFについて再提出した。

これらのETFは、「Invesco Galaxy Bitcoin ETF」、「VanEck Bitcoin Trust」、「WisdomTree Bitcoin Trust」、「Wise Origin Bitcoin Trust」、「ARK 21Shares Bitcoin ETF」で、それぞれBZX Exchangeへの上場を予定している。

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