日銀金融レポート「キャッシュレス決済」は重要課題、将来の金融システム安定性維持のため

日銀の金融システムレポート
日銀金融レポートでは、⾦融機関の取り組み状況と、⾜もと幅広い取り組みが加速しているキャッシュレス決済の動きを整理。ビットコインなど仮想通貨市場にも影響の高い内容について、一部抜粋して紹介する。

日銀の金融システムレポート

⽇本銀⾏は、⾦融システムの安定性を評価するとともに、安定確保に向けた課題について関係者とのコミュニケーションを深めることを⽬的として、⾦融システムレポートを年2回公表している。

このレポートでは、⾦融循環や⾦融機関のストレス耐性について定期的に評価するとともに、⾦融システムの潜在的な脆弱性についてマクロプルデンス(金融システム全体のリスクの把握を重視して安定を図る政策)の視点から分析を⾏うものだ。

今回、日銀レポートの中から、ビットコインなど仮想通貨市場にも影響の高い内容について、一部抜粋して紹介する。

なお、この分析結果は、⽇本銀⾏の⾦融システムの安定確保のための施策⽴案や、考査・モニタリング等を通じた⾦融機関への指導・助⾔に活⽤している。また、国際的な規制・監督・脆弱性評価に関する議論にも役⽴てている。

2019年4⽉号の金融システムレポートでは、⾦融機関の取り組み状況と、⾜もと幅広い取り組みが加速しているキャッシュレス決済の動きを整理している。

国際⾦融市場

日銀は、「国際⾦融市場では、昨秋から同年末にかけて、⽶中間の通商問題や欧州情勢など、世界的な⾦融経済活動を巡る政治的不確実性が意識されるもとで、投資家のリスクセンチメントが悪化した」として、以下のように分析した。

リスクセンチメントが悪化した結果、⽶欧の⻑期⾦利は低下し、株価は⼤きく下落したほか、社債などクレジット市場の資産価格も下落する場⾯がみられた。

⼀⽅、⽶国の政策⾦利引き上げ予想の後退等から、⼀部の新興国市場における不安定な動きは⼀服している。⾜もとにかけては、投資家のリスクセンチメントの持ち直しから、⾦融市場は全体として落ち着きを取り戻しつつある。

もっとも、先⾏きの⾦融経済に対する市場参加者の慎重な⾒⽅は残っている。とりわけ、上述した政治的不確実性の展開次第では、⾦融経済活動を巡る不透明感が意識され、国際⾦融市場が再び不安定な動きをみせる可能性に注意する必要がある。

出典:日銀レポート

世界的な政治的不確実性の⾼まり

⽶中の通商問題を巡る動向や、英国のEU離脱交渉の展開など、世界的に政治的不確実性が⾼い状況が続いている。

出典:日銀レポート

昨年末から株価の下押し要因となった⽶中貿易摩擦による通商問題については、4月18日現在でも両国政府の交渉が続いており、その⾏⽅について、市場参加者の関⼼は⾼まっている。また、英国では、EU離脱を巡って英国議会内での意⾒集約やEU側との交渉の⾏⽅など、政治的不確実性の⾼い状況が継続している。

こうしたなか、英国株価やポンドなどは、EU離脱協議を巡る報道などに振らされる展開がみられた。ポンドのリスク・リバーサルをみても、ポンド安警戒感はやや⾼まっている。先⾏きについては、上記を含めた世界的な政治的不確実性のさらなる⾼まりが、国際⾦融市場の不安定な動きを招くリスクに注意する必要がある。

日経平均株価

⽇経平均株価は、企業業績期待などを背景に昨年10⽉初にはバブル崩壊後の最⾼値を更新する場⾯もあったが、その後は、⽶中間の通商問題を巡る不透明感が⾼まったことなどを受け⽶国株につれて下落したほか、中国経済の減速懸念の⾼まりやドル/円レートが円⾼⽅向に推移したことが、株価をさらに下押しした。

