はじめての仮想通貨
TOP 新着一覧 チャート 学習-運用
CoinPostで今最も読まれています

ビットコイントレジャリー戦略の魅力と落とし穴──投資家の視点で読み解く

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

ビットコイントレジャリー戦略の台頭

投資ストラテジストのLyn Alden氏は「ビットコイン株と債券の台頭」と題したレポートで、ビットコイン(BTC)レジャリー戦略が注目を集める理由について解説した。

ビットコインを財務資産として採用するビットコイントレジャリー戦略は、2020年に米ストラテジー社(旧マイクロストラテジー)によって初めて導入された。2023年の米国財務会計基準審議会(FASB)によるビットコインの会計処理改訂や市場の変動を経て、2024年から2025年にかけて企業による採用が加速している。

Alden氏は投資家の観点から、ビットコイントレジャリー企業の株式投資を選ぶ主な理由として、以下の二つを指摘した。

  • 投資ルール(マンデート)の制約を回避する手段として
  • 企業ならではの効率的なレバレッジ活用

世界で運用されている資産は数兆ドル規模に上るが、その中には厳格な投資のルールを伴うものもある。例えばポートフォリオの管理者に株式のみの購入を条件とするファンドや、債券のみの購入だけ許可するファンドなどが多く存在する。

つまり多くのファンドでは、運用上の制約により、ビットコインを直接保有することはできない構造になっている。しかし、ビットコインを保有する企業の株式や転換社債を購入することで、ビットコインへ間接的に投資することが可能になる。

Alden氏は、2020年に自身のモデルポートフォリオに、マイクロストラテジー(MSTR)の株式を購入することで、ビットコインへのエクスポージャーが可能になったという実例を紹介した。当時、当該ポートフォリオのブローカーはビットコイン関連証券へのアクセスが限られていたが、ナスダック上場のMSTRを通じて投資が可能となった。約5年が経過した今、同氏はこの投資について「素晴らしい判断だった」と語っている。

このように、ビットコイントレジャリー戦略は、投資方針の制約を持つファンドマネージャーや投資家に、ビットコイン市場へのアクセスを提供する手段となっている。

関連:ビットコインと仮想通貨関連株はどちらを買うべき?メリット・デメリットを解説

長期的なレバレッジの活用

企業は、ヘッジファンドやレバレッジETFとは異なる、長期的なレバレッジを活用することが可能だ。例えば、企業は数年単位の長期社債を用いてビットコインを購入することで、価格下落時の強制売却リスク(マージンコール)を回避しやすくなる。

一方、ヘッジファンドが通常利用しているマージンローンは、資産価格が大幅に下落すると強制売却のリスクが高まる。

また、レバレッジ商品は長期的なリターンが期待を下回ることがある。実際、大きな上昇が期待されていた2倍レバレッジのビットコインETFである「BITU」は、ビットコイン価格の上昇にもかかわらず、ビットコイン自体のリターンを上回ることはなかった。

長期的な視点を持った投資家にとっては、企業のビットコイントレジャリー戦略は、効率的でリスクが少ない手段になり得る。

ビットコイントレジャリー企業の抱えるリスク

一方、ビットコイントレジャリー戦略のリスクを指摘する専門家もいる。リサーチ主導の暗号資産(仮想通貨)ブローカー「K33」の最高経営責任者であるTorbjørn Bull Jenssen氏は、ビットコイントレジャリー企業がビットコイン保有によるビットコイン利回りの追求のみに依存することの危険性に警鐘を鳴らした。

Jenssen氏は、「オペレーショナル・アルファ(operational alpha)」がなければ、ビットコイントレジャリー企業のプレミアムは崩壊すると主張している。この場合のオペレーショナルアルファとは、単なるビットコインの保有を超えて、財務戦略や運営面での卓越性によって企業価値や収益性を向上させ、付加価値を生み出す能力を指す。

ほとんどの投資家が市場での現物取引またはETFを通じてビットコインを直接購入できる中、「ビットコインの純資産価値を大幅に上回る価格で取引されている上場企業」に投資する理由とは何か。それは「個人投資家が容易に模倣できない方法で、ビットコインを活用する明確な戦略」だと同氏はいう。そして、その明確な戦略が欠けている企業には投資すべきではないと警告する。

関連:なぜ今、暗号資産なのか?国家レベルで進む金融システム変革

ビットコイン利回り=事業計画ではない

ビットコイントレジャリー企業のプレミアムについて、一部のアナリストはビットコイン利回り(1株当たりのBTC保有量の増加)という概念を用いるが、これだけではビットコインの純資産価値(NAV)に対するプレミアムを正当化できないと、Jenssen氏は主張する。

多くの企業が転換社債などを通じて資金調達をしているが、これは「レバレッジをかけたロングポジション」にすぎない。そして、その上昇余地は限られているため、投資額に対するビットコインへのエクスポージャーを最大限に高めることが目的であるならば、ビットコインを直接購入すべきだと指摘する。

例えば、ビットコイン価格が下落した場合、企業は債務返済に充てるために、ビットコインを売却せざるを得なくなる可能性がある。一方、ビットコイン価格が上昇した場合には、債権者は割引価格で債務を株式に転換し、転換価格を上回る価格で売却する。そのため、本来、株主が得るべきだった利益は債権者のものとなる。

