はじめての仮想通貨
TOP 新着一覧 チャート 学習-運用 WebX
CoinPostで今最も読まれています

【全文】ビットコインの法定通貨検討、エルサルバドル大統領のスピーチを日本語で読む

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

カンファレンスの登壇内容(全文)

中南米に位置するエルサルバドル共和国のナジブ・ブケレ大統領が、ビットコイン(BTC)を「法定通貨」として採用するための法案を議会に提出する方針であることが発表された過去最大級のビットコインカンファレンス「Bitcoin 2021」。内容は瞬く間にツイッターなどのSNSで拡散されたが、スピーチ内容は英語であることから日本語で全文を読んだ方も多くはないかもしれない。

今回CoinPostでは、ビットコインに関して歴史的なスピーチになる可能性のある本内容を全文日本語化した。(以下、スピーチ内容)

Strike ジャック・マーラーズCEO

今日は国家のためのビットコイン、そしてビットコインがもたらす自由と金融包摂について話したいと思います。

皆さんは連邦準備制度をご存知でしょうか。昨年より、中央銀行による前代未聞の大規模金融緩和が観測されています。

出典:FRED

チャートの右側(の上昇)をご覧いただければ、多くの人が危機感を憶えるでしょう。しかしインフレーションは(全ての領域において)平等には分散されていません。

また、消費者物価指数(CPI)のチャート上では4%を超えるインフレーションは確認されていません。ただ一つのチャートでは何も確認できなくても、他のチャートからは異なる実態が伺えます。

米労働統計局

例えば、我々が将来、自分の子供たちに提供したい物の一つである、大学の教育費の推移を表したチャートを見ましょう。前年比でのインフレ率は4%を軽々と上回る8%を記録しています。

出典:米労働統計局

他の例では、不動産のインフレもあります。私は生まれも育ちもアメリカのシカゴ(イリノイ州)なのですが、将来はマイホームを所有したいと願っています。

しかし、コロナ禍のもたらした金融危機や度重なる経済政策の影響で、イリノイ週における前年比のインフレ率は9.2%となってしまいました。つまり、私が将来的にマイホームを購入するためには、給料が毎年10%上がる必要があるのです。

出典:米イリノイ州

でも、(政府は)インフレがないと言うのです。

このように、各国の中央銀行からは、発展途上国や新興市場に悪影響を及ぼしかねない行動が活発化しており、これは大きな問題です。

米国の連邦準備制度による米ドルの大量発行は、これらの国や市場に思わぬ余波をもたらし、恵まれていない人々の「生活の質」(QOL:クオリティ・オブ・ライフ)に劇的な影響を与えているのです。およそ100年間起きていなかった前代未聞の危機に直面しています。

隠れたインフレが新興市場に大打撃を与えており、このような情勢で(代替資産性を持つ)ビットコインが重要性を持たないとは考えにくい。

アメリカや欧州、イギリスなどの先進国に住んでいない人々は、おそらく強い危機感を感じているはずでしょう。おそろしい話です。

主要国の政策は新興市場に対して経済的・財政的にも影響を及ぼしており、大きな問題なのです。しかし、ビットコインはこのような状況を解決します。お金を直せば、世界を直すことにつながります。

ビットコインは発行ペースと最大発行数が定まっている資産クラスです。ビットコインの通貨政策も分散化されたネットワークにより守られています。

単一障害点のようなリスクも存在しません。オープンで、グローバルなパーミッションレスなネットワークなので、ニューヨークにいようが、発展途上国にいようが、同じように機能します。つまり、バイアスがありません。

また、送金などの領域を大きく改善します。

多くの発展途上国のGDPは(海外労働者)の仕送りから成り立っています。ビットコインはこのような場面で送金コストの低下を実現し、最終的には取引のスケーラビリティと金融包摂の拡大につながります。

私は、Strikeという企業を設立しました。聞いたことがある方もない方もいるでしょう。企業理念は、「ビットコインがこのような課題を直すことができる利点を活かすこと」です。