こうした海外経済を巡る不透明感の⾼まりなどが、外需関連株のアンダーパフォーム(国外需要の下振れリスク)につながっている。こうしたなか、投資家別の売買動向をみると、年末にかけてはリスクセンチメントの悪化等を背景に、海外投資家の売りフローが株価下落を主導していた。

これは、昨年10月の世界同時株安時など、クレディ・スイス・グループなど外資の先物売りが過去最高規模に達したことを指しているものと思われる。

日本取引所グループが1月に公表した投資部門別売買状況によれば、海外投資家の売り越し額は5.7兆円規模に達しており、2013年に第二次安倍内閣により「アベノミクス」が始動して以降、最大の売越額となった。これは、ブラックマンデーが起こった1987年以来、実に31年ぶりの規模に及ぶ。

新興国市場の動向

歴史的に、避難通貨としてビットコイン動向にも影響することのある、新興国市場の動向については、以下のように述べた。

新興国市場では、⽶国での利上げ予想の後退や、これまでの各国による利上げ等の政策対応を主因に、国際的な資本フローが流⼊超に転じたほか、多くの国で株価・通貨が上昇した。

先⾏きも新興国市場が⽐較的底堅く推移するとの⾒⽅は市場に少なくないが、新興国の資本フローは⽶⻑期⾦利の変動の影響を強く受ける傾向があるほか、⼀部新興国経済の構造的な脆弱性も残存している。

そのため、⽶⻑期⾦利が急上昇する場合などには、新興国からの資本流出圧⼒が再び強まる可能性には留意する必要がある。

キャッシュレス社会の課題分析

日銀は、⾦融システムが将来にわたって安定性を維持していく観点から、⾦融機関に求められる経営課題として、「キャッシュレス決済」などデジタライゼーションへの対応を挙げている。

キャッシュレス分野の分析では、「近年のデジタル技術の⾼度化は、⼈々の⽣活や様々な企業ビジネスに広範な影響を及ぼすようになってきているが、銀⾏業を取り巻く環境も、そうしたデジタライゼーションを背景に⼤きく変化しつつある。」と報告した。

デジタライゼーションとは、商品・サービスにおける企画・開発から、製造・販売、マーケティングに到るまでのすべての行程をデジタルでつなぐことだ。

一般消費者向けの「小売」を指すリテール決済には、これまでも様々な⼿段が⽤いられてきたが、日本では特に現⾦が⽤いられる割合が⾼かった。裏を返せば、日本の現金主義が、近未来のキャッシュレス社会の促進に向け、他国に遅れを取る弊害となっていたということでもある。

その要因の1つとして日銀は、「銀⾏が⼿厚い⽀店・ATM網を整備して、利便性の⾼い現⾦受払サービスを、預⾦に付随するサービスとして低コストで提供してきたことにある。」としている。

JR東日本が発行する交通系電子マネー「Suica」に仮想通貨チャージ出来るようにする、仮想通貨交換業者ディーカレットの構想もある中、キャッシュレス決済の普及は、ビットコインなど仮想通貨業界の発展にも大きく寄与することになる。

日銀を含め、日本政府の方針にも注視したい。

CoinPostの関連記事

経産省、消費増税対策の「キャッシュレス決済」を利用したポイント還元制度の詳細発表
政府は、10月1日の消費税率引き上げに伴い、キャッシュレス決済手段を使用したポイント還元の支援制度の詳細を発表した。経産省発表リストには、メガバンクやスマホ決済事業者に加え、JRやマネータップのSBI Ripple Asiaも含まれている。
日本政府が「令和6年」に新紙幣発行を発表、キャッシュレス社会と仮想通貨決済への影響は
日銀は、20年ぶりとなる新紙幣を「令和6年」に発行・福沢諭吉などの肖像も刷新する。暗号資産XRP(リップル)の分散型元帳技術を搭載したSBIのマネータップや、三菱UFJフィナンシャル・グループのデジタル通貨を始め、キャッシュレス社会および仮想通貨決済への影響にも関心が集まる。

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

▶️本日の速報をチェック