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AIと仮想通貨がもたらすサイバー空間の新たな脅威|WebX2025で語られた国家安全保障・金融リスク

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

サイバー犯罪にテクノロジーが果たす役割

大型Web3カンファレンス「WebX」では8月25日、「クリプト・サイバーリスク: 国家安全保障、金融、Web3」をテーマとしたパネルセッションが開催された。このセッションでは、金融犯罪や暗号資産(仮想通貨)犯罪を助長すると同時に防止にも役立つという二面性を持つテクノロジーの使用に焦点が当てられた。

新興テクノロジーを専門とするプロフェッショナルサービス企業「Intertangible」のマネジング・ディレクター、Una Softic氏が司会を務め、以下の4人がパネリストとして登壇した。

  • Beju Shah氏(国際決済銀行、北欧地域イノベーションハブ責任者)
  • Sungyong Kang博士(インターポール金融犯罪・汚職対策センター・犯罪情報担当官)
  • Arda Akartuna博士(Elliptic:アジア太平洋地域暗号脅威インテリジェンス担当リーダー)
  • Carol House氏(元ホワイトハウス顧問、Penumbra Strategies CEO)
  • Una Softic氏(プロフェッショナルサービス企業Intertangibleのマネージングディレクター兼CSO)

Una Softic氏

サイバー犯罪と金融犯罪の融合

セッションの冒頭では、当日出席できなかったBeju Shah氏によるビデオメッセージが披露された。

Shah氏は、近年、サイバー犯罪と金融犯罪は密接に結びつき、特に過去18か月でその傾向が加速していると指摘。今や、多くのサイバー犯罪は同時に金融犯罪でもあり、金融システムの安定性、信頼性、そして社会の信用を脅かす深刻な問題となっていると述べた。

Beju Shah氏

仮想通貨やブロックチェーン技術が主流になるにつれて、世界全体での被害額は2015年から3倍に膨れ上がったと推定され、ランサムウェアの被害や支払額も増加傾向にある。また資金洗浄に悪用されるなど、多くの課題が山積みとなっている。

一方、資金移動の技術革新をKYC(顧客確認)、マネーロンダリング、詐欺対策にも活用することが可能であり、実際に大主要取引所や決済プロバイダーが協力し、疑わしいウォレットを特定する取り組みも進む。さらに分散型金融(DeFi)では、複数ブロックチェーンでの不正資金追跡ツールが登場している。

さらに、現在は、AI、ブロックチェーン、量子コンピューティングという3つの革新的技術の融合も進行しており、それぞれリスクとチャンスの両方をもたらす。

AIは不正検知を強化する一方で、ディープフェイクや詐欺手法の強化に悪用され、ブロックチェーンは透明性が高い一方、瞬時の国境を越えた資金移動が執行を困難にする。また、量子コンピューティングは、現在の暗号技術を脅かす可能性があるが、仮想通貨プラットフォームの対応は遅れている。

そしてこれらの技術の融合は加速しているため、金融の信頼性をまもるため、今すぐ行動する必要があるとまとめた。

AIとブロックチェーンの融合

Carol House氏は、技術の融合、特にAIとブロックチェーンの融合は興味深いと述べ、両者は互いの良い面と悪い面を互いに強化し合うという複雑な関係にあると指摘した。

Carol House氏

AIの弱点(ブラックボックス問題)には、透明性に優れたブロックチェーンが有効かもしれないし、仮想通貨のスケーラビリティやコンプライアンスの課題にはAIが役立つ可能性もある。しかし、DeFiのような分散型の環境ではAIが暴走した場合に制御が困難で、すでにAIを使った資金洗浄も確認されてると述べた。

今年初めに、史上最大の仮想通貨のハッキング事件が起こったが、House氏が出席した仮想通貨カンファレンスでは、ほとんど議論されなかったことに疑問を呈した。鍵の管理やウォレットのセキュリティ、コードの監査などの基本的なセキュリティ投資が業界で進まない点だけでなく、この問題が十分に取り上げられていない点が、同氏にとって非常に大きな懸念となっている。

サイバー犯罪の規模が拡大し、国家レベルの問題になる中、解決策はあるかと尋ねられると、House氏はAIと仮想通貨が犯罪に悪用されるリスクに強い懸念を示した。

AIの進化により、スマートコントラクトが高度化し、真の分散化が実現可能になりつつあるため、将来に不安を感じていると心情を吐露した。問題となるのは、その分散化に対する適切な緩和策や管理方法が確立されていないことであり、エコシステムに組み込むべきな基本的な信頼を支える技術が構築されていないと指摘した。

仮想通貨には「違法なユーザー」に魅力的な特徴がいくつかあるが、それは仮想通貨のせいではなく、コンプライアンス技術やプログラム可能なマネーの導入が進んでいない業界全体の責任であると同氏は主張する。

現在、業界にはサイバーセキュリティ基準すら導入されておらず、その結果、このセクターはラザラス・グループなどの犯罪集団にとって、意図せずとも「オープンなATM」のような存在になっていると指摘した。