我々は海外送金のコストを無料にしたい。また、送金問題や金融包摂などの課題、そして米国の連邦準備制度がもたらした混沌とした状況を解決したいと考えています。

エルサルバドルの例

エルサルバドルはいい例です。

この国では、内戦の影響で自国の法定通貨が崩壊したため、米ドルを基軸利用しています。また、GDPの20%以上がインバウンドの海外送金から成り立っています。

その反面、海外送金は対GDP50%以上になることも。また、経済的な不安定な情勢や経済的な支援が欠如しているため、アメリカだけでも200万人ものエルサルバドル人が移住を余儀なくされている実態があります。

さらに、経済的な機会が少ないため、エルサルバドル内の犯罪率は高く、暴力と犯罪に頼らざるを得ない状況が発生しているのです。このせいで、国家の安全性は損なわれ、重大な移民問題に発展しています。

しかし、根本的な問題を見れば、お金を直せば、世界を直すことができます。

もし経済的な安定、経済的な機会、金融包摂を提供できれば、オープンで分散化されたネットワークに守られた資産を提供できさえすれば、犯罪や暴力に頼る必要もなくなります。

送金額の50%を手数料として搾取する金融仲介機関に頼る必要も、生まれた国を離れる必要もなくなります。

弊社の優秀なCBOはプロダクトを欧州でローンチしようと提案したのですが、私はエルサルバドルに行こうと提案しました。実際に助けが必要を支援するべきだからです。私は実際にエルサルバドルへ行き、3ヶ月間そこで住みました。

海外送金を受け取ろうとしてもできず、ATMも機能していない状況でした。(舗装されていない)砂利道も多く、悲しい実態がありました。

多くの子供達と会い、ビットコインについて話す機会があり、多くの希望をもたらしました。このような集会であったある少年は私にこう言いました。

僕のお父さんも、おじいちゃんもみな漁師でした。自分は魚を獲っているが、ビットコイン(を保有する)まで銀行口座を持ったこともなかった。

でも今、マイケル・セイラーがビットコインを買って、BTC価格が上昇すれば、僕はその恩恵を受けることができます。

彼は銀行口座も預金口座も待っていませんが、ビットコインウォレット、そしてハードウォレットを持っています。彼は金融包摂を実際に目の当たりにしたのです。分散化された、仲介機関のネットワークにはバイアスがないので、(彼のような人を)拒否することはありません。エルサルバドルでは1日あたり平均2万人のオンボーディングを行うことができました。

多くの人々は銀行口座を持っていませんが、ライトニングネットワークは実際に機能して、国家のGDPにリアルタイムで貢献しているのです。

そしたら同国の大統領から連絡を受けました。実際にお会いし、人生やアニメ、世界中の人々に高いQOLを提供する方法について語り合うことができました。また、金融包摂や人間の自由、そしてそれがどのように失われ、どうすれば取り戻せるか話しました。その過程で、重大な事実も知りました。

エルサルバドルの国民の70%以上が銀行口座を持っておらず、金融システムから切り離されているのです。同国では金融包摂や市民に基本的な人間の自由が提供できない状況があります。

そこで、大統領からビットコインを世界クラスの通貨として認め、ビットコインを通してこのような人々を助けるための法案を作成する手伝いをするよう依頼されました。人々に希望を与え、生活の質を高め、生まれた国を離れる必要を解消するため、海外から送金しても半分以上を手数料で取られる課題をなくすための法案です。

大統領の登壇

それでは、エルサルバドルのブケレ大統領をお迎えしたいと思います。

ナジブ・ブケレ大統領

素晴らしいアイデアは美しく、大きな力を持っています。しかし、時にアイデアは脆い部分もあります。

私が子どもの頃、未来は可能性で満ちていて、楽しみで仕方ありませんでした。しかし今は(先行きについて)誰に聞いても核戦争、気候危機や飢饉、疫病などが挙がることが多く、希望に満ち溢れているとはとても言い難い状況です。

