インフレリスクが軽視されている
ジャクソンホール会議でのパウエルFRB(米連邦準備制度)議長の基調講演を26日23時頃(日本時間)に控え、会議に参加する地区連銀総裁の発言に注目が寄せられている。
25日に現地で行われたCNBCのインタビューで、タカ派で知られるセントルイス連邦準備銀行のジェームス・ブラード総裁は、インフレ(物価高)の加速は米ウォール街が予想する以上に深刻な状況にあり、「マーケットはそのリスクを過小評価している」と指摘した。
インフレ対策に真剣であることを示すため、「FRBの政策金利を現状の2.25%~2.50%から、年末までに3.75%〜4.00%に引き上げたい」としている。
カンザスシティ連銀のエスター・ジョージ総裁もまた、政策金利を4%を超えて上昇させるべきとの見方を示した。まだ経済成長の重しとなるレベルまで金利を引き上げていないとして、「一時的に4%以上とする必要もあるかもしれない」、とブルームバーグに語った。
これらの発言は、FRBの利上げフェーズが2023年3月にも終了し、同年末まで同水準を維持するという、現在のマーケットの楽観的な見方を否定する。年末の金利水準について、先物金利市場では3.50%~3.75%となることが期待されている。(記事執筆時点)
ブラード総裁が指摘するように、パウエル議長がより慎重なアプローチを取り、金融引き締めサイクルを継続する姿勢を強調することになれば、市場のリスクオフ感情を再燃させるだろう。米CoinbaseのDavid Duong機関調査責任者によると、株式市場やビットコイン(BTC)にとっては、短期的に苦戦を強いられる可能性がある。
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より慎重なスタンスも
一方、フィラデルフィア連銀のパトリック・ハーカー総裁は同日のCNBCのインタビューで、「急いで上げて、急いで下げる必要はない」と指摘。「FRBは政策金利を3.4%を超えるまで引き上げ続け、その後しばらく様子を見るべき」と述べた。
ハーカー総裁はまた、9月のFOMCで3回連続で75bpの利上げを行うか、利上げ幅を50bpに縮小するかどうかの判断についても、9月13日に発表されるインフレ指標CPI(米消費者物価指数)を見極める必要があると語った。
50bpの変動でさえ、相当な動きであることを認識する必要があると思う。50か75かは今は言えないが、50が相当な動きではないと考えることは控えよう。
大幅な利上げ継続が既定路線にある中、ジャクソンホール会議ではパウエル議長が来年に向けてどれだけタカ派(金融引き締め政策に積極的)的なスタンスに振り切るか、といった長期的な展望が注目点となっている。
来年のリセッション(景気後退)に関する言及も予想され、利上げサイクル転換時期の見通しに言及することがあれば、市場の警戒感をオフセットする可能性もあるだろう。
シティグループのエクイティ・ストラテジストであるScott Chronert氏は、「来年のリセッション(景気後退)が予想される中、市場がどう反応していくかが焦点」と指摘。「政策金利が目標に達したとしても、すぐに真逆の緩和方面に舵を切る計画がないことも強調するだろう」との見解を示した。
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