House氏は今こそ、業界の責任ある当事者らが協力して、セキュリティ基準を定義し、導入する現実的なチャンスがあると強調した。

法執行機関の課題

Sungyong Kang博士は、法執行機関の観点から、犯罪捜査のための情報提供を受ける中で、仮想通貨が関与する詐欺やサイバー犯罪が確実に増えていると指摘した。

Sungyong Kang博士

しかし、各国警察を結ぶ国際機関であるインターポールが受け取る情報は氷山の一角に過ぎず、犯罪の実態全容は把握できていない。オンチェーン取引をリアルタイムで追跡しているわけではないので、現状のデータは氷山の一角だと同氏は述べた。

また、犯罪者は、TORやVPN、Moneroなどの匿名性の高い通貨、ミキサーやタンブラーなどのミキシングサービス、P2P(個人間取引)やリスクの高い仮想通貨サービス事業者(VASP)、そしてビットコインATMの利用など、プライバシー強化技術を組み合わせて使うようになってきており、資金の流れを追跡するのが非常に難しくなっているという。

しかし、追跡は不可能なわけではなく、民間企業が開発した優れた追跡技術により成果は上がっている。

ただし問題は、多くの法執行機関はそのような技術を活用するための適切な専門知識を持っておらず、また資金不足のため、有用なツールにアクセスできない場合もあるなど、多くの国では十分な体制が整っていない。どこかに抜け穴がある限り、犯罪者は必ずそれを悪用する。これらがKang氏にとっての大きな懸念となっているという。

また、同氏は仮想通貨を使った犯罪の対応において、技術的な問題よりも管轄権の問題がより大きな課題だと強調した。

国境を越え瞬時に実行される仮想通貨取引に対し、法執行機関は国家間の協力に依存しており、国家主権の制約で迅速な対応が難しい。

また犯罪を検知するための情報源は被害者による報告や不審取引の報告、分析企業からの情報などだが、仮想通貨の場合、被害者は送金先の国が分からず、どの国に報告を上げるべきかわからないことも多々あるという。

つまり仮想通貨の犯罪は、国境を越えた性質により管轄権の問題が大きな障害となっており、被害者や仮想通貨サービスプロバイダーが適切な管轄地を見つけられないことで検知や捜査が難しく、技術的解決策だけでは不十分だと訴えた。

AIは仮想通貨犯罪を悪化させるか

ブロックチェーン分析企業EllipticのArda Akartuna博士は、House氏の発言を引用して、「AIと仮想通貨は、互いの良い面・悪い面を増幅し合う関係にある」ため、この関係性が今後との焦点となるだろうと述べた。

Arda Akartuna博士

仮想通貨犯罪と聞くと、非常に高度な手口を想像しがちだが、実際は「いかに法執行機関の目をかいくぐるか」というシンプルな目的に基づいた行動が多いのが現実だと指摘した。

10年前に比べると、ブロックチェーンの数は劇的に増加しており、それは犯罪者にとって悪用可能なブロックチェーンの数が大幅に増えたことを意味する。犯罪者はあまり知られていない小規模なブロックチェーンに資産を移し、監視をすり抜けて現金化を図ろうとする。複数のチェーンを転々とすることで資金の流れを追いにくくし、捜査には膨大な時間と労力が必要となる。

Ellipticでは、この問題に積極的に取り組んでおり、現在56のブロックチェーンをまたぐクロスチェーン取引を追跡できるようになっている。さらにAIによる行動パターン分析を活用することで、不審な取引の早期発見に取り組んでいるが、同時に合法な取引を誤って検出しないよう、慎重に作業を進めている。

一方、犯罪者もAIを積極的に活用しており、ディープフェイクやAIチャットボットを使った詐欺が横行している。特に、複数の相手に一斉に恋愛詐欺を仕掛けるなど、従来では考えられなかった手口が登場している。

Akartuna氏は、仮想通貨エコシステムが成熟し拡大する中、革新技術を使って安全性の確保を高めることが求められているが、それは、ある意味で大変エキサイティングな挑戦だと述べた。

また、仮想通貨を使った犯罪において驚かされるのは、犯罪者はディープフェイク動画ソリューションなど、AIを活用したツールを堂々とSNSで宣伝するなど、犯罪を隠そうともしない大胆な態度をとっていることだと指摘した。

このような詐欺ツールの売買に仮想通貨が使われており、その市場規模は300億ドル以上にも上るという。

仮想通貨が不正行為を促進していることは「悪いニュース」だが、同時に、追跡可能な仮想通貨が使われることは、犯罪捜査において「良いニュース」でもある。また、違法なAIサービスの支払いに仮想通貨が使われるケースもあるが、仮想通貨が使われているからこそ、仮想通貨サービスプロバイダーが、クライアントの取引を監視し、阻止することも可能だ。

このような仮想通貨の追跡可能であるという特徴を、より積極的に活用すべきだとAkartuna氏は主張した。

▼WebXとは

WebXとは、日本最大の暗号資産・Web3専門メディア「CoinPost(コインポスト)」が主催・運営する、アジア最大級のWeb3・ブロックチェーンの国際カンファレンスです。

このイベントは、暗号資産、ブロックチェーン、NFT、AI、DeFi、ゲーム、メタバースなどのWeb3関連プロジェクトや企業が集結。起業家・投資家・開発者・政府関係者・メディアなどが一堂に会し、次世代インターネットの最新動向について情報交換・ネットワーキングを行うイベントです。

数千名規模の来場者と100名以上の著名スピーカーが参加し、展示ブース、ステージプログラムなどを通じて、業界最前線、グローバル規模の交流とビジネス創出が行われます。

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