米大統領選と仮想通貨
米国の著名投資家マーク・キューバン氏は11日、バイデン大統領が暗号資産(仮想通貨)業界のことを考慮しない場合、再選を目指す選挙に敗れる可能性があるとの趣旨で発言した。
Do you really think he understands anything about crypto? Beyond saying he made money selling NFTs?
— Mark Cuban (@mcuban) June 9, 2024
Neither of them does.
And I have said many times that Biden has to choose between Gensler or crypto voters or it could cost him the Whitehouse
キューバン氏は、ドナルド・トランプ氏もジョー・バイデン氏も両者ともに仮想通貨を理解してはいないと意見した。さらに、バイデン氏は「ゲンスラーSEC委員長か仮想通貨を支持する有権者か、どちらかを選ばなければならない」と続けている。
仮想通貨に批判的な姿勢を示している米証券取引委員会(SEC)委員長と歩みを共にする場合は、仮想通貨コミュニティからの票を失う可能性があると指摘した形だ。
トランプ氏は以前は独自NFT(非代替性トークン)をリリースしつつもビットコインなどには懐疑的だったが、最近は仮想通貨に肯定的な姿勢に転じている。大統領に就任できた場合は「バイデン氏とゲンスラー氏による仮想通貨反対運動は1時間以内に停止させる」とも発言した。
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ゲーリー・ゲンスラー氏が率いるSECは、コインベースやリップル社など様々な仮想通貨企業に対して、「有価証券を未登録で販売している」として訴訟を起こしてきた。
証券性などを判断する明確なガイドラインを提示することなく、「法的執行による規制」を行っているとして批判を招いてきた。
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バイデン政権が反対する2つの法案
さらに、ゲンスラー氏はバイデン政権と共に包括的な仮想通貨法案「21世紀のための金融イノベーション・テクノロジー法(FIT21)」への反対も表明している。
この法案は、ある仮想通貨トークンの証券性を判断するために、SECがこれまで参照してきた「ハウィーテスト」を用いず、プロジェクトが分散されている程度にもとづいて考慮するという内容を盛り込むものだ。
ハウィーテストとは
米国で行われる特定の取引が、投資契約による有価証券取引に該当するかどうかを判定するテスト。SECのW. J. ハウィー社に対する訴訟事件(1946年)に由来する。「共同事業であるか」「収益が他者の努力によるか」などを判定するが、仮想通貨という新しい資産に、ハウィーテストは適さないという声もある。
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ゲンスラー氏は、こうした方法では、仮想通貨プロジェクトがみずから分散化したシステムであると主張し、SECの監督を逃れられるようになる可能性があるとの懸念を表明している。
FIT21では、証券と判断されない仮想通貨は基本的に「コモディティ」として米商品先物取引委員会(CFTC)の監督下に置かれることになる。
背景として、米国では仮想通貨の監督権限をめぐりSECとCFTCの間で水面下の管轄権争いが存在しており、これまでのところはCFTCの方が仮想通貨に寛容な姿勢を示してきた。
なお、FIT21はバイデン政権の反対表明に関わらず下院を通過した。法案が今年成立する可能性は低いが、仮想通貨コミュニティの気運を高めている。
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バイデン氏は先月、SECが発行した仮想通貨の保管に関するガイドラインを覆す決議案へも拒否権を発動した。
このガイドラインは、銀行など金融機関が顧客の仮想通貨を預かるさいに、バランスシート上に「負債」とすることを義務付けるものだ。このために銀行には、その額を定期的に時価評価し対応する現金を保持する必要が生じる。
こうしたコストのために銀行による仮想通貨カストディ事業参入が妨げられると懸念されているところだ。決議案は両院で可決していたが、拒否権発動で成立が難しくなった。
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