消費者保護とイノベーションを促進するための法案
米国のDon Beyer下院議員が、暗号資産(仮想通貨)などデジタル資産についての広範囲の規制枠組みを作成する法案を提出した。消費者を保護し、イノベーションを促進する法案「Digital Asset Market Structure and Investor Protection Act(デジタル資産市場構造と投資家保護法)」である。
Beyer議員は、デジタル資産のイノベーションは、新しい商品やサービスと雇用を生み出しており、このセクターの成長を促す規制環境を提供すべきと説明している。また、こうした分野は「大きな可能性を秘めており、ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)のような資産が今後も存続することは明らかだ」とも見解を表明した。
そして、次のように法案の意義を語っている。
現在のデジタル資産の市場構造と規制の枠組みは曖昧で、投資家や消費者にとっては危険なものだ。デジタル資産の保有者は、何年にもわたって詐欺、盗難、市場操作にさらされてきたが、議会はこれまで、包括的な法的枠組みの構築を求める声を無視してきた。
この法案は、現行の時代遅れな法律をアップデートして、デジタル資産の保有者や投資家に基本的な保護を与えるものである。
Beyer議員の法案は、様々な機関の役割にも触れているところが特徴的だ。例えば、米証券取引委員会(SEC)と米商品先物取引委員会(CFTC)が、共同ルールを作成し、仮想通貨市場に法的な明確さを提供することを規定している。
また、銀行機密法(BSA)の「金融商品」に仮想通貨やセキュリティトークンも加え、それらがマネーロンダリング防止、記録保持、報告要件の対象となるようにする。
オープンな分散型台帳に記録されない取引については、24時間以内に公的なデジタル資産取引リポジトリに報告することで、不正を抑制し、透明性を高めることも提案した。
ステーブルコインの承認プロセスを導入
法案はステーブルコインにも言及。米ドルに紐付けられたステーブルコインは米国の法定通貨ではないことを明確にし、米財務長官に米ドルやその他の法定通貨に基づくステーブルコインを承認・禁止する権限を与えるとしている。
すでに流通しているステーブルコインについても、承認プロセスに申請する必要があるという。法案は以下のように規定した。
当法案の、このセクションの内容について施行されてから90日以内に、財務長官は、法定通貨建てのステーブルコイン発行を承認・不承認する申請プロセスを確立するものとする。
また法案は、米連邦準備制度理事会(FRB)にデジタル版米ドル(デジタルドル)を発行する明確な権限を与えるとした。その点は、米国が中央銀行デジタル通貨(CBDC)を発行する準備をするものでもある。
一方、現在は仮想通貨の定義・規制に関する複数の法案が連邦議会に提出されているが、どれも可決の見通しは立っていない模様だ。
CBDC(中央銀行デジタル通貨)
各国・地域の中央銀行が発行するデジタル化された通貨を指す。仮想通貨との大きな違いは、CBDCは法定通貨であること。通貨の管理や決済等においてコスト削減や効率性向上が期待できる一方で、個人情報やプライバシーの保護、セキュリティ対策、金融システムへの影響など考慮すべき課題は多い。
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