- 長引く仮想通貨の下落相場(クリプトウインター)で大打撃を被ったGPUメーカーの現在
- 4半期毎に世界規模でのGPUの出荷台数を発表している関係者は「2018年初頭の需要は市場と乖離していたため、在庫を大量に抱える結果となった、この傾向は2019年の第1〜2四半期まで続く」と予想している。
長引く仮想通貨の下落相場は 大手GPUメーカーへも重大な影響
「仮想通貨の冬」は、マイニング関連企業にとっても厳しい。
四半期毎に世界規模でのGPUの出荷台数を発表しているJon Peddie Research社(以下JPR社と表記)の報告によると、2018年第4四半期(10〜12月)のGPU出荷台数は、前四半期に比べ、2.65%の減少となった。
同社によると通常、第4四半期の季節的傾向としては、出荷台数は横ばいか上昇することが多く、過去10年の平均では11.59%の増加を見ていたという。
しかし、2018年の状況は全く異なるもので、メーカーごとにその内容を見てみると、Nvidiaは7.6%、AMDは6.8%、Intelは0.7%の減少となっている。
前年同期比で見ると、ノートブックGPUは8%増加したものの、デスクトップ向けは20%減となり、GPUの出荷台数は合計で3.3%減少する結果となった。
JPRのCEO、Jon Peddie博士は、2018年初頭のアドインボードに対する需要は、市場で実際に起きていることと乖離していたため、大量の在庫を抱える結果となり、第4四半期のディスクリートGPU(単体GPU)の販売に影響を及ぼしたと述べている。
さらにPeddie博士は、この傾向は2019年の第1および第2四半期まで続くだろうと予想した。
仮想通貨市場と連動する業績
2017年後半から高騰した仮想通貨相場は、一般投資家だけではなく、高まる収益性を見込んで、大量に新たなマイナーを誕生させることになった。
そして、専用のASICマシンが効果的でない、イーサリアムのマイニングには、高性能グラフィックボード(GPU)によるマイニングが主流であり、新たに参入したマイナーが、世界中でGPUを買い漁る現象が起き、それに伴い、各地でGPUは入手困難になるほどで、その価格も急騰した。
しかし、マイニングの需要は仮想通貨相場の価格に大きく左右される要素も持っており、チップメーカーとしては、製造の先読みが難しい部分が大きい。
実際、2018年第1四半期、仮想通貨マイニング関連の売り上げは、Nvidiaの売上全体の9%以上、AMDでは10%を占めていたと公表されているが、その後の仮想通貨相場の下落に伴い、需要も大きく減少し、大量の在庫を抱えることとなった。
今年1月末に公表されたNvidiaの財務報告書によると、第4四半期は、前年同期の29億1000万ドルから24%減、第3四半期の31億8000万ドルと比べると、31%減の22億2100万ドルの収益を上げた。同社は、仮想通貨マイニング市場の影響を依然として感じており、過剰在庫の売却に苦労していたと語っている。
現在の方向性は
今のNvidiaは、マイニング事業とは別の方向性を目指しているようだ。
同社創設者でCEOのJensen Huang氏は、次のような展望を述べている。
当社が開発した高速コンピューティングプラットフォームは、世界で最も重要であり、急成長している産業の中心だ。
それは、人工知能であり、自律走行車であり、ロボット工学といった分野である。今後、持続的な成長を回復できると、全面的に予想している。
一方、GPU市場における大手でNvidiaの競合企業であるAMDは昨年11月、仮想通貨相場の低迷にも関わらず、新たに7つの技術系企業と提携し、専用に開発されたGPUリグを使用して、PoWコインのマイニングが可能な、8つの新しい「ブロックチェーン計算ソリューション」を発表している。
仮想通貨市場の値動きは、半導体製造企業の事業展開にも、大きな影響を与え始めているようだ。