我々は、自ら自身の将来を築くことができるという美しいアイデア、そして「人類は考えつくことを実現できる」という考えを守ることができなかったのです。人類と他の生物の最大の違いは、人間の独創性にあると思います。エルサルバドルでは、この考えを取り戻し、未来のための国をデザインしていくために尽力しています。

我々の長所を活かしつつ、世界中の歴史や素晴らしいアイデアを用いていきます。ビットコインはこのようなアイデアの一つです。

このようなことから、私は来週、ビットコインを法定通貨として認める法案を議会に提出します。短期的には、雇用創出や経済システムから切り離されてきた国民の金融包摂の提供につながります。中長期的には多くの人々の生活の質、そして何百万人もの未来を向上させます。

それでは、法案の中で私の一番好きな部分をお読みしましょう。

各国の中央銀行からは、エルサルバドルの経済に害をもたらしかねない行動がますます顕著になっている。

このような中央銀行のネガティブな影響を最小限に留めるためには、中央銀行により発行量が管理されず、客観的かつ計算可能な基準でのみ変化が加えられる「デジタル通貨」を認可する必要がある。

現段階では、エルサルバドルは初のビットコイン国家になろうとしています。(法案が実現すれば)ビットコインを法定通貨、そして世界通貨として認め、保有する初の国家になります。また、Strike社はBlockstreamと連携して、同国にイノベーションHQを設立します。イノベーションを支援して育む国家はコミュニティーからの支持を得て、多くの(仮想通貨)企業の誘致につながるでしょう。

政府からの介入を気にせず、未来を築けますし、政府もイノベーションを望んでいます。(ニューヨーク州のように)ビットライセンスを取得する必要もありません。さらに今回、(法案に関する)全ての資料をオープンソースの資料として、「国家のためのビットコイン」(Bitcoin for Countries)と題して公開します。参考にしたい国家は、インターネット上でダウンロードすることができます。

今日、国家がオープンな金融システムに接続して、国民に希望を与えました。中央銀行に供給量が左右されないビットコインを選択しました。ビットコインのネットワーク上では、小さい進展です。ネットワーク上では大統領もただのホドラーです。ビットコインネットワークは気にもせず、差別もしません。ビットコインにとっては小さな一歩ですが、人類にとっては金融包摂の人間の自由の確保に向けた大きな一歩を遂げた形となります。今日は特別な日です。

これまで250年間助けを得られなかった人々が仮想通貨コミュニティーの皆様のおかげで、助けを得ることができるようになったのです。

重要な論点を動画解説

エルサルバドルによるビットコインの法定通貨法案提出に関連し、特に重要な論点や世界各国で発生し得る議論について、国内大手仮想通貨取引所bitFlyer創設者の加納裕三氏が詳しく解説した。

