著名ユーザーなどにイーサリアムを送信
何者かが、米財務省により制裁対象とされた暗号資産(仮想通貨)ミキシングサービスTornado Cash(トルネードキャッシュ)から、様々なアドレスにイーサリアム(ETH)を送信している。これは制裁措置に対する一種の抗議ともみられている。
Someone is out dusting a bunch of wallets from Tornado with 0.1 ETH lmaaaaooooohttps://t.co/3NfLuz9qYF pic.twitter.com/xsmiyM8sxq
— joseph.eth (@josephdelong) August 9, 2022
SushiSwapの元最高技術責任者(CTO)Joseph Delong氏もこのことを指摘し、Etherscanの画面を示した。Etherscanでは、何者かが0.1ETHを様々なアドレスに送り続ける様子が記録されている。
送り先としては、著名人と関連する仮想通貨ウォレットも多い。例えば、米著名コメディアンDave Chappelle氏、NBAレジェンドShaquille O’Neal氏、仮想通貨取引所米コインベースのBrian Armstrong CEO、著名TVホストのJimmy Fallon氏(BAYC保有者)、ユーチューバーのLogan Paul氏、メタ社Zuckerberg CEOの妹であるRandi Zuckerberg氏、著名デジタルアーティストBeeple氏などだ。
問題点
制裁対象の仮想通貨ウォレット(トルネードキャッシュのウォレット)からETHが送られていることから、これが制裁対象との取引とみなされれば受取人にも問題が生じる可能性がある。
8日に財務省が制裁を発表した際、仮想通貨シンクタンクCoin Centerも次のような懸念を示していたところだ。
ブロックチェーン取引の性質上、トルネードキャッシュのアドレスから送金された米国人は、その取引を拒否することすらできず、しかもその瞬間、制裁ルールに違反しているリスクが生じてしまう。
Coin Centerはこの他にも、米国への脅威となる特定の人物ではなくミキシングサービスを制裁対象にすることで、正当なユーザーもサービスを利用することが不可能となり「人物に対する制裁」ではなく「技術の禁止」になってしまうとも問題点を指摘していた。
米財務省は、これまでハッキングにより資金が盗まれた際に、サイバー犯罪者がトルネードキャッシュをマネロンに利用してきたことから、同サービスを制裁リストに追加したと説明している。ただ、合法的なユーザーについても利用が制限されてしまうことから、一部からこの措置について疑問の声も挙がっているところだ。
関連:米財務省、仮想通貨ミキシング「Tornado Cash」を制裁対象に指定
制裁の影響は、すでに多くの仮想通貨ユーザーに及んでいる。ステーブルコインUSDコイン(USDC)を運営する米サークル社は、制裁を受けたウォレットをブラックリスト化。その中には、トルネードキャッシュのUSDCプールも含まれていた。
このことは、トルネードキャッシュにUSDCを預けていた者のうち、完全に正当な取引をしていた多くのユーザーも、資産を引き出せなくなったことを意味している。
ミキシングサービスを使う正当な事例
仮想通貨メディアDecryptの編集者は、ミキシングサービスを使う正当な理由として次のような事例が挙げられると述べた。
Completely legal (until today) reasons to use tornado cash
— reza (@RezaJafery) August 8, 2022
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