Voyagerの顧客資産(米ドル)
米国で破産申請を出した暗号資産(仮想通貨)投資プラットフォームVoyager Digitalは11日、顧客資産の米ドルと仮想通貨の返済計画について暫定的に公表した。
Voyager Digitalは高利回りな預金金利を謡い、投資家に仮想通貨を預けさせた一方で、集めた資産を仮想通貨マーケットメーカー会社に貸し出して金利を稼いできた。
しかし、ヘッジファンドのThree Arrows capital(3AC)の破綻により、約900億円(6.5億ドル)相当の不良債権を抱えたVoyagerは、5日に「チャプター11破産申請(再建型の企業倒産処理)」を提出。
破産に先立って顧客資産の入出金を停止していたため、ユーザーは預けた資産を取り戻せるか焦燥感に駆られている状況だ。
11日の通知でVoyagerは、まず顧客資産のうち米ドル預金については最終的に満額返還される旨を伝えた。現在、米ドル資金はメトロポリタン商業銀行(MCB)の顧客用口座に保管されており、「照合と不正防止プロセス」を経て顧客の手元に戻されるという。
先週、これらの米ドルのFDIC(米連邦預金保険公社)保険の適応可否を巡って議論が巻き起こっていた。騒動に関する説明責任を果たすため、Voyagerは以下のように説明した。
Voyagerの現金口座の米ドルはMCBで保管され、FDIC保険に加入している。つまり、MCBが破綻した場合、Voyagerの顧客あたり最高25万ドルまで補償される。FDIC保険はVoyagerの破綻をカバーしないが(問題ない)Voyagerは顧客の現金を預かっておらず、MCBが保持しているからだ。
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Voyagerの顧客資産(仮想通貨)
一方、顧客が預けた仮想通貨の方は事情が異なるようだ。11日の声明によると、Voyagerは現在、プラットフォーム上に約1,800億円(13億ドル)相当の仮想通貨を保持している。これに加えて、時価900億円(6億5,000万ドル)相当のトークンが、Three Arrows Capital(3AC)に対する不良債権と化している。
現段階のVoyagerの返済計画としては、13億ドルの手元資金に3ACからの返済分を加え、補償(株式、独自トークンVGXT)を抱き合わせる形で、ユーザーへの返済を考えているという。
しかし、1日に米国で破産申請を提出した3ACから、どれだけ資産を回収できるかは分からない。Voyager自体の再建プロセスによってプランが調整される可能性もあり、顧客が受け取る資産の評価額に影響も出てくることが予想される。6日には、トロント証券取引所(TSX)がVoyagerの親会社上場廃止に向けた審査を開始したことを発表した。
Voyagerは現在、顧客資産価値の最大化に向けて資金調達や事業売却を含む様々な戦略的選択肢を模索しているという。更新情報を追って提供し、更生計画案について顧客と調整し、最終的に投票で判断するとVoyagerは締めくくった。
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