大統領令を受けて国際協力枠組みを提示
米財務省は7日、バイデン政権の仮想通貨関連大統領令にもとづき、デジタル資産をめぐる国際協力の枠組みを提示した。
公式発表によると、仮想通貨のような「技術主導の金融イノベーションは国境を越えることが多く、世界中の家計、企業、政府に影響を与える可能性がある」。このため、国際協力を行って、高い規制水準と公平な競争条件を維持し、安全で低コストな金融サービスへのアクセスを拡大していくことが不可欠であるという。
米財務省は、国際協力を行わないと解決できない問題について、以下のように説明した。
規制、監督、コンプライアンスが法域間で不均一であることは、裁定取引の機会を生み出し、金融の安定性と、消費者・投資家・企業・市場の保護に対するリスクを増大させる。
他国によるマネーロンダリング・テロ資金調達防止(AML/CFT)規制が不適切であれば、ランサムウェアやその他のサイバー犯罪関連のマネロンでよく見られるように、米国外に出ていく不正なデジタル資産取引の流れを調査することが困難になる。
また、相手方が発展途上国や新興国の場合、システム間の摩擦により国境を越えた送金に時間とコストがかかる。
ランサムウェアとは
ハッキングを仕掛けたうえで、元の状態に戻すことを引き換えに金銭を要求するマルウェアのこと。「身代金要求型マルウェア」とも呼ばれる。感染すると、他人の重要文書や写真ファイルを勝手に暗号化したり、PCをロックして使用を制限した上で、金銭を要求してくる。
▶️仮想通貨用語集
主な目的
以上のような課題を踏まえつつ、今回米財務省が示した米国の国際協力枠組みは、主に以下のことを目的とするという。
- 米国の価値観を反映した技術と規制基準を推進することにより、米国および世界の消費者、投資家、企業を保護する。
- 決済イノベーションとデジタル資産の責任ある開発を通じ、国際金融システムにおける米国のリーダーシップを強化し、技術的・経済的競争力を向上させる。
- 研究や、国際連携を推進することにより、デジタル資産の責任ある開発と利用を促進するための技術進歩を後押しする。
- 安全で手頃な価格の金融サービスへのアクセスを促進する
さらに、不正金融のリスクを軽減することや、金融安定性を維持することについても言及している。
関連機関
米財務省は、こうした目的について、これまでも国際的なフォーラムやパートナーシップにおいて積極的に取り組んできたが、大統領令を受けて今後ますます注力していく計画だ。
具体的には、金融活動作業部会(FATF)、G7、G20、金融安定理事会(FSB)、経済協力開発機構(OECD)、国際通貨基金(IMF)、その他の国際基準設定団体において積極的な役割を取っていきたいとする姿勢を示している。
この他にも、既存の地域的・二国間的関与が強化できる場所を特定し、適切な場合には、新たなパートナーとの協力を行っていくという。
米財務省はこれまで米国が取った動きの一例として、米国がG7の議長国だった2020年に、デジタル決済に関して共通のビジョンを策定する場としてG7デジタル決済専門家グループ(DPEG)を設立したことを挙げた。
G7は2021年、「リテールCBDCに関する公共政策原則」を発表している。