ロシア中銀、CBDCの試験プログラム開始
ロシアの中央銀行は15日、中央銀行デジタル通貨(CBDC)であるデジタル・ルーブルの試験プログラムを開始したと発表した。市民同士が、デジタルルーブルによる最初の送金を成功させたという。一方で、ビットコインなど民間の暗号資産(仮想通貨)については批判的な姿勢を崩していない。
CBDCとは
各国・地域の中央銀行が発行するデジタル化された通貨を指す。「Central Bank Digital Currency」の略である。仮想通貨との大きな違いは、CBDCは法定通貨であること。通貨の管理や決済等においてコスト削減や効率性向上が期待できる一方で、個人情報やプライバシーの保護、セキュリティ対策、金融システムへの影響など考慮すべき課題は多い。
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発表によると、これまでに、12の銀行が試験に参加する意向を示しており、そのうち3つの銀行が、すでにCBDCプラットフォームに参加している。今回2社が、銀行のモバイルアプリを利用した顧客間のデジタルルーブル取引に成功した格好だ。
ユーザーは、モバイルアプリでデジタルルーブルのプラットフォーム上にウォレットを開設し、口座の資金をデジタルルーブルに変換したり、他のユーザーに送金を行ったりできる。他の参加銀行も、必要なITシステムを整備した後に、試験に参加する見込みだ。
今後の計画
体制としては、ロシア中央銀行が、デジタルルーブルの発行元となり、プラットフォームの運営元でもある。
ロシア中銀のオルガ・スコロボガトワ第一副総裁は、次のように語った。
デジタルルーブルのプラットフォームは、市民、企業、政府にとって新しい利便性を提供する。
市民にとっては、デジタルルーブルでの送金は無料で、国内のどの地域からもアクセスできる。企業は、コストを削減したり、革新的な製品・サービスの開発機会を創出することができるようになる見込みだ。政府にとっても、特定ユーザーへの支払いや予算の支払いを管理する新しい方法になるだろう。
ロシア中銀は、今後段階的にプラットフォームを開発していくとも説明している。
第1段階では、デジタルルーブルの発行、デジタルウォレット、市民間の送金などをテスト。第2段階では、商品・サービスや公共サービスの決済、スマートコントラクトの実装、財務省との連携などを検証する。
さらに将来的は、オフライン決済や、金融業者などとの連携、ロシアに居住していないユーザーのデジタルルーブル取引もテストしていくという。
仮想通貨の禁止を主張
ロシア中銀は、CBDCプラットフォームの開発を進める一方で、ビットコイン(BTC)など民間の仮想通貨には依然として批判的な姿勢を崩していない。
同国では、仮想通貨を禁止したい中銀と、規制を導入して許可したい政府との間で意見が相違している状況だ。
財務省は、禁止せずとも規制することで国民は守られるとしている。一方で、フォーブスの報道によると、ロシア中銀は財務省に、仮想通貨承認に反対する書簡を送った。
ロシア中銀は、一般の投資家が、銀行を通じて仮想通貨を取引することを認めると、「政府の保護という幻想」が生まれると主張している。また仮想通貨を「事実上のねずみ講」だとも言及、仮想通貨産業は、ロシア経済に本当の意味での利益をもたらさないだろうと続けた。
仮想通貨の規制をめぐって、ロシア政府の中で統一的見解が得られるのは、まだ先になるかもしれない。
ウクライナ情勢
ロシアは17日、ウクライナ問題についてアメリカに回答したという文書を公開している。
その中でロシアは、ウクライナに侵攻する意図も計画もないと改めて否定。その一方で、NATO(北大西洋条約機構)の東方拡大停止などの要求に対して、米国が建設的に対応していないと指摘、中東欧からの米軍撤収やウクライナへの武器提供の中止などを要求した。
また、ウクライナがNATOに加盟すれば、米国およびその同盟国と、ロシアとの武力衝突を引き起こすことになる可能性があると牽制している。