*本レポートは、暗号資産取引所SBI VCトレードのクリプトアナリストである仮想NISHI(@Nishi8maru)氏が、CoinPostに寄稿した記事です。
ビットコインマーケットレポート(8月6日~8月12日)
ビットコインは7/29から8/5までの間で約2.1万ドル急落した。
トランプ大統領のビットコイン演説を追い風に一時7万ドルをつけたあと、日銀の利上げによる金利の低い日本円を原資とした投資資金の巻戻しに米雇用統計の悪化による景気悪化懸念が加わり、世界的に株価が急落。ビットコインはこれに連れ安となり一時4万9千ドル付近まで急落した。執筆時点では5万6千ドル付近。
足もと
ビットコインの成行注文のアクティブOI(未決済建玉)は急落前よりも増加している。(下画像赤枠)。ファンディングレートを見るとニュートラルなポジション(下画像青枠)であるが、ボラティリティが上昇する可能性がある。
外部環境
直近でビットコインは、株価と同時連れ安をしたものの2か月の期間では株価指数とは逆相関(S&P500▲0.41)になっている。
減産幅の縮小(増産)が発表されているオイルとは強い逆相関(▲0.83)となっており、またゴールドとは無相関(+0.04)になっている。米国債10年利回りと2年利回りの差が縮んできており(下画像青枠)、ビットコインの追い風となっている。
また、米時間5日オプション取引所(CBOE)のボラティリティ・インデックス(恐怖指数、以下VIX)が過去最大の上昇を記録し、一時65.73まで上昇、終値が38.57とコロナショック以来の水準となっている。
株式市場のボラティリティが高い時に、リスク回避のために、クリプト市場から資金を引き揚げる傾向が過去にも観測されており、今回のビットコインの急落の原因となった可能性がある。
一般的にVIXが20を下回ると株価のボラティリティが落ち着き価格差益を狙った投資家がクリプト市場への投資を強める傾向にある。今後のクリプト市場への資金流入を見るうえでVIXの動きが非常に重要な指標になると見受けられる。
現物市場
成行売買動向を見ると、本日未明より現物の強い買いが入っている(下画像赤枠)状況となっている。
デリバティブ市場
直近の急落により、デリバディブ市場では取引価格が現物価格よりも低い売られすぎの状態が強く出ている(下画像赤枠)。先物価格が現物価格よりも低い「バックワーデション」の取引所もいくつか見受けられ(下画像青枠)需給はかなりひっ迫していると見受けられる。
オプション市場
現物渡しで取引されるオプション市場では、現在価格(5万7千ドル)より高い価格帯である10万ドルに建玉が集中(下画像赤枠)しているものの、PCRレシオが急上昇(下画像青枠内黄線)しており、市場参加者の態度はかなり弱気に変化していると捉えることができる。
オンチェーン環境
ハッシュレートは若干低下しており、次回難易度予想は▲2.07%の易化予想。直近のクリプト指標
8月6日:豪政策決定会合
米貿易収支 公表
8月9日:メキシコ政策決定会合
クリプト指標導入のCoinPostアプリをDL
総括
ビットコインの直近の急落は、以下の3点が主因として挙げられる。
①日銀の金利引き上げにより、以前まで調達コストが安い円を借りてドルを買い海外資産を購入するという取引の解消
②FRBの金利引き下げ観測による円高加速
③米雇用統計の悪化
による景気悪化懸念である。
ただしビットコインは急落したものの、足もとでは需給がひっ迫しておりショートカバー(売りの買戻し)の懸念があるほか、中期的にはVIXが低下し市場の落ち着きが取り戻せるかが焦点となっている。
画像出典:Tainoko Lab(https://x.com/btc_status)
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