180億ドルの抜け道
バイデン米大統領は9日、2.4兆円(180億ドル)に上る「裕福な暗号資産(仮想通貨)投資家の税の抜け道」を許容しているとして、共和党の予算案を批判するツイートを投稿した。
We don’t have to guess what MAGA House Republicans value. They’re telling us. pic.twitter.com/BM6JGMEFeq
— President Biden (@POTUS) May 9, 2023
MAGA共和党員の価値観を推測する必要はない。彼らは、我々にはっきりと伝えているのだから。
このツイートでは、バイデン政権が連邦予算から180億ドルに相当する「裕福な仮想通貨投資家を助ける税の抜け道」を削除すべきだと考えているのに対し、「MAGA共和党員」は150億ドル(約2兆円)相当の食品安全検査を削減すべきだと考えていると、指摘している。
米連邦政府の債務上限問題で、無条件での引き上げを求めるバイデン政権と、政府の歳出削減を条件とする下院共和党の協議は平行線を辿っており、未だ進展は見られていない。
ジャネット・イエレン財務長官は1日、議会による債務上限の引き上げがなければ、早ければ6月1日にもデフォルトする可能性を警告した。
共和党を批判するツイートは、このような状況で発せられたものだ。
MAGAとは
”Make America Great Again”=「アメリカを再び偉大な国にする」の意味で、米国の政治で用いられる選挙スローガン。1980年の大統領選でロナルド・レーガン第40代大統領が初めて使用。近年ではドナルド・トランプ前大統領が二度の大統領選挙で使用し、保守層の政治活動場面でよく使われている。
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ウォッシュセール規則の適用
バイデン大統領のツイートでは具体的に何が「税の抜け道」にあたるのかには言及されていない。しかし、3月に発表された2024会計年度(23年10月~24年9月)の予算教書では、仮想通貨に対する課税方法の変更が提案されている。
その一つが、仮想通貨に「ウォッシュセール規則」を適用し、同一または類似の仮想通貨を売却した後、迅速に買い戻すときに発生した損失に対する税の控除をなくすという提案だ。米国では、株式や債券の取引には同規則が適用されている。
バイデン政権はこの変更により、10年間で4.3兆円(約316億ドル)相当の歳入が得られると見積もっている。
ブルームバーグは3日、個人トレーダーがウォッシュセールを利用して損失を申告することで、「何十億ドルもの」租税回避を行っていると、全米経済研究所(NBER)の分析に基づいて報道した。
ブローカーに1万ドル以上の仮想通貨取引の報告を義務付けるなど、内国歳入庁(IRS)による監督が厳しくなる中、トレーダーは仮想通貨取引では許容されているウォッシュセールを使った「合法的な税の回避」に切り替えていることが明らかになったとしている。
NBERは既存の税法や規制が仮想通貨に対処するよう設計されていないと指摘。「仮想通貨課税に関する監視と政策の明確化」が喫緊の課題だと主張した。
予算教書では上記に加え、以下の変更も提案している。
- 金融機関と仮想通貨ブローカーによる情報報告
- 仮想通貨も時価評価税制の対象にする
- 米国外の仮想通貨口座に多額の資産を保有する米国人に対して、 その資産をIRSに報告することを義務付ける
関連:米バイデン政権の予算教書 仮想通貨課税に関する変更提案も
マイニング企業への課税
バイデン政権はまた、2024年度予算で「デジタル資産マイニングエネルギー(DAME)税」を提案。仮想通貨マイニング企業に対し、マイニングに使用する電気代の30%に相当する税金の負担を求めている。
DAME税は、2024年から年に10%づつ、3年間をかけて段階的に導入される予定で、2026年末に目標の30%に達する見込みだという。
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