はじめての仮想通貨
TOP 新着一覧 チャート 学習-運用 WebX
CoinPostで今最も読まれています

ビットコインが法定通貨になったエルサルバドルに行ってみた|体験記寄稿2 ビットコインを世界で初めて法定通貨に採用し7ヶ月が経過したエルサルバドルで垣間見た現実

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

エルサルバドル滞在紀行

エルサルバドル訪問記の第2弾はビットコインビーチの知られざる起源についてお伝えする予定でしたが、記事執筆中に心配なニュースが入ってきたので、予定を変更してニュースおよびそれがビットコインアダプションにどう影響するかついてお届けします。

本記事は4月6日〜9日にBitcoin 2022という世界最大のビットコインカンファレンスが開催されるマイアミで書いているのですが、カンファレンス初日の6日午後、登壇者として予定されていたBukele大統領が欠席とのニュースが入ってきました。

日本で報じられているかわかりませんが、エルサルバドルでは3月下旬にギャングが1日で87人もの一般市民を殺害するという衝撃的な事件がありました(アルジャジーラ)。

Bukele大統領はすぐさま非常事態宣言を発動し、1万人を超える警察、軍隊を投入して数日のうちに1000人以上、7日までに7500人近くの身柄を拘束しました。

30日間の非常事態宣言中に外国訪問というわけにはいかないのでしょう。ある意味、ギャングの狙い通りの展開です。今回の事件は偶発的ではなく、意図的、計画的というのが大方の味方です。先週のコラムでお伝えしたように、エルサルバドルは長年にわたり殺人事件発生率が世界最高という不名誉を甘受していましたが、Bukele大統領は就任1年目でこれを半減し、その後も低水準に抑えてきました。

しかし、昨年秋、一時的にギャングによる犯罪が急増しました。11月に中南米最大のビットコインカンファレンスがエルサルバドルで開催されるのを受け、Bukele大統領への注目度が増していた時期です。今回も、昨年ビットコイン法定通貨化を発表したカンファレンスで何か重大発表があるのでは?とBukele大統領に関心が高まっていたタイミングです。

Bukele大統領が殺人率削減に成功した理由の一つとして、まことしやかに囁かれているのがギャングとの裏取引です。もちろん政権は認めていませんし、確証を持って報じるジャーナリストもいません。ただ、現地では「政府とギャングの交渉は死体を介して行われる」とも言われており、今回もギャングが自らの存在をアピールし、何らかの便宜を引き出そうとしたのではと考えられています。

一つ気がかりなのが、警察が押収したギャングの携帯電話の通信記録から、今回の事件は幹部の命令ではなく、10代の若い層が勝手に行ったことを伺わせるやりとりがあったことです

従来、ギャングによる殺人は被害者もギャングということがほとんどで、今回のように子どもを含む一般市民が犠牲になることは珍しいそうです。政権に手懐けられたように見える幹部に対する反抗がこのような形になったとしたら、これまでと同じ対策が機能しなくなる恐れもあります。

こうした自国の非常事態への対処を優先すべく、カンファレンスを欠席するのは至極当然です。この事件が今後ビットコイン普及にどのような影響を及ぼすかはわかりませんが、すでにエルサルバドルへの投資、移住、旅行を延期する、再考すると言っているビットコイナーは少なくありません。特に家族を伴って移住することを考えていた人は当然ですが慎重になっています。事件の直接的影響と言っても良いでしょう。

El Zonteだけでなく、El Tuncoなどサーフシティではホテルや外国人向けのコンドミニアムのちょっとした建設ブームが起きています。ビットコインの普及状況視察に訪れるビットコイナーのおかげで観光業が30%も伸びたのに、事件のせいで、一時的かもしれませんが観光や不動産需要が落ち込む可能性は十分あります。せっかく史上初の2桁を記録した経済成長にも影を落とすでしょう。

残念ながら欠席となりましたが、Bukele大統領はカンファレンスで何を話すつもりだったのでしょうか?

