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「Xデー」迫る米債務上限問題、考えられるシナリオとその影響

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

難航する債務上限引き上げ交渉

イエレン米財務長官が、政府の手元資金が枯渇する可能性があると警告した6月1日が迫る中、バイデン大統領とマッカーシー下院議長による債務上限引き上げをめぐる交渉は難航している。

5月27日更新:イエレン氏は“Xデー”を6月1日から6月5日に変更した。

このような状況を受け、米財務省短期証券の利回りは急伸し、格付け会社フィッチ・レーティングスは24日、長期外貨建て米国債の格付けの見通しを「安定的」から「ネガティブ」への引き下げを示唆した。

JPモルガンは、米国の債務上限に関して今後考えられるシナリオとして、以下の三つ可能性を挙げ、それぞれのケースに対する投資戦略を示した。

  1. シナリオ1: Xデーに先立ち、債務上限が引き上げられるか、一時的に停止する
  2. シナリオ2: Xデーを迎えるが、政府は債務支払いを優先順に継続する=テクニカルなデフォルト
  3. シナリオ3: Xデーを迎え、政府は債権者に債務を支払わない。=実際のデフォルト

JPモルガンは、上限引き上げをめぐる政治的な駆け引きは珍しいことではないと指摘する一方で、政府が債務を履行できない場合は、市場や経済に甚大な影響を与えることから、最終的には政治的な妥協点を見出すべきだと主張している。

米国で政府債務に上限が設けられたのは1917年に遡るが、1960年以降、連邦議会は100回以上、上限を引き上げてきたという。また、上限引き上げをめぐる政府と議会との交渉は難航することも多く、2011年には72時間以内に債務不履行に陥るという瀬戸際まで交渉が続いた。

最も可能性が高いシナリオ

JPモルガンは、歴史的にみても、最終的には債務引き上げ交渉が合意に達していることから、上記のシナリオ1が最も可能性が高いと見ている。市場関係者の一般的な予想も同様だ。

投資の面では、すでにXデー以後に満期を迎える国債を投資家が避ける傾向が生まれているという。例えば、米ドル連動型ステーブルコインUSDCを発行する米サークル社は、米国政府がデフォルトに陥るリスクに備え、USDCの準備金で6月上旬以降に満期を迎える米国債全てを、現金と翌日物の現先取引に転換したことが明らかになった。

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JPモルガンは、債務上限が期日前に引き上げられた場合、ボラティリティは高まるが短期間で終わった、これまでの傾向に倣うだろうと予測。一方、Xデー前後に満期を迎える国債への投資は、避けることを提案している。

わずかな確率で起こりうるシナリオ2

JPモルガンは、テクニカルなデフォルトとなるシナリオは、過去に一度も起こったことはないが、わずかな確率で起こる可能性もあるとしている。

その際、政府が取りうる行動としては、教育や交通などの裁量に任された支出を犠牲にしてでも、債権者へ債務支払いを優先することだろうと予測している。しかし、何を優先すべきかの判断は非常に政治的で困難を極めるため、経済活動や金融市場のセンチメントに直接的な打撃となると指摘した。

また、債務上限引き上げ合意に至らず、Xデーを迎えた場合に、政府が取りうるその他の解決策について、JPモルガンは言及している。その一つが、バイデン政権が憲法の修正第14条を行使することだという。

修正第14条には「合衆国の公的債務の有効性は疑問視されてはならない」という条項があるため、財務省は「債務上限を無視して、政府債務の支払いを継続すること」が可能なのだという。

もう一つの“奇想天外”な対処法は、政府が大量の硬貨を鋳造して、米連邦準備制度理事会(FRB)に預け入れ、その資金で上限を引き上げることなく債務支払いを行うというものだ。

いずれの場合も「法廷で争われることになる」とJPモルガンは指摘。政府の信用低下につながり、経済成長と市場に大きな影響を与えると見ている。

このシナリオでの投資戦略として、同行は「国債のみを購入するマネー・マーケット・ファンド」を避けるよう勧めている。

実際デフォルトは起こるのか

JPモルガンは、第3のシナリオである「デフォルト発生」の確率はほぼ0%だと予想。デフォルトした場合、金融資産全てに大きな影響を与えるため、議会が行動し、債務支払いの再開と債務上限が引き上げられることなるためだという。

デフォルトすると政府の信用は失墜し、経済と市場には最悪の事態となる。このシナリオでは、リスク資産が最も大きな打撃を受けるため、投資戦略は「ヘッジが重要な鍵」となるという。金(ゴールド)、下落に対する保護の高い仕組み債、スイスフランや日本円、ユーロなどの避難通貨が、ポートフォリオをある程度保護する可能性があると指摘した。

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