SEC幹部、最近の執行措置を語る
米証券取引委員会(SEC)執行部ディレクターのグルビル・グレワル氏は16日、ニューヨークでラトガース大学法科大学院などが主催したイベントで講演。最近の暗号資産(仮想通貨)企業への執行措置について話した。
SECは慎重に規制に取り組んできたが、仮想通貨業界ではコンプライアンス(法的遵守)を考慮することなく事業を続ける傾向が見られたため、「戦略を変更する必要があった」と述べている。
SECは最近、コインベースやバイナンスなどに対して訴訟を起こすなど強制措置を加速させているところだが、この原因は、仮想通貨企業が法を遵守しないことにあると主張した形だ。
また、SECの姿勢については明確なガイドラインを提供する前に、強制措置で取り締まっており「強制執行による規制」を行っていると、SEC内外から批判する声もある。
グレワル氏は、こうした批判についても「仮想通貨市場の参加者やロビイストによって利用されている、キャッチーではあるが使い古された表現」だとした。
仮想通貨業界からは、米国で規制を明確化することを求める声が挙がっているところだが、グレワル氏は、これに対しても「たとえ特注のルールを考え出したとしても、業界全体の精神が、コンプライアンス違反を中心に構築されている」と発言した。
規制の有効性を疑問視する姿勢を示した格好だ。
SECとは
株や債券などの証券の取引を監督する米国の政府機関のこと。1934年設立。公正な取引の確保と投資家保護を目的としており、インサイダー取引や企業の不正会計、相場操縦などを防止する。仮想通貨が有価証券に該当するかという判断も行う。SECは「Securities and Exchange Commission」の略で、日本では「証券取引等監視委員会」が近い役割を担っている。
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海外機関とも提携
グレワル氏は、SECが仮想通貨業界の取り締まりを強化しているように見えるかもしれないが、それは、仮想通貨市場が低迷しており、リスクが増大しているためであるとした。リスクに対応するためにこれまで通り仕事をしているだけだと話している。
さらに、グレワル氏は「法律が許す限り管轄権を拡大していく」として次のように続けた。
私たちは多くの規制当局と、多大な協力関係にある。私たちはそうした当局と頻繁に会合を持ち、海外で証拠を収集する能力を高めるために、多くの当局と覚書を締結している。
海外の規制機関とも相互協定を結ぶことで、どこかの国や地域が規制上の抜け穴となるのを防ぐ意味もあるとしている格好だ。
グレワル氏は、DeFi(分散型金融)についても否定的な見解を述べた。DeFiは分散されておらず、金融サービスでもなく、むしろ詐欺的なものだとしている。
コインベースによる訴訟
コインベースはSECに提訴される一方で、規制制定の請願書への回答を求めて、SECに対して限定的な訴訟を起こしてもいる。
コインベースは2022年7月、SECに対し「実行可能な規制の枠組みの開発」を求めて請願書を提出したが9ヶ月を経ても回答が得られなかったため、4月にSECを提訴している。
控訴裁判所は、SECに対して、一週間以内に回答するよう命令したが、SECはこれを拒否したところだ。
コインベースは、特にFTX破綻後、仮想通貨業界に対するSECの姿勢が硬化したと指摘している。