私が期待していたのは、当初3月中旬に販売開始予定だったビットコイン債券について、遅れている理由の説明と新たなタイムラインです。ロシアのウクライナ侵攻で金融市場が不安定化したことを理由に挙げていますが、断片的な情報に基づくと、証券法整備の遅れで引受会社であるBitfinexが許認可を取得できないでいることや、IMFとの債務返済繰り延べ交渉中であることなども一因かもしれません。債券に関してだけではなく、Bukele大統領による情報開示については、開示する情報量が少なすぎること、都合の良い情報しか開示しないことなどこれまでも問題視されてきました。

Bukele大統領はビットコインを法定通貨に採用することで得られる効果として、金融サービスへのアクセス、雇用創出、経済成長が期待できると国民に希望を与えたのです。私の知人はビットコインシティにお店を出すことを夢見て、親子そろって英語の勉強を始めました。国民に壮大な夢を売った以上、Bukele大統領には責任持ってそれを叶えてほしいです。ビットコイナーが勝手に見てる所得税やキャピタルゲイン税から逃れるという夢とは次元が違うのです。計画が遅れるなら、きちんと情報開示して理由を説明すべきです。

エルサルバドルに続く国々

最後に、4月7日にBitcoin 2022でエルサルバドルに続き、隣国ホンジュラスが経済特区Prósperaでビットコインを法定通貨に認定したことが発表されました。またポルトガルの自治州マデイラとメキシコでもビットコインの法定通貨化に向けて準備や検討を開始したことが発表されました。

エルサルバドルという小国が去年のBitcoin 2021で突如発表したニュースが、ドミノ倒しの最初の一押しとなったとビットコイン史に永遠に刻まれることになったわけですね。

