
米ドルのリスク
米資産運用大手ブラックロックのラリー・フィンクCEOは3月31日、投資家への2025年のメッセージの中で、米国の債務が増加している現状に警鐘を鳴らした。
もし、このまま米国の債務が増加し続けて制御できなくなれば、米ドルの準備通貨の地位が、暗号資産(仮想通貨)ビットコイン(BTC)のようなデジタル資産に奪われるリスクがあると述べている。
「投資の民主化」と題された今回のメッセージは、PDFにすると27ページに及ぶ。この中でフィンク氏は、「ビットコインが米ドルの準備通貨に取って代わる可能性があるか」という項目で上述の内容を記した。
米国は、米ドルが世界の準備通貨としての役割を維持してきたことで数十年にわたって恩恵を受けているが、これが永遠に続く保証はないとフィンク氏は指摘。米タイムズスクエアの「借金時計」が1989年に動きだしてから、米国の債務残高はGDP(国内総生産)の3倍の速さで増え続けているというデータを引用した。
そして、フィンク氏は以下のように述べている。
私はデジタル資産の反対派ではないが、2つのことが同時に起こる可能性がある。1つはDeFi(分散型金融)のイノベーションだ。DeFiは金融のスピードを速め、コストを下げ、透明性を向上させることができる。
しかし、投資家がビットコインを米ドルよりも安全な資産だとみなし始めれば、DeFiのイノベーションが米国の経済力を弱めてしまう可能性がある。
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トークン化のメリット
今回フィンク氏は、上記の内容に続けて、ブロックチェーンを使ってRWA(現実資産)をトークン化するメリットにも言及した。
従来の証券取引所や決済の仕組みは全てトークン化の技術によって変革できるとし、現在のSWIFT(国際銀行間通信協会)の仕組みを郵便サービスと例えれば、トークン化はEメールだと主張。トークン化すれば、速く資産を送れるようになるとし、仲介者を不要にできるとも述べている。
フィンク氏は、株や債券、ファンドなどあらゆる資産はトークン化することができると主張。そして、トークン化によって投資を変革できると説明している。
具体的には、市場を24時間運営させたり、数日かかっている取引を数秒で実行したり、資金の効率性を高めたりすることができると指摘。そして、最も重要なこととして、トークン化は小口投資を可能にすることなどから、投資を民主化できるとも述べた。
RWAとは
「Real World Asset」の略。ブロックチェーン上でトークン化されるRWAには不動産、アート作品、トレーディングカード等の実物資産、株や債券等の有価証券などが含まれる。
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