シンガポール異例の注意喚起
シンガポール中央銀行(MAS)のTharman Shanmugaratnam総裁が、ビットコイン(BTC)を含む暗号資産(仮想通貨)の取引リスクを個人投資家に向けて警告していることがわかった。
ブルームバーグの報道によると、Shanmugaratnam総裁は議会の質疑で、「仮想通貨は市場変動性が極めて高く、その価値は経済の基礎的条件(ファンダメンタルズ)に裏付けられていない」と指摘し、「投資商品としては非常にリスクが高く、個人投資家に適していないと見ている」と話した。
また、投資企業は仮想通貨ファンドを個人投資家に向けて販売することができず、MASの権限としては、規制下にある取引所等業者に追加措置を設けることができるとした。投資家保護の観点からの発言と考えられる。
シンガポールにおける仮想通貨の出来高は以前少なく、証券取引所の出来高に比べ約2%に留まる。一方、一部のグローバル取引所はシンガポールに本社が置かれ、大手仮想通貨ヘッジファンドもシンガポール発も少なくない。MASの動きは不透明なポイントとなり得る。
シンガポールでは2020年、業界団体とMASが仮想通貨関連業者が、より容易にサービスを提供できるため、共同で仮想通貨サービスプロバイダーのための行動規範を発表した経緯がある。また、昨年1月に施行された決済サービス法は、仮想通貨取引所を含むすべての国内サービスプロバイダーが、デジタル決済やデジタルトークンの取引などのサービスを提供するためにライセンスを申請するよう規定している。
Shanmugaratnam総裁が今回強調したのは、あくまで個人投資家にもたらされ得るリスクであり、機関投資家への影響はそれほど大きくないだろう。現に、シンガポールの最大手銀行「DBS銀行」は昨年12月に機関投資家および適格投資家に限定した仮想通貨取引所「DBSデジタル取引所」をローンチした。
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また、シンガポール政府系ファンドは先日a16zなどとともに、米国の大手仮想通貨カストディ・信託銀行のAnchorageに計85億円の出資を行った事例もある。