決済オプションにビットコイン導入
中央ヨーロッパのリヒテンシュタイン公国は、暗号資産(仮想通貨)ビットコインを、国の公的サービスに対する支払いに対して将来的に利用できるようにする方針だ。同国のダニエル・リッシュ首相がドイツ最大の経済新聞「Handelsblatt」とのインタビューで明らかにした。
財務大臣も兼任するリッシュ首相は、特定の行政サービスの決済に「ビットコインでの支払いオプションを導入する予定だ」と述べた。現在の計画では、ビットコインを受領すると即座に自国通貨であるスイス・フランに両替されることになるという。なお、具体的な時期への言及はなかった。
同様の方法は、すでにビットコインとイーサリアムでの州税の納入を受け入れているスイスのツーク州や、ビットコインと2種類のステーブルコイン(USDTとスイスフラン連動のLVGA)を事実上の法定通貨と定めたルガーノ市で導入されている。
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リヒテンシュタインはスイスとオーストリアに囲まれた内陸国で、歴史的経緯から両国との法的・経済的関係が深い。小豆島に相当する大きさ(160㎢)で、人口は約3万9,000人。法人税率が低く、個人には所得税が課せられない租税回避地(タックスヘイブン)として知られている。
先進的なブロックチェーン法の整備
リヒテンシュタインはスイスと並び、ブロックチェーン及び仮想通貨産業を育成する法的環境が整備されている。
同国では2019年10月、「トークン及び信頼される技術サービス提供者法(TVTG)」が成立し、2020年1月1日から施行されることとなった。TVTGは一般的にリヒテンシュタイン・ブロックチェーン法として知られており、すべてのブロックチェーン企業ならびに仮想通貨を扱う企業を金融市場庁(FMA)の監督下に置き、登録を義務付けている。
規制の明確性とFMAとの開かれたコミュニケーションは、仮想通貨企業にとって魅力的な要素であり、リヒテンシュタインに拠点を置く仮想通貨企業の数は増加している。
ブロックチェーン法の共同執筆者で、リヒテンシュタイン金融市場革新・デジタル化事務所のトーマス・デュンザー所長は、TVTGは意図的に柔軟で技術に中立的な設計になっているため、幅広いトークンエコノミーへの対応も可能だと述べている。
2016年のTVTG設計当時は、現在の規模の分散型金融やNFTは存在していなかったが、デュンザー氏にとっては、分散化やNFTの流れも想定内だったようだ。
我が国のトークン法では、NFTさえも見越した幅広いトークン化のための基礎を作った。我々は意図的に、ブロックチェーンの現在のユースケースをはるかに超えることを考えつつ、法律制定に臨んだ。
同氏によると、TVTGは「ルールやビジネスモデルベース」ではなく「原則や役割ベース」であるため、技術革新に適応しやすいという。ブロックチェーン法では、利用者にリスクとなる場合は、ビジネスモデルに関わらず規制の対象となる。
テクノロジー主導のイノベーションが急速に進む中、法制度の刷新能力は極めて重要だ。それがなければ、イノベーションを遅らせるだけでなく、法的な不確実性も大きくなる。どちらも国家の利益にはつながらない。
MiCAとの互換性
欧州議会は4月20日、EU全域に適用される統一的な暗号資産市場(MiCA)法案を可決した。TVTGは、トークンの機能による法的な分類方法(トークン・コンテナ・モデル)やライセンス要件などの点で、MiCAのモデルとして機能したという。
そのため、MiCA発効後もリヒテンシュタインの実務に大きな変更はないとみられており、両法は十分に互換性があるとの考えをデュンザー氏は示した。一方、リヒテンシュタインのブロックチェーン法は、民法上の権利も含む「あらゆる種類のトークン化に対する包括的で強固な法的枠組み」を有すると同氏は指摘。「我々は行動する準備が整っている」と強調した。
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