はじめての仮想通貨
TOP 新着一覧 チャート 学習-運用 WebX
CoinPostで今最も読まれています

インターネット利用上の安全性と通信速度を強化する分散型VPNとは オーキッド(Orchid)寄稿

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

VPNの仕組みと種類

VPNは、インターネット上のプライバシーを守るために必要不可欠なツールです。しかし、すべてのプライバシー保護ツールは一様ではないため、間違いのない選択をするために、それぞれの相違点を理解しておきたいものです。

例えば「無料」と謳っているVPNを完全に信用すべきではありませんし、収益モデルだけでなく、VPN自体の技術的な構造にも留意すべきです。

まず考慮すべき重要な点としては、サービスが中央集権型か分散型か、そしてその技術がオープンソースであるかどうかということです。中央集権型と分散型のVPNの違いや、オープンソースソフトウェアの役割について見ていく前に、VPNの仕組みについておさらいしておきましょう。

VPNは、インターネットユーザーとウェブの間に介在する役割を持ちます。VPNを使用すると、ユーザーのデバイスから発信されたIPアドレスは暗号化され、VPNのサーバーを経由して匿名で送信され、目的地に到達します。

逆の場合も然りで、ウェブサイトから送信されたデータは、VPNを経由してユーザーの元に戻ってきます。

基本的には、中央集権型VPNも分散型VPNもこうしたサービスモデルを提供します。双方が異なる点は、コントロールとコネクションに関係するものです。

中央集権型VPNは、中央集権的組織(通常は民間企業)によって管理・運営されており、こうした企業は、ユーザーに一連のプライベートサーバーへのアクセスを提供し、そのサーバーを通してVPNを運営します。これについて、詳しくみていきましょう。

中央集権型VPNの特徴

中央集権型VPNを使用する場合、プロバイダーの中央集権型サーバーを経由し、データパケットが送信されます。これは実際、プロバイダーのネットワークに問題が発生した場合、それがVPNユーザーにもその影響が波及することになります。

プロバイダー側は、決められた数のVPNサーバーに限定されているため、ネットワークの一部にでも問題が発生した場合は混雑の原因となってしまいます。

例えば、中央集権型VPNプロバイダー「XYZ」が、1万人のユーザーをサポートする20台のサーバーを持っているとします。ある夜、そのうちの10台のサーバーが突然危険にさらされた場合、プロバイダーのネットワークは静的接続に依存していることから、1万人のユーザたちは、アクティブ状態のサーバー10台のみの使用に限定されることになります。

その結果、各ユーザーの接続速度は半分になります。ユーザーは、プロバイダーXYZのネットワーク内の別のプライベートサーバーに切り替えることで問題に対処しようとするかもしれませんが、プロバイダーそのものは変更できません。

そのため、ユーザーは問題が解決するまで接続速度の遅さに悩まされることとなります。

中央集権型VPNプロバイダーが依存している、こうした静的接続は、毎月定額の「使いきり」収益モデルに基づいています。これは固定された支払い構造であるため、ネットワーク側にはユーザーの需要の変化にダイナミックな対応をするインセンティブがありません。

簡単に言えば、ネットワークは固定容量である静的接続を通し、需要に関係なく、1日のどの時間帯でも同量の帯域幅を提供するということになります。

結局、中央集権型VPNは傍観者やハッカーからデータの保護をする一方、VPNプロバイダー自身も全体像を見ることができてしまいます。例えば、ハッカーにデータを盗まれたり、予告なく広告主に売られたり、政府機関と共有されたりする可能性もあるのです。

分散型VPNの仕組み

中央集権型VPNサーバーの構造には、根本的な弱点があります。最も評判の高い、信頼性の高いとされる中央集権型 VPN プロバイダーであっても、ハッキング、情報搾取、政府の干渉などの影響を受けやすく、最適かつダイナミックな方法で帯域を提供していない可能性があります。

分散型VPNはその性質上、これらの問題のいくつかを解決します。分散型VPN は静的接続に依存せず、動的接続、つまり独立して運営されているサーバーによる、柔軟で分散したネットワークを使用します。

