
日本の税制を変えるポイントは?
大型Web3カンファレンス「WebX」では26日、コインチェックの親会社であるマネックスグループの松本大会長が登壇し、デジタル資産を活用した金融業界の変革戦略について詳細を語った。
タイトルは「金融業界に革命を:マネックスが挑むデジタル資産の未来」。聞き役はCoinPostの事業開発部長であり、WebX2026のCEOに就任する酒井良氏が務めた。
「WebX」は国内最大手のWeb3メディア「CoinPost」を運営する株式会社CoinPostが企画し、一般社団法人WebX実行委員会が主催するWeb3カンファレンスで、今年は8月25日と26日に「ザ・プリンスパークタワー東京」で開催された。
日本の規制
松本氏は、アメリカのトランプ政権下で進むブロックチェーン技術を活用した金融システムのアップデートに注目し、日本も同様の方向性を取る必要があると指摘。
松本氏は、債券が紙の券面からデジタル化されたように、株式や不動産などあらゆる金融商品がトークン化される時代の到来を説明。AI技術の発展により、日本独自の規制では国際競争力を維持できないとし、近未来では日本の規制もアメリカと同じになると予測した。
日米事業のシナジー
東証プライム上場のマネックスグループと米ナスダック上場のコインチェックグループのシナジー効果について、松本氏は現時点では限定的としながらも、将来の規制統合を見据えた戦略的意義を強調。コインチェックが海外で蓄積するノウハウを、日本のマネックス証券などに活用する時間軸を伴ったシナジーを描いた。
機関・個人投資家の差〜税制問題
機関投資家の動向では、日本の機関投資家は参入が遅い一方で、参入時は巨大な規模になる傾向があると分析。1980年代のデリバティブや証券化商品でも同パターンが見られたとし、仮想通貨でも来年頃から機関投資家が動き始めると予想した。
個人投資家にとって最大の課題である税制について、現在の総合課税(最大55%)から2027年1月の分離課税20%への変更提案を歓迎しつつ、松本氏は独自の提案を展開。売買時に1%を徴収する取引税方式が、利用者にとって分かりやすく、国の税収確保にも効果的だと主張した。
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コインチェックの事業戦略
コインチェックの事業戦略では、メルカリとの提携による顧客基盤拡大とIEO事業での質の高さを維持する方針を表明。企業向けには財務戦略支援やカストディサービス、ステーキングサービスの強化を通じて、単純な売買プラットフォームから総合的なデジタル資産サービスへの進化を目指している。
会計に革命を
松本氏が最も注目するのは、ブロックチェーン技術による会計業務の革命だ。オンチェーンでの資金管理により経理業務が自動化され、リアルタイムで透明性が確保される未来を描く。現金をなくし法定通貨をオンチェーン化することで、不正会計の根絶と業務効率化が実現すると語った。
金融業界のデジタル変革は避けられない潮流であり、マネックスグループはこの変化を先導する戦略を展開している。税制改正やブロックチェーン活用による業務革命を通じて、従来の金融サービスを根本的に変える時代が到来しつつあるとした。
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▼登壇者概要
松本大(マネックスグループ会長)
マネックスグループは、日米でリテール向けのオンライン証券を運営する大手オンライン金融グループ。2018年にコインチェックを買収し、仮想通貨事業も中核的事業にしている。
松本氏は1994年、史上最年少の30歳でゴールドマンサックス・パートナーに就任。その後、1999年にソニーとの共同出資でマネックスを設立した。政府のガバナンス改革関連会議等に参加した経験も持ち、現在は米マスターカードの社外取締役も務める。
酒井良(CoinPost事業開発部長)
2024年2月にCoinPostに入社し、同年10月から現職。前職では、ソフトバンクの事業開発部門で勤務した。WebX2026のCEOに就任。