続きはこちら:ビットコインが法定通貨になったエルサルバドルへ行ってみた|体験記寄稿3

寄稿者:練木照子(Teruko Neriki)練木照子(Teruko Neriki)
ビットコインとライトニング関連スタートアップへの投資に特化したVCフルグルベンチャーズ所属。「ビットコインスタンダード」「ビットコイン、強気にならずにはいられない理由」「ビットコインの歩き方」翻訳出版。ビットコイン研究所について詳細はこちらからご覧いただけます。
CoinPost App DL
厳選・注目記事
注目・速報 市況・解説 動画解説 新着一覧
09/16 火曜日
15:20
Pudgy Penguins、日本で大型イベント開催|MEXC Venturesとの連携で世界展開を加速
人気NFTプロジェクトPudgy Penguins、東京でWebX2025イベント開催。MEXC Venturesと連携し、日本展開でグローバル戦略を加速。2027年IPO実現目指す。
14:50
MiCAの監督格差問題 仏・墺・伊が共同でEUの規制強化を要請
フランス、オーストリア、イタリアの規制当局がMiCA施行後の各国による監督格差を問題視し、EUの仮想通貨規制の強化を求める共同声明を発表した。EUパスポート制度の課題と3カ国の規制当局による4つの改善提案を解説する。
11:36
FOMC控え様子見基調の仮想通貨相場、デリバティブ市場は強気傾向
明日のFOMC会合を控え、市場の95.9%が25bp利下げを織り込む中、ビットコインは115,206ドルで小幅上昇。デリバティブ市場ではコール優勢の展開が続き、ETF流入も好調。利下げサイクル開始への期待が暗号資産(仮想通貨)市場の追い風となるか注目が集まる。
10:56
ロビンフッドが非上場企業投資ファンド「RVI」を計画 個人投資家の参加機会拡大へ
仮想通貨・株式取引のロビンフッドが米国で未上場企業への投資機会を個人投資家に提供するファンドの設立を計画している。SECに登録届出書を提出し、NYSE上場を目指している。
10:30
クレディセゾンのベンチャー部門、70億円超のWeb3ファンドをローンチ
クレディセゾンのベンチャー部門は、ブロックチェーンのスタートアップ対象のファンドOnigiri Capitalのローンチを発表した。トークン化RWAのソリューションを開発する企業に投資する。
10:12
コインベース支援のL2「Base」、独自トークンの発行検討を開始
仮想通貨取引所コインベース支援のL2「Base」は、ネットワークトークンの発行検討を開始。これまではガス代にイーサリアムを使用し、独自トークンの発行予定はないとしてきた。
09/15 月曜日
17:40
Web3インフラの進化はグローバル取引を変える|WebX2025
大型Web3カンファレンス「WebX」で「グローバル取引の絶対基盤: 世界を繋ぐインフラ戦略」をテーマとしたパネルセッションが開催され、Web3インフラの重要性と発展に向けた課題、そして10年後のグローバル取引の展望について活発な議論が交わされた。
15:00
人工知能と人間の創造性、消費者アプリの活用事例|WebX2025トークセッション
WebX2025で専門家が人工知能エージェントの可能性について徹底議論。創造性や、人間の仕事を消滅させる可能性、安全性や開発上の課題などを多角的に話し合った。
12:25
イーサリアム財団がプライバシー強化ロードマップ発表 3つの重点分野で取り組みへ
イーサリアム財団が包括的プライバシー構築のロードマップを発表。仮想通貨イーサリアムのネットワークが世界的な決済レイヤーになることを前提に3つの重点分野に取り組む。
10:00
アジア仮想通貨規制の現状と課題:香港・台湾の最新動向と地域連携の必要性|WebX2025
大型Web3カンファレンス「WebX」で、「アジアにおける規制フレームワークと今後の見通し」をテーマとしたパネルセッションが開催された。このセッションでは、香港と台湾の最新の規制動向から、仮想通貨規制におけるアジア諸国の国際協力まで、活発な議論が展開された。
09:55
「ビットコインは毎日最高値更新する必要はない」アーサー・ヘイズが語るBTC長期投資の真価
仮想通貨アナリストのアーサー・ヘイズ氏が、各国の金融緩和政策を背景にビットコインの長期的上昇を予想した。4年サイクルよりもマクロ見通しが要因になるとしている。
09/14 日曜日
16:00
DeFiが抱える最大の課題は? トークン化時代見据えソラナ財団らが議論|WebX2025
WebX2025でソラナ財団やBNBチェーンからDeFiの専門家が集いパネルセッションを行った。現在の課題やトークン化などの潮流、今後の各プロジェクトの展望を議論した。
14:00
今週の主要仮想通貨材料まとめ、トム・リーのBTC年内20万ドル到達予測やDOGEのETF上場計画など
前週比で振り返る仮想通貨市場の最新動向。ビットコインやイーサリアム、XRP、ソラナなど主要銘柄の騰落率や注目材料を一挙紹介。市場トレンドと関連ニュースを詳しく解説する。
11:30
来週FOMCの焦点は? テクニカル的な買いがビットコイン相場を押し上げる可能性|bitbankアナリスト寄稿
bitbankアナリスト長谷川氏による今週のビットコイン週次レポート。米雇用統計の大幅下振れとインフレ鈍化を受けFRB利下げ期待が高まり、BTC円は8月23日ぶりに1700万円を回復した。来週のFOMCでは年内3回の利下げ織り込みと政策金利見通し下方修正が焦点。
11:00
週刊仮想通貨ニュース|新経連の仮想通貨税制改正提言に高い関心
今週は、トークン化されたポケモンカードのブーム、ナスダックのトークン化株式の取引承認申請、一般社団法人新経済連盟の仮想通貨税制改正提言に関する記事が最も関心を集めた。

通貨データ

グローバル情報
一覧
プロジェクト
アナウンス
上場/ペア
重要指標
一覧
新着指標
一覧