そのため分散型VPNでは、信頼できる高品質のプロバイダーを幅広く利用できます。このように、数多くの安全なサーバーの利用を介して、分散型VPNは中央集権型よりも効率的かつ安全に運用することができます。

また、分散型VPN には、中央集権型とは逆の経済的インセンティブもあります。分散型VPNには、より多くのプロバイダーが接続されている場合が多いため、単一の中央集権型VPNサービスと比較して、多くのプロバイダーが帯域幅の需要に迅速に対応できる可能性が高くなります。

分散型VPNがより安全な理由とは

分散型VPNは、中央集権型VPNに比べ、利用可能なサーバーの数が多いこと、またより広範に分散していることから、ユーザーの使用するデータ経路はよりランダムとなります。このランダム性により、トラッカーやハッカーがユーザーの情報を悪用することは困難となります。

さらに分散型VPNでは、利用可能なサーバー数の多さから、サービスの回復も迅速となります。一部サーバーに障害が発生しても、独立して運営されている他の数々のサーバーを経由してトラフィックが流れるため、どこか1つの接続が停止したり、速度が低下したりしても、他の接続で補うことができる点は、中央集権型サービスよりも顕著に優れているところです。

また、多くのサーバーにアクセスできるということは、ユーザーのデータがネットワーク上をより速く移動することでもあります。帯域幅は、VPNトンネルの「手前側」でのみ制限されるため、データの転送速度は転送開始時におけるユーザーのインターネット接続の速度に制限されます。

分散型VPNは、トンネルの「向こう側」で、データを複数のチャネルに分散させる機能を持ちます。これにより接続速度が向上するだけでなく、データの追跡も困難となるのです。

そのため、分散型VPNネットワークは、中央集権型よりも大規模かつダイナミックなものとなります。また、オープンソースVPNであれば、開発者のコミュニティがコードの安全性を確認したり、障害からの復旧へ積極的に貢献することも可能です。

オープンソースVPNとは

オープンソースとは、ソフトウェアのソースコードが誰にでも自由に閲覧できるよう公開されたものです。ソフトウェアをオープンソース化する目的は、一企業や個人による独占を防止するためです。

誰でもソースコードを閲覧できるため、開発者側は第三者がデータにアクセスするためのバックドアを隠すこともできません。

オープンソースソフトウェアのコンセプトは、それ自体が分散化されています。単一の権威的ソースに頼ってソフトウェアが監査・改善されるのではなく、それはボランティアのコミュニティによって監査・改善されます。

開発者は誰でも、オープンソースのコードを監査して、意図せずにデータを無防備にしてしまうようなエラーや脆弱性の有無を確認することができます。

Githubのようなプラットフォームにおいては、ボランティアの開発者たちによって、ソースコードをより安全にするための変更や改善が提案されます。このようなボランティアの中には、開発のために自らの時間を提供してくれる個人もいます。

また企業では、一種のコミュニティサービスとして、従業員に報酬を支払い、通常業務の一環としてオープンソースコードに貢献してもらう場合もあります。

オープンソースのプラットフォームは、様々な開発者がコードを監査し、改良することができるため、クローズドソースのソフトウェアで動作するプラットフォームよりも安全性が高い傾向にあります。多くの分散型VPNは、オープンソースソフトウェア上で動作しますが、オーキッドの分散型VPNのソースコードに関しては、Github上で一般公開されています。

インターネットの歴史と分散化について

オープンソースソフトウェアおよび分散化の原則は、インターネットのセキュリティとプライバシーにとって将来的に非常に重要です。その重要性は、インターネット登場以来の発展を辿ると特によくわかります。

これまでのインターネットのライフサイクルは、「Web 1.0」、「Web 2.0」、そして「Web 3.0」と分類される傾向があります。

Web 1.0

Web 1.0は、1991年頃から2004年頃までの13年間のインターネットを表しており、「静的Web」とも呼ばれます。World Wide Web Consortiumのディレクターであり、ワールド・ワイド・ウェブの発明者でもあるティム・バーナーズ・リーは、この段階を「読み取り専用」インターネットと表現しています。

