ユーザー資産保護や取引監視の義務
韓国政府は19日、暗号資産(仮想通貨)ユーザー保護法を施行した。投資家保護に重点を置く、韓国初の仮想通貨規制枠組みとなる。
この法律は、韓国の仮想通貨サービスプロバイダーに、ユーザーの仮想通貨預金の少なくとも80%を、自社の資金とは別にコールドウォレットに保管することを義務付けるものだ。
コールドウォレットとは
仮想通貨を保管するための財布の役割を果たす「ウォレット」の中で、インターネットと完全に切り離されたものを指す。インターネットに接続していないため、ハッキングのリスクがなくセキュリティは高いが、電子上でやりとりする仮想通貨を頻繁に利用するユーザーにとっては利便性が低い。
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また、ユーザーの現金については認可を受けた現地銀行に委託すること、顧客の仮想通貨と同額・同種類の仮想通貨という形で準備金を維持することも求められる。
さらに、ハッキングや流動性危機に備えて、顧客資産を補償するために適切な保険に加入するか、準備金を積み立てることが義務付けられる。
その他、ユーザー保護法は未公開情報にもとづく取引や、価格操作、詐欺的な取引などの違法な市場行為を根絶することも目指す。
取引所は、違法の可能性がある取引活動を報告するリアルタイム監視システムを設置しなければならない。こうした新しい要件を遵守しない企業は、韓国の金融サービス委員会(FSC)によって罰金またはサービス停止などの措置を科される可能性がある。
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NFTガイドラインも発行
韓国は、今回の「仮想通貨ユーザー保護法」に関する法整備なども進めてきた。
6月には、NFT(非代替性トークン)とそれ以外の仮想通貨を区別するガイドラインを発表している。区別があいまいなNFTは、まず証券に当てはまるかどうか、次に仮想通貨に当てはまるかどうかを検討する方式だ。
一方で、絶対的な基準を設けずにケースバイケースで判断していくとしている。
また、同6月には「仮想通貨ユーザー保護法」に従う際の詳細な手続きなどを定めた新法案も成立した。
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世界七位の投資家数
韓国金融委員会の報告によると、同国内の仮想通貨投資家は2023年末時点で、645万人に達している。また、仮想通貨決済企業TripleAの推定では2023年時点で680万人で、世界7位だった。
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韓国政府は仮想通貨収益に対する20%課税を、2028年まで延期することを検討しているところだ。この背景にも、国内に多くいる仮想通貨投資家層の意見を考慮していることがあるとも指摘される。
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