仮想通貨の決済機能などを疑問視
日本銀行の黒田東彦総裁は27日に行われたインタビューで、ビットコインなど暗号資産(仮想通貨)について「基本的に決済手段としてはほとんど利用されていない」などと否定的な見解を示した。Bloombergが報じた。
ステーブルコインにも言及
黒田総裁は、仮想通貨取引の大半は投資や投機を目的としたものであり、足元では価格変動が非常に大きくなっていると指摘。「裏付け資産を持っていないため、値動きが激しく、基本的に決済手段としてはほとんど利用されていない」とも述べている。
また、法定通貨である円や米ドルなどに価値を裏付けられているステーブルコインについては、仮想通貨とは「性格が異なる」としており、法整備や適切なガバナンスの必要性などの課題があるとしつつも、「将来、便利な決済手段になり得る」との見解を示した。
黒田総裁は13日に開催された財政金融委員会においても、ステーブルコインについて一部肯定的な姿勢を示している。ステーブルコイン普及には「法的確実性」「健全なガバナンス」「オペレーションの頑強性」「サイバー耐性」が前提となるとし、これらがしっかり確保されれば、「多くの人が利用する便利な決済手段にはなり得る」と述べている。
また、日本維新の会の音喜多議員による「JPYCなどのステーブルコインは、ますます決済手段として存在感が大きくなる。ブロックチェーンを使用したフィンテック技術がますます発達していく中で、民間デジタルマネーを”規制”するばかりではなく、”促進”する取り組みが必要なのではないか?」との質問に対しては、次のように回答した。
暗号資産については、背景となる裏付け資産がなく、非常に投機的な取引が行なわれていることを各国の中央銀行は懸念している。一方で、ステーブルコインは、資産の裏付けがある。
マネーロンダリング対策、プライバシー、データや消費者保護などの問題点を克服する必要性があるが、ステーブルコインが、民間部門の”競争”だけでなく”協調”を促進する触媒機能を果たし得るのではないか?と考えており、日銀としては、決済システムの改善や高度化に向けて幅広い関係者との議論を進めている。民間の取り組みをしっかりと後押ししていきたい。
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黒田総裁発言の背景は
黒田総裁の仮想通貨に関する否定的な発言は、13日に米テスラ社のビットコイン決済停止ニュースが報じられたことに端を発した仮想通貨価格の大暴落や、その後の急反発などを念頭に置いたものであると思われる。ビットコイン価格は、米最大手取引所コインベースがナスダック上場を果たした4月14日に史上最高値の700万円を超えたが、それからわずか1か月間で一時は半値水準まで下落し、時価総額も数十兆円下がった。
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黒田総裁だけでなく、各国の一部の首脳や中銀関係者は、仮想通貨に対し否定的な見解を披露している。
米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は3月、国際決済銀行(BIS)のオンラインサミットに参加。「仮想通貨は、価格変動が大きく、価値の裏付けはなく、支払い手段として利用できる通貨でもない、投機対象の資産である」とコメント。このような理由からビットコイン(BTC)は価値の保存手段として実際にはあまり機能していないと指摘し、資産性としてはゴールド(金)の性質に近く、米ドルに取って代わるものではないとの見方を示した。
またイングランド銀行のAndrew Bailey総裁は6日、記者会見で仮想通貨について以下のように否定的なコメントをしている。
人々がそれらに価値を見出すことはある。仮想通貨には、外から与えられる付帯的な価値があるためだ。
しかし、仮想通貨に本質的な価値はない。
さらに、「率直に言って、資産をすべて失う準備ができている場合にのみ、仮想通貨を購入するべきだ」と持論を展開。Bailey総裁は、これまでも同様の発言をしてきた経緯がある。
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前述の財政金融委員会において、仮想通貨に対して各国の中央銀行が懸念を表明していることを引き合いに出していることから、黒田総裁の仮想通貨に対する否定的な発言は、各国首脳の意見と足並みを揃えるためであるという見方も一部で出ている。