Uniswapの拡大戦略
分散型取引所(DEX)最大手UniswapのBNBチェーンへの拡大計画で、米著名VCアンドリーセン・ホロウィッツの仮想通貨投資部門「a16z Crypto」が最終投票で反対票を投じたことがわかった。
BNBチェーンへの資産移動(ブリッジ)に使用するアプリケーションに関する事前投票でWormholeに決まったことが原因と見られている。a16zは対抗馬である「LayerZero」に投資している背景がある。
5日頃にa16zが保有する1,500万票をBNB移行計画の反対票に投じた結果、一時は反対票が66.9%を占める状況となったが、7日時点には賛成票が伸びて69.39%と盛り返している状況だ。
🦄 Uniswap Delegates 🦄
— Uniswap Foundation (@UniswapFND) February 7, 2023
Vote on deploying Uniswap v3 to @BNBCHAIN ends this Friday afternoon ESThttps://t.co/S5e3D5mKru https://t.co/CnQ8Td3wFK
関連:分散型取引所Uniswap、トークンブリッジ「Wormhole」をサポートへ
UniswapのBNBチェーン展開
Uniswapコミュニティでは、ソースコードのビジネスライセンスが切れる23年4月1日までにマルチチェーンを進める方向性で22年12月以来議論を重ねてきた。
渦中のa16zも、「フォーク(コピー)アプリケーションの乱立を避けるため、ユーザーが信頼できる公式Uniswapを早期に展開すべき」と発言。トークンブリッジを一つ選定する議論ではLayerZeroを推薦しつつ、「最終的な決定権はコミュニティにある」と述べていた。
その後、2月1日に終了した1次投票は得票率62%でWormholeがブリッジの座を勝ち取った。なお、この投票資格は暗号資産(仮想通貨)UNIの保有履歴に基づいていたため、記録取得時にUNIを信託会社で保管していたa16zは参加できなかった。
A16z has 15M UNI tokens! Why didn’t they vote?
— Abdullah Umar ~ ubermar (@abdullahbumar) February 5, 2023
Shouldn't they support LayerZero?
Yes…but they couldn’t vote because they’ve custodied their UNI tokens with @FireblocksHQ
This prevents them from voting on off-chain proposals
But they CAN vote on on-chain proposals pic.twitter.com/VTBXNXHlvx
しかし、現在(2月3日〜10日)開催中の最終投票はa16zも投票可能であり、ブリッジ選定の政治的な理由によって計画全体に反対票を投じた格好だ。
関連:イーサリアム創設者ブテリン氏提唱の「Soulboundトークン(SBT)」に高い関心
コミュニティの反発
UniswapはDAO(分散型自律組織)が管理する分散型プロトコルとして最大規模。37万のトークン所有者が存在し、過去に28,000ユーザーがコミュニティ投票に参加してきた。
大規模ホルダーが自己の利益を優先し、コミュニティが費やした膨大な議論を反故にしようとする今回の動向は、DAOの在り方に疑問を呈すものとしてWeb3(分散型ウェブ)業界で注目を集めた。
また、Uniswapコミュニティの間では、トークンブリッジを選択する段階で利害関係者によるロビー活動が蔓延していたことも指摘されている。ブリッジの最終候補は、仮想通貨VC大手Jump CryptやParaf icapital が支援するWormholeと、a16zやSequoia Capitalが投資するLayerZeroという、資金力の高いプロジェクトに絞られていたという。
350万UNIを管理する「Blockchain at Michigan」のガバナンスヘッドAbdullah Umar氏は、両方のステークホルダーからアプローチを受けていたという。どちらのブリッジプロトコルもまだトークンを発行していないため、初期投資家の影響力がプロセスを通じて大きく作用していると同氏は指摘した。
A16zは、自分たちの選んだブリッジであるLayerZeroがWormholeに負けたという理由だけで、UniswapのBNBチェーンへの展開案に反対した。
Uniswap controlled by a16z? https://t.co/9QTi1KjVjG
— CZ 🔶 Binance (@cz_binance) February 5, 2023
最大手仮想通貨取引所バイナンスのチャンポン・ジャオ(CZ)CEOは、「オンチェーン投票は、大きなクジラがブロックチェーンを制御する」仕組みに過ぎない点で、株式会社の大株主と変わらないと指摘した。
こうした資本集約的な経済活動に終始したWeb3のソリューションとして、イーサリアムの共同創設者ヴィタリック・ブテリン氏は「Soulboundトークン(SBT)」を提唱している。
SBTは個人や組織の特性、経験、実績を証明するWeb3時代のデジタルアイデンティティとされ、一度配布されたら他者に譲渡できない特性を有す。ブテリン氏はSBTを次世代の「分散型社会(DeSoc)」を形成する構成要素としており、DAOの投票要件に組み込むことで複数のアカウントや偽IDを用いるシビル攻撃や、融資市場を用いた投票力の借り入れを防ぐこともできる。
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— BSCDaily (@bsc_daily) December 7, 2022
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バイナンスは22年第3四半期にSBTを取り入れており、最初のSBT「Binance Account-Based (BAB) 」を発行。ギブアウェイの要件としてBAB保有を組み込むなど実用化している。分析機関Messariによると、SBTの導入によりBNBチェーンの平均デイリーアクティブアドレス数は第4四半期にかけて30%増加した。
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