Web 1.0のユーザーは、オンラインで情報を公開し、他のユーザーはその情報を検索して読むことができたものの、機能はそれだけに過ぎませんでした。Web 1.0のユーザーがインターネットで対話する能力は非常に限られていました。

Web 1.0がインターネットの「読み取り専用」の段階であるとすれば、Web 2.0は「読み取り・書き込み」の段階です。この段階は、「ダイナミックウェブ 」とも呼ばれます。

Web 2.0

現在、インターネットのほとんどがこの段階にあり、Web 2.0ではインターネットユーザー同士が相互に交流することができます。

ウェブサイトに掲載されている情報を読むだけでなく、ユーザー自身がコンテンツを投稿できます。例えば、YouTubeに動画をアップロードしたり、Facebookの投稿にコメントを残したり、Twitterでつぶやいたりすること等です。

Web 2.0のインタラクティブな要素は、人々が情報を共有したり受け取ったりする方法に革命をもたらしましたが、この段階においてはインターネットの大規模な中央集権化が特徴です。

Web 2.0の活動の多くはプラットフォームを中心に行われています。中央集権的な組織では、ユーザーはプラットフォーム上で活動する権利を得ることと引き換えに、データが収集されてしまいます。

また、ユーザーはプラットフォームにコンテンツを提供しても、金銭的な報酬を受け取ることがありません。

Web 3.0

しかしWeb 3.0の開発者は、よりユーザー中心のインターネットを創造しようとしています。Web 3.0のインターネットプラットフォームは、データを収集して利益を得る中央集権的なプラットフォームではなく、主にブロックチェーン技術を用いて分散化され、ユーザーの貢献に対して直接報酬を与える経済の仕組みを前提としています。

また分散化によって、Web 3.0は現在のインターネットよりもはるかに高い相互運用性を持つようになります。Web 2.0の中央集権的プラットフォームは、サービスを閉鎖的・サイロ化させてしまう強いインセンティブがあります。

つまりユーザーが一つのソースから多くのサービスを受ければ受けるほど、そのソースの収益と市場力は大きくなります。そのため、Web 2.0ビジネスにおいては、ユーザーをできるだけ長く一つのプラットフォームに留めておくことがとても重要になるのです。

ただ、Web 3.0のアプリケーションは分散型であるため、ユーザーを特定のプラットフォームに留めておくことに金銭的なインセンティブはありません。これにより、サービスやネットワーク間の相互運用性の向上が期待できます。

Web 3.0の相互運用性による新しいアプリケーション

Web 3.0による相互運用性(インターオペラビリティ)の向上は、まったく新しいクラスのWebアプリケーションを可能にします。分散型ネットワークは、コンセンサスメカニズムに依拠して動作するため、セキュリティレベルは盤石です(ブロックチェーンネットワークを改ざんするには、そのネットワークを支えている51%以上のコンピュータ、または「ノード」が悪事を行わなければならない仕組みです)。

したがって、Web 3.0アプリケーションは、Web 2.0アプリケーションよりもはるかに高い安全性が期待できます。また、分散型アプリケーションは常にオープンソースであるため、中央集権的な権威が存在できず、ソースコードを非公開にするインセンティブが働きません。

