金融市場とマクロ経済
米連邦公開市場委員会(FRB)が13日に公表した9月連邦公開市場委員会(FOMC)会合の議事要旨にて、テーパリング(量的緩和縮小)の開始時期を21年11月半ば〜12月半ばで概ね一致したことが明らかとなった。
「景気回復が順調に進めば、2022年半ば頃までに完了する段階的なテーパリングが適切」としている。
米国は現在、新型コロナウイルス感染拡大による経済立て直しを大義名分として、月間1200億ドル規模の資産を購入しているが、直近数ヶ月はインフレ率が目標の2%を大きく上回ってきたほか、物価上昇などインフレ及びスタグフレーション懸念が持ち上がり、金融引き締めが必要との認識も強まりつつある。先日発表された9月の米消費者物価指数(CPI)は、前年同月比+5.4%だった。
次回FOMC会合は11月2〜3日に予定されるが、過去の教訓から市場との対話を重視した米金融当局による行動は織り込み済みとみられ、 テーパリング開始時期も想定の範囲内であることから、市場が動揺するようなネガティブサプライズとなる可能性は低いだろう。
一方、昨今の株高・仮想通貨高などのリスク性資産の高騰の背景には、金融緩和マネーの流入があった。ビットコイン(BTC)など仮想通貨市場への間接的な影響を及ぼしかねないことから、当面は米当局の動向を注視する必要がありそうだ。
仮想通貨市場の値動き
14日の暗号資産(仮想通貨)市場。ビットコイン価格は、前日比+3.32%の659万円(58,120ドル)と続伸した。
一時53,950ドルまで下落したものの、下値を買われて下げ渋ると反転。直近高値を更新した。イーサリアム(ETH)が前日比+4.07%となったほか、ポルカドット(DOT)が前日比+18.1%、ステラ(XLM)が前日比+9.5%となった。
ポルカドットは13日、本格運用の準備が完了を発表。ネットワークに接続するパラチェーンを選ぶオークションについてスケジュールを示している。
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BTC市場やDeFi(分散型金融)市場活性化の背景には、急激に規制を強める中国における富裕層の資本逃避(キャピタルフライト)需要や米ドルのインフレヘッジ需要など複数あるとされるが、直近では米国初となる「ビットコインETF(上場投資信託)」の承認思惑が強まっていることが挙げられる。
ビットコイン先物ETFでは、ProShares社の審査判断が10月18日頃に迫るほか、有力視されるVanEck版ETFの最終可否判断日も、11月14日頃に控えている。
「ビットコインETF」は米国では過去一度も認可されたことはないが、数年前と比較して規制面が大幅に整い、上場企業や機関投資家の流入が相次ぐなど新しい資産クラス(市場規模)としても一定の地位を確立しつつある。米SEC(証券取引委員会)側の姿勢が軟化しつつあることを含め、市場の思惑を加速させている。
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米Forbesによれば、 CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)のBTC先物データでは、10月12日時点でOI(建玉)は10,918枚となり、およそ2ヶ月で72%も増加した。CMEの先物に精通した投資家の流入が顕著となり、主にヘッジファンドが流動性を提供しているという。
「ビットコインETF」が認可されれば、米FidelityやVanguardなどの大手資産運用会社が、関連する投資信託をパッケージ化する可能性が高まるほか、これまで暗号資産取引所の口座開設や仮想通貨の現物保有を懸念して一線を引いていた機関投資家が、Nasdaq、Cboe(シカゴ・オプション取引所)、NYSE(ニューヨーク証券取引所)などの証券取引口座から直接、仮想通貨市場へのエクスポージャーを得ることができるようになるメリットは大きい。
中・長期的に、潤沢な資金力を有する機関投資家の呼び水となるからだ。
陶酔感は限定的か
資産運用会社カプリオールの創設者であるチャールズ・エドワーズ氏は、ここ最近の相場について、「一般投資家に”陶酔感”は見られない」と指摘した。Googleトレンドのデータが根拠の一つにある。
ここ数年間で、機関投資家比率が大幅に上昇して流動性や足元の値動きなど安定しやすくなった一方、2017年の仮想通貨バブルと比較すると、一般投資家の多くが”相場高騰の恩恵”に預かれず、置いていかれた可能性が高いことを示唆する。
トレンドが急上昇した20年3〜4月頃は、世界同時株安のコロナ・ショックが発生してビットコインが1BTC=4,000ドルを割り込む水準まで暴落したほか、20年5月には4年に1度の「半減期」を控えていた。2020年12月には、3年前のバブル時の最高値2万ドルを超えて上昇したものの、少なくともGoogleトレンド上の関心度は沈静化している様子が窺える。
一方、投資家の市場心理を表す「Fear&GreedIndex」は14日、貪欲(楽観)状態を示す「70」となるなどやや過熱感も見受けられる。同指標は、ボラティリティ、市場のモメンタム、SNSの感情分析、ドミナンス、Googleトレンドから算出するものだ。
先週時点では極端な欲望を示す「76」だったが、乱高下の過程で若干落ち着いたか。中国恒大グループのデフォルト(債務不履行)危機などが取り沙汰されて伝統金融市場が大荒れ模様となり、BTC価格にも波及した1ヶ月前時点では、恐怖(悲観)状態を示す「30」を示していた。
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