Bitzlatoの創設者を逮捕
米国の複数当局は18日、小規模な暗号資産(仮想通貨)取引所Bitzlatoの創業者でロシア国籍のAnatoly Legkodymov氏を起訴した。不正資金の移動事業を行い、マネーロンダリング防止要件に準拠していなかった疑いがある。
Legkodymov容疑者は17日にフロリダ州マイアミで逮捕されており、まもなく連邦地裁で罪状認否が行われる予定だ。
捜査には米司法省、ニューヨーク州東部地区連邦検事局、連邦捜査局(FBI)など様々な機関が参加している。また、司法省は、フランスの法執行当局や米財務省の金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)とも連携しているところだ。
フランス当局は、欧州警察およびスペイン、ポルトガル、キプロスの当局とも協力して、Bitzlatoのデジタルインフラを解体し、強制措置を講じたとされる。
金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)とは
米財務省に所属する事務局。使命は金融システムを違法な利用から守り、マネーロンダリングと闘い、金融情報の収集、解析、公布と金融当局の戦略的活用を通じて国家安全保障を推進することだ。
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訴状の内容
訴状によると、Legkodymov容疑者は、香港で登録された国際的な仮想通貨取引所「Bitzlato」の幹部で大株主である。Bitzlatoは、「自撮りもパスポートも必要ない」として、身分証明書をユーザーにほとんど要求しないことを宣伝していた。
このように、顧客身元確認(KYC)不備のため、Bitzlatoは犯罪資金の温床になっていた。Bitzlatoの最大の取引相手は、大規模ダークネット市場Hydraだった。Hydraは、麻薬、盗難された個人データ、マネーロンダリングサービスなどを扱う、不正なオンライン市場である。
Hydraは2022年4月に米国とドイツの法執行機関によって閉鎖されたが、それまでにBitzlatoを通じて約900億円(7億ドル)以上の仮想通貨を取引していた。
訴状は、同取引所がランサムウェア収益約19億円(1,500万ドル)以上を取り扱っていたとも指摘している。
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ランサムウェアとは
ハッキングを仕掛けたうえで、元の状態に戻すことを引き換えに金銭を要求するマルウェアのこと。「身代金要求型マルウェア」とも呼ばれる。感染すると、他人の重要文書や写真ファイルを勝手に暗号化したり、PCをロックして使用を制限した上で、金銭を要求してくる。
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さらに、Legkodymov氏や他の幹部は、Bitzlatoで不正行為が横行していることを認識していた。例えば、Legkodymov氏は2019年、社内チャットシステムで「Bitzlatoユーザーは他人の身分証明書を使ってアカウントを登録している詐欺師」だというメッセージを同僚に送っていた。
また、米国ユーザーを受け入れていないと主張する一方で、米国を拠点とする顧客とも相当量の取引を行っていた。
なお、米国当局は、訴状に記載された容疑は申し立て段階で、まだ有罪は証明されていないと述べている。もし違法送金などにより有罪判決を受けた場合、最高で5年の懲役刑が科せられる見込みだ。
国内外当局と協力して捜査
本件に関する記者会見で、Kenneth A. Polite司法省検事局次長は次のように説明している。
全米仮想通貨執行チーム(NCET)が、Bitzlatoを取り締まり、被告人を逮捕したことは、国境を越えて展開される仮想通貨関連の犯罪であっても、国内外のパートナーと協力して立ち向かっていけることを示すものだ。
NCETは、仮想通貨の不正利用を防ぐため、2021年10月に創設された組織で、仮想通貨取引所、ミキシングサービス、インフラプロバイダーに重点を置き、関連犯罪の調査を実施・支援している。