- 混迷を極めるベネズエラ、ビットコイン取引量は過去最高を記録
- ハイパーインフレなど混迷を極める経済状況に置かれるベネズエラは、政府発行の仮想通貨ペトロの現状や強硬的な仮想通貨業界の規制枠組み法案の施行など、仮想通貨を取り巻く環境においても混乱が伺える。
ベネズエラでビットコイン取引量が過去最高を記録
先週、ベネズエラにおけるビットコインの取引量が過去最高を記録した。
取引量は、一週間で約2000BTC、およそ700万ドル(約7.7億円)に相当する。
昨年夏の取引量500BTCと比較すると400%の上昇率だ。
同国内では、ライセンスを有する取引所を通した取引所ではなく、P2Pの取引が行える個人間OTC取引を提供する「LocalBitcoins」OTCプラットフォームにより売買されている。
OTC取引は個人間での売買(相対取引)となるため、取引量が増加が、直接的に価格へ影響しにくい状況にはなるが、これだけ需要が拡大している状況を見ると、同国内のBTC価格は大きく上昇していることが予想される。
OTC取引がベネズエラにおいて好まれる理由としては、経済的、政治的な理由に加えて、ユーザーが同じエリアの仮想通貨支持者を見つけて繋がることができるなどOTC取引がコミュニティ参加のきっかけになるといった側面もあるが、最も重要なのはビットコイン需要が高まるベネズエラであるが、その主な要因としては、国内のハイパーインフレだろう。
この動きはビットコインが過去に注目されたキプロス危機などに似た需要増加であり、国民の信頼度が一時的に、自国通貨から、国に属さない非中央集権型の通貨へと移った事例と言える。
ベネズエラのインフレ
現地時間2月7日に開かれた国会では、1月の物価上昇率が年率268万8670%であったことが公表された。
月間の物価上昇率は191%であり、前月から約50ポイント上昇。物価上昇のペースが加速している。
国際通貨基金(IMF)は、年内にインフレ率が年率1000万%に達すると予測しているが、現状のままではさらに上回る可能性が高く、通貨の単位を5ケタ切り下げるデノミを実施している。
ハイパーインフレ下では、デノミが利用されることは多くあり、アフリカのジンバブエでは、中央銀行が2009年に1兆ジンバブエドルを12ケタ切り下げ、1ジンバブエドルに切り替えた事例もある。(日本円で例えた場合だと、1兆円が1円になるように通貨単位が切り下げられる。)
また、2019年1月には米国政府による経済制裁が発令されており、米国とベネズエラ間の石油製品の輸出入が大幅に制限されることとなった。
急劇に高まるビットコイン需要の背景には、そのような政治的、経済的に混迷を極めるベネズエラの深刻な状況がうかがえる。
仮想通貨ペトロの現状
ペトロとは、ベネズエラ政府によって発行される、国内の原油が価値の裏付けとなる仮想通貨である。
マドゥロ大統領は、ペトロによって33億ドル(約3650億円)を調達したと公表しており、ベネズエラ経済再建の礎になるとしている。
しかし、ペトロに対してはそもそも存在するのかなど懐疑的な意見が少なくない。
昨年に大手通信社のロイターが実施した調査によると、裏付けとなる原油が眠るとされる同国中部の村アタピリレでの開発は全く進んでいないという。
同村での取材で、地元住民は、政府が油田を開発しようとしている様子は見たことがないと語った。
また、同社の、仮想通貨や油田査定の専門家10人以上への取材と4ヶ月に渡る調査にも関わらず仮想通貨ペトロの存在は確認できなかったという。
取引所での売買や、ペトロ支払いを受け付ける店の確認はできず、取引の裏付けを取るのは困難であったそうだ。
ビットコインの需要は高まっているものの、政府が推奨するペトロについては機能しているのかも不明確な現状がうかがえる。少なくとも、大多数の国民がビットコインを選択していることは明らかである。
仮想通貨の新たな規制法が執行
1月31日には、ベネズエラで、仮想通貨業界における法的枠組みを規定する新たな法律が施行された。
マイナーやトレーダー、事業者などは同法の規制下におかれる。
マイニング事業者や仮想通貨取引所はライセンスの取得が義務付けられ、違反した場合にはペトロ支払いによる罰金を含む罰則が与えられるとされる。
また、2018年に設立された機関「Sunacrip」は、同法により、同国の仮想通貨市場全体の監視を担うようになる。
それに加えて、同国内の仮想通貨サービス全てをコントロールする権限も持つという。
そのような強硬的ともとれる姿勢からは、政府のペトロを使わせたいといった意図が読み取れるだろう。
仮想通貨を取り巻く環境においても、非常に混沌とした様子がベネズエラにみられる。
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