
金とビットコインが共存する未来
ドイツ銀行のアナリストは、ビットコインが2030年までに金(ゴールド)と並んで、中央銀行の準備資産となる可能性があると予測している。
ドイツ銀行のマリオン・ラボール氏とカミラ・シアゾン氏は、9月22日に公開された「ビットコインvs 金:2030年までの中央銀行準備金の未来」と題したレポートで、ボラティリティ、流動性、戦略的価値、信頼性などの主要な準備資産の基準に基づいて、金とビットコインを評価した結果を発表。「中央銀行のバランスシート上で金とビットコインが共存する余地がある」との結論に至った。
2025年は、金とビットコインの両方にとって極めて好調な年となっており、ともに史上最高値を更新した。同レポートでは、ドル安や地政学的な不安、米連邦準備制度(FRB)の政策への不透明感が両代替資産の高騰の背景となっていると指摘した。
中央銀行の準備資産は、最も安全で流動性の高い金融資産と広く認識されており、歴史的には金や『安全資産通貨』で構成されてきた。しかし、中央銀行の準備金に占める米ドルの割合は、2000年の60%から2024年には43%まで継続的に低下。さらに、今年3月に米トランプ政権が戦略的ビットコイン準備金の創設を発表したことで、中央銀行によるビットコイン保有という選択肢についての議論が高まりつつある。
高インフレ、地政学的な不安定さ、ドルからの自立、そして暗号資産(仮想通貨)に好意的な規制の動きが相まって、中央銀行は自らの準備資産の構成を再評価する動きを強めていると、アナリストらは分析している。
金との類似性
レポートでは、「ビットコインと金は中央銀行のポートフォリオに対する補完的な分散投資手段である」と主張。両資産が伝統的な安全資産に代わる補完的な選択肢となる理由として以下の点を挙げた。
- 他の資産クラスとの低い相関性
- 供給量の相対的な希少性
- インフレや地政学的リスクに対するヘッジとしての活用
また、ビットコインのボラティリティは今後、低下することが見込まれると主張している。
現在価値の保存手段として支持されている金も、導入初期は価格変動が激しかったが、時間とともに安定していった歴史があると指摘。米国や欧州において規制整備が加速していることから、取引の増加に伴い、ボラティリティは低下し、市場の流動性が高まると予測した。実際、ビットコインの30日間のボラティリティは、8月に史上最高値をつける中、過去最低水準の23%まで低下した。
このような動きは、ポートフォリオへの仮想通貨の統合が成熟するにつれて、ビットコインのスポット価格とボラティリティの緩やかな分離が始まっている可能性を示唆しているとまとめた。
しかし、ビットコインも金も、米ドルに代わる主要な準備資産や決済手段となる可能性は低いと、アナリストらは考えている。その背景として、1930から70年代にかけて、米国が金の影響力を抑えた歴史があり、現在も各国はビットコインなどの仮想通貨が自国通貨の主権を脅かさないよう対策を講じると予想されると説明した。
レポートは中期的には、中央銀行などの公的な準備金では、金が引き続き優位性を維持する一方で、民間の準備金や代替準備金としては、ビットコインが拡大していくと評価した。
金価格の高騰とビットコイン
金価格は、年初から50%以上急騰しており、執筆時現在、1オンスあたり3,948.04ドルで、4,000ドルをわずかに下回る水準となっている。
ゴールドマン・サックスは金価格がさらに上昇すると予想しており、同行のアナリストのリナ・トーマス氏とダーン・ストルイベン氏は、金に対する「根強い」需要を理由に、金価格の目標を従来の4,300ドルから4,900ドルに引き上げた。この需要を牽引しているのは、新興国の中央銀行だと両氏は説明している。
VanEckの仮想通貨調査部門責任者マシュー・シーゲル氏は7日、Xへの投稿で、ビットコインが金の時価総額の半分に到達する可能性を示唆。時期としては、2028年4月に予定されているビットコインの半減期後となると見ている。
同氏は、金の価値の約半分が、価値の保存手段としての役割から生じており、特に新興市場において若年層は、金よりもビットコインを好む傾向にあると指摘した。
金価格4,000ドルの場合、1BTCあたり64万4,000ドル(約9,832万円)相当となるとシーゲル氏は付け加えた。