CoinPost App DL
厳選・注目記事
注目・速報 市況・解説 動画解説 新着一覧
08/20 水曜日
20:06
SBI VCトレード、仮想通貨積立でキャッシュバック 最大1%還元 キャンペーン
SBI VCトレードが暗号資産(仮想通貨)積立投資のキャッシュバックキャンペーンを開始。期間中の約定金額に応じて最大1%を還元、上限なし。9月20日まで実施で新規・既存ユーザーが対象。ドルコスト平均法でリスク分散も可能。
14:40
WebX 2025完全ガイド|日本最大Web3カンファレンスのチケット料金・見どころ・参加方法まとめ
国内最大手仮想通貨メディアCoinPostによる「WebX 2025」の特集ページ(公式ガイド)。SBIの北尾会長、平 将明デジタル大臣、小池都知事、ホリエモン、オードリー・タン、アーサー・ヘイズなど豪華な注目スピーカーをはじめ、お得な割引情報を含むチケット料金、会場アクセス、サイドイベント情報を詳しく解説。
13:15
イーサリアムトレジャリー企業が市場に与える影響は? クリプトクアント分析
クリプトクアントが仮想通貨イーサリアム・トレジャリー企業の台頭を分析した。16社以上がETH財務戦略を採用する中、そのメリットや問題点を解説している。
13:00
J-CAMのWebXブースは「体験型エンタメ空間」遊び心と近未来を彷彿とさせる仕掛け|WebXスポンサーインタビュー
大規模カンファレンス「WebX 2025」のタイトルスポンサーとしてブース出展を決めた、株式会社J-CAMの新津俊之CEOへインタビュー。BitLendingやIoliteを通じた暗号資産レンディングサービスの展望ついて聞いた。
11:45
JPYC、日本円ステーブルコイン発行へ 新サービス「JPYC EX」とは?
JPYCが資金移動業ライセンスを取得し、日本初の円建てステーブルコイン「JPYC EX」を発行へ。特徴や将来性を徹底解説。
11:25
岐路に立つビットコイン、次の上昇はいつから? 専門家の見解
仮想通貨ビットコインが11万4000~11万5000ドルで調整継続中。アナリストは9-10月回復予測する。バーンスタインは2027年まで強気相場継続と分析。
10:30
スカイブリッジ、アバランチで440億円の資産トークン化
米投資運用会社スカイブリッジが主力ヘッジファンドを仮想通貨アバランチのブロックチェーンでトークン化する。RWA市場が成長し機関投資家のトークン化参入が本格化している。
10:20
テゾスエコシステム at WebX 2025:RWA最新動向から日本限定グッズ、体験型コンテンツまで一挙公開
WebX 2025でテゾス共同創設者Arthur Breitman氏が登壇。そのエコシステムについて、ハードフォーク不要でアップグレードできるブロックチェーン技術と100万TPS対応のレイヤー2、世界初ウラントークン化など最新動向を解説。日本限定グッズ抽選やフォトブース体験も。
10:15
ロビンフッド、NFLと大学のアメフトの予測市場を提供へ
仮想通貨などの取引サービスを提供するロビンフッドは、米国のプロと大学のフットボールの試合結果に賭けることができる予測市場のローンチを発表。ロビンフッドのアプリから直接使用できる。
08:12
ワイオミング州、米国初の州発行ステーブルコイン「FRNT」をローンチ
ワイオミング州が米国初の州政府発行ステーブルコイン「フロンティア・ステーブル・トークン(FRNT)」を正式リリース。7つのブロックチェーンに対応。
07:00
カインドリーMD、5744BTCを購入 ナカモト合併後初の大型投資
医療企業カインドリーMDが5744BTCの仮想通貨ビットコインを約679億円で購入。ナカモト・ホールディングスとの合併完了後初の大型投資で総保有量は5765BTCに拡大。
06:35
米SEC・FRBトップ、仮想通貨規制方針転換を宣言
米SECアトキンス委員長とFRBボウマン副議長がワイオミング・ブロックチェーン・シンポジウムで仮想通貨規制の抜本的方針転換を発表。イノベーション重視の新時代開幕。
05:55
テザー、トランプ政権仮想通貨評議会の元高官を戦略顧問に起用
世界最大のステーブルコイン発行会社テザーが、トランプ政権でホワイトハウス仮想通貨評議会を率いたボー・ハインズ氏を米国戦略担当の戦略顧問に任命。
05:45
シャープリンク、イーサリアム保有量74万ETHに拡大
米上場のシャープリンク・ゲーミングが8月17日時点でイーサリアム保有量を74万760ETHまで拡大。前週は新たに14万3593ETHを購入した。
05:30
仮想通貨取引所Bullish、IPO調達資金全額をステーブルコインで受領
仮想通貨取引所ブリッシュがIPO調達資金11.5億ドルを全てステーブルコインで受け取り、米国IPO史上初の事例を達成。ソラナネットワークを活用しコインベースが保管。

通貨データ

グローバル情報
一覧
プロジェクト
アナウンス
上場/ペア
重要指標
一覧
新着指標
一覧