はじめての仮想通貨
TOP 新着一覧 チャート 学習-運用
CoinPostで今最も読まれています

米政府によるトルネード・キャッシュへの制裁、米連邦控訴裁判所が地裁判決覆す

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

仮想通貨業界の勝利

米第5巡回控訴裁判所は26日、米財務省の外国資産管理局(OFAC)が暗号資産(仮想通貨)ミキシングサービス「Tornado Cash(トルネード・キャッシュ)」へ科した制裁は違法であるとして、昨年8月の連邦地裁の判決を覆した。

トルネード・キャッシュのユーザー6人が原告となり、米財務省とOFAC、ジャネット・イエレン財務長官らを提訴したこの訴訟は、米大手取引所コインベースが支援している。

同取引所のポール・グレウォル最高法務責任者は、この判決を「仮想通貨と自由の保護を大切に思うすべての人々にとって、歴史的な勝利である」と述べた。「政府の権限の濫用は許されない」という意義があるとした。

コインベースが支援した開発者・投資家グループによる、Tornado Cashへの制裁措置を巡る訴訟では昨年8月、米テキサス州西部地区連邦地方裁判所のRobert Pitman判事は、米財務省の制裁は適法であるとの判断を下している。

ミキシングサービスとは

仮想通貨の取引データを複数混ぜ合わせることによって、その仮想通貨の出所や保有者の身元を匿名化するサービス。

▶️仮想通貨用語集

今回、3人の裁判官から成る控訴裁判所の審理委員会は、OFACがトルネード・キャッシュの変更不可能なスマートコントラクトを制裁対象としたのは、同機関の「法的権限を超越した行為」との判断を示し、原告らの主張を認めた。

OFACには、国際緊急経済権限法(IEEPA)により、米国の国家安全保障に対する脅威と見做された外国勢力に対し、資産凍結などの制裁措置を与える権限が委任されている。

IEEPAは1977年に制定された米国連邦法であり、大統領に特定の金融取引を規制および禁止する権限を与えている。

しかし、トルネード・キャッシュのスマートコントラクトは、「一般的な通常の意味においても、OFACの定義においても”財産”ではない」と裁判所は判断。IEEPAの下では制裁できず、OFACは、その法的権限を逸脱したと述べた。

関連:米コインベース、トルネードキャッシュ制裁に反対する訴訟を支援

司法と議会の役割

控訴裁判所は、「OFAC の制裁権限の及ばない、制御不可能な特定の技術が現実世界にもたらすマイナス面については、即座に認識している。」と、インターネット時代前に制定されたIEEPAの法的限界に言及する一方で、「議会が締結した法的取引は遵守すべきであり、手直しを加えるべきではない」という姿勢を強調した。

判事らは、法律の解釈については厳格である必要があるが、「トルネード・キャッシュが独立した存在(entity)であるか否か、また変更不可能なスマートコントラクトに対して利害があるか否か」については、立法府である議会が判断することであり、裁判所が言及する必要はないと述べている。

法令の盲点を補ったり、その破壊的な影響を和らげたりすることは、私たちの管轄外である。私たちは、解釈を装って議会の成果を修正するという司法立法への誘いを断る。

訴訟の経緯

2022年8月、OFACはトルネード・キャッシュがサイバー犯罪者による資金洗浄を阻止する措置やリスク対策を怠ったとして、制裁対象者リスト(SDN)に指定した。同時に44のトルネード・キャッシュ関連のスマートコントラクトアドレス(イーサリアムおよびUSDコイン)も制裁リストに加えられた。

OFACは同年11月、トルネード・キャッシュが北朝鮮政府が支援するハッカー集団ラザルスの資金洗浄にも協力しているとして、改めて北朝鮮関連の制裁対象に指定した。

トルネード・キャッシュのユーザーであった6人の仮想通貨開発者と投資家グループは、財務省がトルネード・キャッシュを制裁したのは、その権限を超越した行為だとして提訴。コインベースはこの訴訟に資金を提供する形で支援している。

コインベースは、「OFACによる制裁は、罪のない人々を傷つけ、仮想通貨ユーザーのプライバシー保護やセキュリティの選択肢を奪い、イノベーションを阻害するものだ。」と主張。同社のアームストロングCEOは、財務省は「技術」を制裁しており、議会から同省に与えられた権限を超えていると批判した。

2023年8月、この訴訟を扱ったテキサス州西部地区連邦地方裁判所は、トルネード・キャッシュは独立した存在(entity)であり、スマートコントラクトに対して財産権を有するとの判断を下し、原告らの主張を退けた。

コインセンターの訴訟

OFACの制裁に対しては、仮想通貨業界からも非難の声が上がり、米シンクタンク「Coin Center(コインセンター)」は、この件に関する分析レポートを公開し、OFACが、自発的なコードを人間のように扱ったことは、法定権利を超えていると指摘した。

コインセンターは2022年10月、トルネード・キャッシュを制裁したのは権限を逸脱し、憲法修正第1条に違反したとして、ジャネット・イエレン財務長官、財務省、OFAC、当時のアンドレア・ガッキOFAC長官を相手取り訴訟を起こした。

この訴訟はその1年後に、地方裁判所の判事により棄却されたが、コインセンターは米国第11巡回区控訴裁判所に控訴。現在も係争中だ。

関連:米政府のTornado Cash制裁、仮想通貨シンクタンクは違憲の可能性を指摘

ブテリン氏がコインセンターに寄付

ブロックチェーンデータによると、イーサリアムの共同創設者であるヴィタリック・ブテリン氏が26日、320ETH(執筆時価格で1億7,490万円相当)を、コインセンターに寄付したことがわかった。

