身元確認なしの取引は違法
米資産運用最大手ブラックロックの戦略的エコシステム・パートナーシップ責任者であるジョセフ・チャロム氏は22日、機関投資家が分散型金融(DeFi)に参加する上で、相対取引における相手方(カウンターパーティ)の身元確認は必須だとの考えを示した。
米ニューヨークで開催された「State of Crypto Summit」にパネリストとして登壇したチャロム氏は、ブラックロックのような大規模な機関投資家にとって、「誰と取引しているかが最初の問題であり、それがわからなければ、刑務所行きのリスクもある」と述べ、現在のデジタル・アイデンティティのインフラが整備されていない状況は、機関投資家が参入するための大きな障害になると指摘した。
マネーロンダリング防止や顧客の身元確認 (KYC)の観点から、同氏は「誰がプールに参加しているのかを明確に理解する必要がある」と主張。DeFiの可能性は認める一方で、デジタル・アイデンティティ問題の短期的な解決については、楽観視していないと付け加えた。
トークン化普及の鍵
一方、トークン化の導入は「長期的にはエコシステムを形成する上で、非常に重要なものとなる」とチャロム氏は見ているようだ。その実現のためには、信頼性のある参加者と協力し、良いインフラを構築する必要があるが、そのような取り組みが自己強化されることで、資金が流入しトークン化が普及すると指摘した。
チャロム氏は、暗号資産(仮想通貨)業界が一定の資産を中心にまとまり、実際のユースケースを優先していく必要があると述べている。
ブラックロックの影響力
世界最大手の投資運用会社であるブラックロックは、昨年来、着実に仮想通貨業界参入の動きをとってきた。
同社のラリー・フィンク最高経営責任者は昨年3月、株主に宛てたメッセージの中で、グローバルなデジタル決済の有用性について語り、また顧客の関心の高まりに応えるため、デジタル通貨やステーブルコインとその基盤となる技術について研究していると述べた。
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同年4月、ブラックロックは米ドル建ステーブルコインUSDCを発行するサークル社に出資。また同月、仮想通貨・ブロックチェーン業界関連のETF(上場投資信託)がニューヨーク証券取引所「Arca」に上場した。
22年8月には、米大手仮想通貨取引所コインベースと提携することを発表。同社のポートフォリオ管理システムにコインベースの「Coinbase Prime」サービスを導入し、顧客にビットコインの取引やカストディ、市場データ提供サービスを開始した。
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そして6月15日、ブラックロックはビットコイン現物投資型の上場投資信託(ETF)を米証券取引委員会(SEC)に申請し、市場を驚かせた。この歴史的な動きを受けて、SECによるバイナンスとコインベースの提訴を受けて下落していたビットコインや暗号資産(仮想通貨)相場の市場価格は反転した。
世界最大の資産運用会社によるビットコインETF申請は、ビットコインの資産としての評価にお墨付きを与えるものである。
ブラックロックの申請後、すでに、米WisdomTree、Invesco、およびValkyrie Fundsによる新たに現物型ビットコインETFの申請が相次ぎ、米NY証券取引所傘下のNYSE Arcaは、Grayscale Bitcoin Trustを現物ビットコインETFへ変更する申請を行った。
SECは、これまで全てのビットコイン現物ETFの申請を非承認としてきた経緯があるが、ブラックロックは、過去575件のETF申請でSECの承認を得ており、非承認はわずか1件に留まるなど、ETFの運営では豊富な経験と実績を持っている。
ブラックロックの「iShares Bitcoin Trust」には、SECの懸念するビットコイン価格に関する市場操作の可能性を極力排除する内容も盛り込まれており、今後の展開が注目される。
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