ビットコインの強み
ビットコインとブロックチェーンのインフラ開発をリードするBlockstream社の創設者であり、サトシ・ナカモトと交流のあったことで知られるアダム・バック氏が、株式会社CoinPostの独自インタビューに応じ、ビットコインのレイヤー2(L2)技術からビットコイン準備金、日本市場の展望などについて自身の考えを語った。
バック氏は、ビットコインが誕生する以前にも電子キャッシュシステムは存在したが、ビットコインには決済用の電子マネーとしてだけではなく、デジタルゴールドと通貨という側面が付け加えられたため、ビットコインの採用が促進されたと指摘した。
ビットコインの強みは、決済とともに貯蓄や投資という手段も提供していることであり、「貯蓄は非常に重要なユースケースかもしれない」と語った。
ビットコインが貯蓄技術と投資の両方であると同時に、無記名取引の電子キャッシュでもあるということは、実際、有益なことだと思う。
ビットコインの普及と価値
バック氏は、サトシ・ナカモトから世界初のビットコイン取引を受け取った人物として知られるハル・フィニー氏が、ビットコインは将来、価値が高まる可能性があるため、ビットコインを買うべきだと提案していたと語る。
まだビットコインに値段もつかない最初期に、フィニー氏は「ビットコインがお金に取って代わった場合、200兆ドル(3.1京円)の市場規模となり、1BTCあたり1,000万ドル(15.5億円)の価値を持つようになる」という見解を示していた。
2009年当時、このような考えは、あまりにも投機的な想定だと思われていたが、現在、ビットコインが大きな発展を遂げ、このビジョンに「誰も予想していなかったほど、ずっと早く近づいている」事実に、多くの人が興味深いと感じているとバック氏は述べた。
ビットコインが時間の経過とともに、さまざまなタイプの投資家を巻き込むようになったのは興味深い。
Blockstream社が創設された2014年、金融機関はビットコインに見向きもせず、規制当局がどのように対処するかも不明瞭だった。しかし、数年のうちに、銀行はビットコインとブロックチェーン技術を理解するためのリサーチを開始。その数年後には資産としてのビットコインに目を向け始め、ETFや先物オプションなどビットコイン関連製品を提供し始めた。
バック氏は、ビットコインの採用は予想より早く進んだと考えている。
戦略的準備金としてのビットコイン
バック氏は、今後、ビットコインが普及する上で、企業や政府による戦略的準備金としてのビットコイン保有が主な原動力になるとの考えを持っている。
Blockstream社は、初期投資としてビットコインを購入し、バランスシートにビットコインを保有する最初の企業の一つとなった。それは、ビットコインのL2技術を構築する同社にとって、ユーザーにとってビットコインの価値と有用性が向上することを踏まえた「理にかなった」選択であり、「良いアイディアだ」と述べた。
企業の財務戦略として大量のビットコインを保有するのが、米マイクロストラテジー社だ。ビットコインの継続的かつ強気のビットコイン投資戦略によって、同社の株価は急騰し、米ナスダック100指数にも正式に追加されることとなった。
マイクロストラテジーは、それが上場企業にとって、株主価値を提供する興味深い方法になり得ることを示している
バック氏は、日本企業でマイクロストラテジー社と同様のビットコイン投資戦略を開始したメタプラネットに言及。「非常にうまくいっているようだ」とコメントした。
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ビットコインの2025年価格予想とボラティリティ
バック氏が2024年初めに予想したビットコインの10万ドル到達は的中した。2025年の価格予想について尋ねられると、同氏は、現在の市場は「米国のビットコイン準備金」が実現することを確信していないため、価格に反映されていないとの考えを示した。
エルサルバドルはすでにビットコインを蓄積しているが、より大きな国がビットコインを蓄積し始めると、ゲーム理論により、取り残されることを憂慮した国々が競争し始めるため、価格に大きく影響すると主張した。
国庫準備金や複数の国がビットコイン国債を購入する動きが活発化すれば、人々が予想するよりもはるかに早く100万ドルのビットコインが見られるようになる可能性は十分にあると思う。
また、新たなタイプの投資家が市場に参入し採用が急速に進んでいることもあり、ビットコインの価格理論やモデルは実際にはあまり意味がなく、「ビットコイン価格は何でも可能」と考えていると述べた。
一方、急速に普及するものには、ボラティリティがつきものであり、政府の参入によって安定するとは限らず、単に規模が大きくなる可能性が高いと指摘した。
仮想通貨投資初心者へのアドバイス
バック氏は、仮想通貨投資の初心者に対して、「最もシンプルで安全なのは、ビットコインを購入し、コールドストレージで保管し、決して売らないこと」とアドバイスした。
その理由として、ビットコイン価格は非常に不安定で、取引が非常に難しいと指摘。一般投資家は、感情的になって価格の下落場面で売却し、その後価格が上昇し市場から締め出されてしまうリスクがあると説明した。
取材スタッフ: Una Softic
プロフィール
AIとフィンテックを専門とするプロフェッショナル・サービス会社Intertangibleのマネージング・ディレクターで、CoinPostのパートナーシップ責任者を務める。
元日経新聞グローバル・テクノロジー・プログラム・リーダー。技術系スタートアップ企業の役員・戦略アドバイザーでもある。