ブテリン氏は、訴訟には直接関与していないが、トルネード・キャッシュと、苦境に立たされている開発者に対し、明確に指示を表明している。

同氏はOFACによる制裁直後に、自身が同サービスを利用してウクライナに寄付したと公に発言。また、トルネード・キャッシュ開発者のアレクセイ・ペルツェフ氏とローマン・ストーム氏の弁護基金に30ETHを寄付した。

関連:米司法省、トルネードキャッシュ創設者を起訴 1400億円超のマネロン幇助容疑

厳選・注目記事
注目・速報 市況・解説 動画解説 新着一覧
03/29 土曜日
13:45
イーサリアム創設者ヴィタリック、L2セキュリティの進化と「2-of-3」証明システムを提案
ヴィタリック・ブテリン氏が新たなブログで、L2セキュリティの現状と将来展望を公開。ブロブスペース拡張、ZK・OP・TEEを組み合わせた「2-of-3」証明システム、証明集約レイヤーの必要性について詳細に解説。
12:55
南カロライナ州で新たにビットコイン準備金法案提出 対コインベース訴訟取り下げも
米国サウスカロライナ州が、コインベースへのステーキング関連訴訟を取り下げた。また同日には州がビットコインなど仮想通貨の準備金を持てるようにする法案が提出されている。
10:45
ブラックロックのビットコインETFを保有、トランプ大統領の息子が顧問の米上場企業
米ドミナリ・ホールディングス社がビットコイン保有戦略を開始し、ブラックロックのETFを購入。機関投資家の仮想通貨投資最新動向は。
10:00
欧州保険・年金機構(EIOPA)、保険会社が仮想通貨を100%裏付ける義務提案
EIOPAが保険会社の仮想通貨保有に100%の資本要件を提案。高リスクに対応するためとしている。欧州では特にルクセンブルクで保険会社の仮想通貨エクスポージャーが確認されている。 。
09:30
SEC、イーロン率いる政府効率化省(DOGE)と連携開始
米証券取引委員会(SEC)がイーロン・マスク氏の政府効率化省(DOGE)との連携を開始。トランプ政権下での規制機関改革と仮想通貨政策転換の最新動向を解説。
08:30
ビットコイン80万円下落、BTCメジャーSQ通過で需給悪化|仮想NISHI
仮想通貨ビットコインは前日比で一時80万円の下落となった。アルトコイン市場も、ビットコインの急落に連動するかたちでほぼ全面安の展開となった。
07:45
トランプ大統領、仮想通貨取引所BitMEXの共同創設者3名に恩赦
トランプ大統領は、アーサー・ヘイズ氏ら仮想通貨取引所BitMEXの3名の共同創設者に恩赦を与えたことがわかった。同氏らは、意図的にマネーロンダリング対策を導入せず銀行秘密法に違反したと告発されていた。
07:15
アバランチ現物ETF、米グレースケールも申請
VanEckの後に申請 米ナスダックは3月27日、グレースケールのアバランチ(AVAX)現物ETFに関する19b-4申請書を米証券取引委員会(SEC)に提出した。この申請は、既…
07:02
ブラジル政府高官「ビットコイン準備金は国の繁栄に不可欠」
ブラジル副大統領首席補佐官がビットコインを「デジタルゴールド」と評価し、国際準備金の5%をビットコインに投資する法案を支持する。
06:40
イーロン・マスク氏、人工知能開発のXAIがX社を買収と発表 企業価値16兆円超の巨大統合に
イーロン・マスク氏が率いるAI企業XAIが旧ツイッター社X社を全株式交換で買収。XAIを800億ドル、X社を330億ドルと評価する統合により、AIとソーシャルメディアの融合を目指す。
06:15
Bybitハッカー、40億円相当のイーサリアムを売却 ETH価格は前日比6%安
Bybitハッキング犯による40億規模のイーサリアム大量売却が仮想通貨に影響。ETHが前日比-6.3%。
03/28 金曜日
13:15
イーサリアム「ペクトラ」の実装日が4月30日と仮決定、次期「フサカ」の動向は?
カオスつうかイーサリアムのコア開発者ティム・ベイコ氏が「ペクトラ」アップグレードの実装日を4月30日と仮決定。次期開発に関しても進捗が確認された。
11:30
米司法省、ハマス関連の仮想通貨約3000万円を押収 資金調達を阻止
米司法省が、イスラム系組織ハマスからUSDTなどの仮想通貨を20万ドル相当押収した。ハマスは仮想通貨による寄付募集やマネロンを行っていたとみられる。
10:50
リップル社、アフリカの決済企業Chipper Cashと提携
リップル社は、アフリカの決済企業Chipper Cashとパートナーシップを締結。仮想通貨を活用するリップルペイメントを導入し、アフリカにおける国際送金の速さやコスト効率を向上させる。
10:45
トランプ指名のアトキンス氏が仮想通貨規制方針示す SEC委員長指名公聴会で
米上院銀行委員会が、次期SEC委員長候補ポール・アトキンス氏の公聴会を開催した。ウォーレン議員が利益相反の可能性を追及した他、仮想通貨関連の議題も俎上に上った。

通貨データ

グローバル情報
一覧
プロジェクト
アナウンス
上場/ペア
重要指標
一覧
新着指標
一覧