カストディ口座の資産返却を目指す
米国で破産申請した暗号資産(仮想通貨)融資企業Celsius Network(セルシウスネットワーク)のカストディ口座を保有していた顧客らは、弁護士を雇い資産を取り戻そうとしている。コインデスクが報じた。
この顧客グループを主催する人物の一人であるDavid Little氏によると、数日のうちに数人から400人近くまでメンバーが増え、弁護士報酬として約1,300万円(10万ドル)近くを集めることができたという。
Little氏らは、資金を保管するためにセルシウスを利用していた。セルシウスの高利回り商品ユーザーに資金を預けた顧客とは異なり、利息は受け取っていない。
「カストディ口座の資産は分別されている」と訴え
Little氏は、7月18日付けで、セルシウスの件を担当しているニューヨーク南部地区裁判所の判事宛てに書簡を提出していた経緯がある。
その中でLittle氏は、カストディ口座に仮想通貨を持つセルシウスユーザーが、できるだけ早く他社の口座などに資金を移すことを許可してもらいたいと要請していた。
根拠としては、セルシウスの利用規約に「カストディ資産は常にユーザー側に留まるものとする」と記載されていることや「所有権はお客様にあり、セルシウスはお客様の指示なしに資産を使用することはできない」という説明があったことなどを挙げた。カストディ資産が引き出せないままであれば、明らかに規約違反であると主張する形だ。
また、セルシウスは、バランスシート上で資産を区分し、カストディ資産を独立した項目として強調しようとしていたことにも言及している。
以上のことから、Little氏は利用規約とバランスシートの両方で、カストディ資産は明確に他と区別されており、口座所有者は資産を引き出して、他のカストディアンを選択できるようになるべきだと申し立てた。
一方で、破産申請を専門とする企業507キャピタルの創立者Thomas Braziel氏は、利用規約の文言は複雑でありセルシウスが実際にカストディ口座の資産を保管しているかどうかは明確ではないと意見している。
カストディとは
投資家の代わりに資産を保有・管理することを指す。仮想通貨以外の資産にも広く使われる用語。資産の保管や売買に係る決済、また元利金・配当金の受領や議決権行使など、幅広い業務を代行するサービスを指す。カストディを行う企業を「カストディアン」と呼ぶ。
▶️仮想通貨用語集
再建計画
セルシウスは、Terraエコシステム崩壊の仮想通貨市場への波及を経て米連邦破産法11条の適用を申請した。裁判所への提出書類によると11億9,000万ドルの赤字を抱えている。
18日には再建計画の概要を発表しており、マイニング子会社によるビットコイン(BTC)採掘で利益を生み出すことや、事業再編成、資産売却、第三者による投資などを挙げた。
元従業員による訴訟も
セルシウスをめぐっては、同社の元従業員も7月、ニューヨーク州で同社を相手取って訴訟を起こした。
原告のJason Stone氏は、セルシウスのビジネスは、ユーザーから預かった資産を「貸し出すこと」、および「その資産を仮想通貨市場に投資することで収入を得ること」に依存しており、ネズミ講に類似していたと主張している。
また、セルシウスはトークンの価格変動に対し適切なリスクヘッジを行っておらず、原告側との利益分配契約に基いて支払うべき数百万ドルを、まだ支払っていないとも訴えた。