これにより、Web 3.0アプリケーションのセキュリティと安全性はさらに高まるのです。

CoinPost App DL
厳選・注目記事
注目・速報 市況・解説 動画解説 新着一覧
11/08 土曜日
10:12
ビットコイン再び10万ドル割れ、USDXデペッグがDeFiに波及し信用不安広がる|仮想NISHI
仮想通貨ビットコインは5日以来、再び一時10万ドルを割り込んだ。ステーブルコイン「USDX」の担保不足によるデペッグ(乖離)が複数のDeFiプロトコルに波及し、市場全体に信用不安を広げた。
09:50
トランプメディア、第3四半期に84億円の赤字、保有ビットコインの価値は73億円減
トランプメディアが第3四半期に5480万ドルの純損失を計上し、3四半期連続の赤字となった。保有ビットコインの価値は4800万ドル減少したが、オプション収入で1530万ドルを獲得。
09:35
カザフ、最大10億ドルの仮想通貨準備基金設立へ 2026年初頭立ち上げ予定
カザフスタンが最大10億ドル規模の国家仮想通貨準備基金を2026年初頭までに設立する。押収資産と国営マイニング収益を原資としてETFや関連企業に投資する方針だ。
08:25
XRP保有企業エバーノース、約120億円の含み損に 仮想通貨財務企業に圧力
仮想通貨XRPを企業の財務資産として保有するエバーノースが約2週間半で7900万ドルの含み損を抱えている。メタプラネットなど他の仮想通貨保有企業も大幅な含み損に直面している。
07:20
片山金融相「3メガバンクのステーブルコイン共同発行を支援する」
片山さつき金融相は、3メガバンクやプログマらが行うステーブルコイン発行の実証実験を金融庁がサポートすることが決定したと話した。決済高度化プロジェクトの設置にも言及している。
07:10
米FRB理事がドルステーブルコイン市場の成長を評価、一方で合成型USDXは大幅デペグで0.6ドルに
米FRBのミラン理事がドル連動型ステーブルコインを巨大な成長分野と評価した。一方で合成型ステーブルコインUSDXが大幅デペグを起こしバランサー攻撃の影響で連鎖的な危機が広がっている。
06:20
コインベース、Asterなど上場検討
米大手仮想通貨取引所コインベースが複数の銘柄を同社の上場ロードマップに新たに追加した。
05:55
ジーキャッシュ連日高騰、時価総額100億ドル突破 1カ月で約4倍上昇
プライバシー仮想通貨Zcashが過去1カ月で3倍上昇し時価総額100億ドルを突破。アーサー・ヘイズ氏らの支持やグレースケール関連商品の人気拡大が上昇を後押ししている。
05:35
リップルのロング社長、IPOの予定なしと再度表明
リップル社のモニカ・ロング社長が株式公開の計画はないと再び明言した。同社は企業価値400億ドルで5億ドルの資金調達を完了し、十分な資本があると説明している。
11/07 金曜日
18:34
金融審議会・第5回会合、暗号資産レンディングの規制強化について議論 金商法適用案も
金融庁は7日の第5回金融審議会で、暗号資産レンディング事業を金商法の規制対象とする方針を示した。年利10%台のサービスで利用者がリスクを負う一方、事業者に管理義務がない点が問題視された。
18:16
米証券大手チャールズ・シュワブ、2026年に仮想通貨取引開始へ
米証券大手チャールズ・シュワブが2026年上半期にビットコインとイーサリアムの現物取引を開始。顧客資産約1800兆円を持つ同社の参入で仮想通貨市場の主流化が加速へ。
18:00
Polymarket(ポリマーケット)とは?仕組みや将来性をわかりやすく解説
Polymarket(ポリマーケット)とは、未来の確率をUSDCで売買する分散型予測市場。米大統領選で注目を集め、Google Financeにも統合。仕組み、特徴、課題、今後の展望をわかりやすく解説。
16:18
ロビンフッド幹部、ビットコイン財務戦略は「検討中」
米ロビンフッドがビットコイン財務戦略導入を検討。第3四半期の仮想通貨収益は300%超急増の約413億円を記録。上場企業のBTC保有トレンドが加速する可能性。
14:05
著名投資家ダリオ、FRBの量的緩和再開はバブル加速への引き金 更なるインフレリスクを警告
ブリッジウォーター創設者レイ・ダリオ氏が、FRBの量的緩和再開は従来と異なり「バブルへの刺激」になると警告している。現在の状況下でのQE拡大は、実質金利の低下や株価収益率の上昇につながり、テック/AI/グロース株や、金などの価格を押し上げる可能性がある。
13:35
ビットワイズ、ドージコインETFの20日以内上場を目指す動き=ETF専門家
ビットワイズがドージコインETFで「8(a)手続き」を採用。ブルームバーグアナリストによると、11月6日の予備目論見書提出から20日後の11月26日頃に自動承認される可能性。SECの介入がなければ上場実現へ。

通貨データ

グローバル情報
一覧
プロジェクト
アナウンス
上場/ペア
重要指標
一覧
新着指標
一覧