仮想通貨で支払い受ける労働者増加
給与決済企業deelは17日、グローバルな雇用状況についての2021年分の年次レポートを発表。南米地域やアフリカで、暗号資産(仮想通貨)で給与を受け取るフリーランス労働者が増えていると報告した。
deelは、企業が海外にいるスタッフも含めて、その被雇用者に給料を支払うサービスを提供。100以上の法定通貨などをサポートしており、支給手段としては、銀行振り込みやデビットカード、そして21年7月からは仮想通貨も取り扱っている。
米国を含め多くの国の法律では、従業員が仮想通貨で給与を受け取ることを認めていない。このため、deelは仮想通貨取引所コインベースと提携して、給与を仮想通貨に変換して受け取れるサービスを提供している形だ。
レポートによると、ラテンアメリカ(南米)地域が、仮想通貨による給与支給事例の52%を占めていた。欧州・中東・アフリカ地域が34%、北米とアジア太平洋地域が、それぞれ7%と続く。
また、国別ではアルゼンチンで仮想通貨による給与受取が最大の増加を記録。ナイジェリアとブラジルがそれぞれ続いた。
アルゼンチンでは、雇用者の約3分の1が給与の一部を仮想通貨で受け取ることを選択。ナイジェリアでは約20%、ブラジルでは約3%の割合だった。
通貨別では、ビットコイン(BTC)が63%、イーサリアム(ETH)とテザー(USDT)がそれぞれ7%、ソラナ(SOL)とダッシュ(DASH)がそれぞれ2%を占めている。
deelは、ラテンアメリカでは現在、フリーランスとして海外の企業に雇用される人々が増加していると指摘。背景としては、コロナウイルスのパンデミックにより、地元地域の雇用が減少していることや、リモートワークを促進するデジタル技術が普及したことなどを挙げている。
アルゼンチンは度重なる経済危機とハイパーインフレーションを経験してきており、外貨購入も制限されるなどの状況で仮想通貨が注目を集めてきた経緯がある。なお、アルゼンチンにおける平均給与は1年間で21%増加していた。
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仮想通貨で給与を受け取る政治家も
仮想通貨による給与受け取り事例は世界的にも増えている。
米ニューヨーク市のエリック・アダムス市長は1月、選挙中の宣言どおり、初任給をビットコインとイーサリアムで受け取った。ニューヨーク市が次世代技術にオープンであるというメッセージを示すことを、この行動の動機として挙げている。
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また欧州ベルギーでは、ブリュッセル地域のクリストフ・デ・ブケラー議員が、22年の給与全額を、ビットコインで受け取ると発表した。
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