株主はリスクを負うが、株価上昇時の果実は債券者に奪われてしまう。Jenssen氏は、この構造こそが、債権 者がこのような金融商品の引き受けに熱心である理由だと説明した。

関連:セイラー率いるストラテジー社のビットコイン戦略を徹底分析=VanEck

CoinPost App DL
厳選・注目記事
注目・速報 市況・解説 動画解説 新着一覧
07/10 木曜日
14:17
日本国内の仮想通貨取引所が急成長、SBIVCの顧客預かり資産が8ヶ月で2.5倍の5000億円に
SBI VCトレードが預かり資産5,000億円突破を発表した。DMM Bitcoinの顧客移管のほか、仮想通貨の価格上昇、トランプ政権期待による新規参入が成長を牽引。わずか8か月で2.5倍の急拡大を実現し、国内暗号資産市場の拡大を象徴する動きとなっている。
14:00
懐疑派ウォーレン議員、トランプ政権批判で仮想通貨市場規制強化案を提案 ガーリングハウスCEOの証言にも注目
米上院のウォーレン議員が仮想通貨市場規制に向けた5つの原則を発表した。証券法の維持、投資家保護、金融システム安定性確保などを重視し、共和党によるイノベーションを重視した指針とは対照的な内容となっている。
13:30
エミレーツ航空が仮想通貨決済導入へ、来年から利用開始予定
エミレーツ航空が取引所クリプトドットコムと提携し、仮想通貨決済システムの統合を発表。来年の導入を目指し、顧客の支払い選択肢を拡大する。
13:00
ビットコイン、長期保有者の割合が74% 15年ぶりの高水準に=ARK Invest
ARK Investが仮想通貨ビットコイン市場の最新レポートを発表。長期保有者の割合が74%と15年ぶりの高水準を記録したと指摘した。また、ビットコインドミナンスも上昇している。
11:49
ビットコイン過去最高値更新 機関投資家の買いが相次ぐ中、アルトコインの買い戻し進む
ビットコインが史上最高値の111,320ドルを更新。機関投資家による大規模な資金流入が続く中、ETF市場では7月だけで45億ドルが流入。イーサリアムやXRP(リップル)などアルトコイン市場にも上昇の波が波及し、幅広い暗号資産が堅調な回復基調を示している。
11:12
BNBトレジャリー設立、10XキャピタルとYZiが協力し米上場目指す
YZiラボ(元バイナンスラボ)が10Xキャピタルと連携し、BNBトレジャリー会社設立を発表。米取引所での上場を目指し、BNBチェーンエコシステムに焦点を当てた投資機会を提供する。
10:11
米SEC、PENGU現物ETF申請を受理 ミームコインETFに追い風か
米証券取引委員会がカナリーPENGU現物ETF申請を受理。新ルール整備により秋頃に多くの仮想通貨現物ETF承認の見通し。
09:40
ギリシャ、Bybitハッキングで盗まれた仮想通貨の一部を回収 同国初
ギリシャ当局がBybitハッキング事件で盗まれた仮想通貨の一部を回収した。北朝鮮ハッカー集団「ラザルス」が盗んだ資金の追跡でブロックチェーン分析技術を活用している。
09:20
「証券はトークン化しても証券」米SECのパース委員
米SECの仮想通貨タスクフォースを率いるへスター・パース委員は、トークン化された証券は証券に分類されると発表。ブロックチェーン技術の可能性を認めながらも、原資産の性質を変えることはできないと指摘した。
09:00
ビットワイズCIO、証券トークン化が主要仮想通貨銘柄の価格に与える影響を予測 ETH・XRP・SOLなど
ロビンフッドやクラーケンのトークン化株式取引開始を受け、ビットワイズアナリストがETH、SOL、XRP、LINKなど関連仮想通貨への価格影響を分析。ロビンフッドの株価はATHを更新している。
08:35
ビットコイン11万2千ドル突破で史上最高値更新、エヌビディア追い風に上昇|仮想NISHI
仮想通貨ビットコインは7月10日、11万2,000ドルを上回り、史上最高値を更新した。来週7月14日の週は「仮想通貨週間」として米下院が3つの主要法案を審議予定。可決されればビットコインに追い風となる可能性がある。
07:35
米上場シャープリンク、新たに5000ETHを追加購入 保有額850億円超え
ナスダック上場のシャープリンクゲーミングが5000ETH追加購入。総保有額852億円のイーサリアム投資戦略を継続拡大。
07:05
ソラナ対応のトークン化株式「xStocks」、BNBチェーンに拡大へ
仮想通貨取引所クラーケンとBackedは、BNBチェーンと戦略的パートナーシップを締結。ソラナ対応のトークン化株式のxStocksをBNBチェーンに拡大する。
06:55
分散型取引所GMX、約60億円の仮想通貨不正流出発生 V1版GLPプールに脆弱性か
仮想通貨取引所GMXのV1版GLPプールがハッキング被害に遭い61億円が流出。影響の範囲や運営の対応、今後の対応方針が明らかに。
06:40
米サムザップメディア、ビットコイン以外の主要仮想通貨6銘柄への投資戦略拡大を承認
ソーシャルメディアマーケティング企業サムザップメディアが取締役会でドージコイン、イーサリアムなど6種類の仮想通貨への投資戦略拡大を承認。

通貨データ

グローバル情報
一覧
プロジェクト
アナウンス
上場/ペア
重要指標
一覧
新着指標
一覧