
投資家の資金を悪用
米ニューヨーク南部地区の裁判所は15日、投資家より資金を詐取したとして、暗号資産(仮想通貨)ヘッジファンドの創設者に懲役7年半の判決を下したことを発表した。
Stefan Qin被告(24歳)は、ニューヨークを拠点として「Virgil Sigma Fund」と「VQR Multistrategy Fund」を運営していた。裁判所によると、被告は不正な資金流用により投資家に5,400万ドル(約59億円)以上の損害を与えたという。
昨年12月、Qin被告は米証券取引委員会(SEC)から提訴され、2月に証券詐欺の罪を認めていた。この際には最大20年の懲役刑が見込まれていたが、実際の判決は懲役7年半となった形だ。その他、3年間にわたる監視下での保釈と、約5,500万ドル(約60億円)の財産没収も命じられている。
詐欺の経緯
一連の詐欺行為は、2017年から2020年までの3年間に行われていたもの。
Virgil Sigmaは、仮想通貨市場でアービトラージ(裁定取引)を行って利益を得る戦略を取っていると称していた。Qin被告はこの手法について、「仮想通貨価格の上下変動リスクにさらされないため、比較的安全な投資である」と宣伝していた形だ。
Qin被告は定期的に、Virgil Sigmaの投資家とコミュニケーションを取り、当ファンドの成長と成功をアピールしていた。2018年2月には、ファンドが米ウォール・ストリート・ジャーナルで紹介されたこともある。
しかし裁判所によると、Qin被告は、ファンドの資金をアービトラージ取引戦略に投資せず、投資家資金を横領。以下のような目的に充てていた。
- 食費、家賃など被告の個人的な支出
- 不動産など仮想通貨と関係ない個人的な投資
- ICOなど、アービトラージ戦略とは関係ない仮想通貨関連の投資
こうした不正行為の結果、Qin被告はVirgil Sigmaに集まっていた投資家資金のほぼすべてを使い果たした。被告は、偽の口座明細書や税務書類などにより、投資資金の価値や保管状況などについて、投資家に虚偽の定期報告を行っていたという。
さらに、Qin被告は、Virgil Sigmaの投資家へ資金を償還するために、経営するもう1つのファンドVQRから資産を不正に流用しようとした。そのために、2020年12月頃、VQRのヘッドトレーダーに対してVQRのすべての取引ポジションを清算するよう要求している。
現在、Virgil SigmaとVQRはいずれも営業を停止。裁判所が任命した管財人が、清算および資産の分配について処理しているところだという。