州行政がステーブルコイン発行
アルゼンチンのサン・ルイス州で、州の行政に米ドルの価値に連動するステーブルコインの発行を認める法案が可決された。
この法案は、州行政に独自のブロックチェーン技術で「San Luis de Ahorro y Arte Digital Assets(セントルイス貯蓄とデジタルアート資産)」の作成を認めている。地元の芸術的資産をNFT(非代替性トークン)として発行する取り組みも含まれる。
サン・ルイス州のステーブルコイン「Activos Digitales San Luis de Ahorro(サン・ルイスデジタル貯蓄資産)」は米ドルの価値に固定され、流動性の高い金融資産で100%担保される。発行上限は州行政の年間予算の2%に設定されている。地元メディアLa Gacetaが2023年の予算から試算したところ、上限は68億円(5,000万ドル)程に上る可能性がある。
ステーブルコインは、18歳以上のすべての州民が利用可能になり、デジタルウォレットで保有したり、取引プラットフォームで交換できる。
サン・ルイス州は、学生の貯蓄に対する教育開発の一環で2011年に「私の将来のための貯蓄切手」制度を開始。進学する毎に学年に応じて50ドル~400ドルの切手を配布してきたが、これもステーブルコインと交換可能になる。
ステーブルコインとは
価格が常に安定している(stable)仮想通貨を指す。ステーブルコインは暗号資産の一種で、BTCやETH、XRPなど変動性のある資産とは異なり、米ドルなどに裏付けられその価値($1)を保つことが目的だ。米ドルの裏付けによるステーブルコイン(USDT・USDC)のほか、DAIやUSTといったアルゴリズムを利用するステーブルコインもある。
▶️仮想通貨用語集
法案の目的
一方、「Activos Digitales San Luis de Arte(サン・ルイス デジタルアート資産)」は、地元のアーティストに作品をデジタル化し、NFTマーケットプレイスを通じて発売されることが規定されている。
本法案「投資と社会経済発展のための金融イノベーション」の目的は、以下のように定義されている。
- 州の経済的、社会的、文化的発展を高めるツールを作り、持続可能な環境の中で、異なるアクター間の価値の生成、取引の効率性と透明性、貯蓄計画を促進すること。
- コンセンサスアルゴリズムと暗号技術により、異なるタイプのデータとプロセスのトレーサビリティ、セキュリティ、不変性、透明性を提供し、本法の枠組み内で行われる取引を検証すること。
- 様々なプロジェクトを通じて、インテリジェントな政府ツールによる行政手続きのデジタル化、簡素化、合理化に取り組み、プロセスを標準化し、国家機関における紙の使用を減らすことに貢献する。
- 電子デバイス、取引プラットフォームまたはその他の手段を用いて、第三者の口座および注文のための取引サービス、支払いおよび/または回収の管理および実行を作成、実施、管理すること。
ステーブルコインの採用
暗号資産(仮想通貨)の中でも、価値の安定しているステーブルコインの採用が加速しつつある。
16日にはバミューダ諸島のジュエルバンクが、米ドルで担保されたステーブルコインJewel USD(JUSD)を発行する計画が明らかになっていた。発行基盤としてはポリゴン(Polygon)ブロックチェーンを採択、当面の使用は機関投資家に限定される。
関連:バミューダ諸島の銀行、ポリゴンでステーブルコイン発行へ
15日に国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、ロシアのウクライナ侵攻により影響を受けたウクライナ人を対象とした現金給付支援で、ステーブルコインUSDCoin(USDC)を配布する試験プログラムを実施することが明らかになった。
UNHCRが受給資格者の照会を担い、戦争で被害を受けた人々が必要とする宿泊施設、食料、医療などのニーズに基づいて現金給付を分配する。
ブロックチェーン上で価値移転記録(トレーサビリティ)が明確になることで、UNHCRのような人道支援組織にとって透明性と説明責任の向上につながる。また、仮想通貨(USDC)の携帯性を活かして国内や国境を越えた移動が可能になり、直接現金を持ち歩くよりも高い安全性を確保できることも期待される。
関連:国連UNHCR、ウクライナ難民支援でステーブルコインUSDC給付へ